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大丈夫です!側にいますから。 11話
勢い良く起きがったものだから、クラリと目眩がしてその場に倒れ込んだ。
「もう!熱あるのに興奮するから」
此上は西島の側に行き、持ってきた水が入ったペットボトルを目の前に出す。
「ちゃんと飲め」
「うるさい!」
西島はペットボトルを奪い取ると素直に飲んだ。相当、身体が水を欲しているようで、半分一気に飲んだ。
「抱っこされた事、覚えてたんだな。寝てるって思ってたけど」
や、やっぱり抱っこされてたのか!!
此上の言葉に死にそうだ。
碧に……よりによって碧の前でお姫様抱っことか……成人した男が男にお姫様抱っことかどうよ?死ねるレベルだろ?
「碧ちゃん、お前を王子様とか言ってたぞ?」
「はい?」
「俺が騎士で千尋が王子様……お姉さんが読んでた本みたいだって言ってたな。王子様を守る騎士の話らしい」
「な、なんで此上が騎士なんだよ!」
「さあ?大人の魅力?」
此上はふふ、と勝ち誇ったように笑う。実際は勝ち誇ってはいないのだが、西島目線ではそう見えたようだ。
でも、お姫様抱っこされてしまったのだから、なんとも言い返せない。
「文句言える元気あるなら食事出来るよな?お粥あるから持ってくるよ」
「いらない!」
プイと横を向く子供みたいな西島。
「碧ちゃんが朝から早起きして作ったのになあ……ちひろさん早く元気になって下さいって願い込めて」
その言葉にピクリと反応する西島。
「碧が?」
「そう!頑張ってたぞ?いらないなら俺が」
「食べる!!!」
西島は此上の誘導に引っかった。
此上はニヤリと笑うと「持ってくるからいい子にしてろ!」寝室を出て行った。
碧がお粥……
西島は碧が一生懸命に作っている所を想像する。
エプロンして……ちひろさんが早く良くなりますように……と願う姿。
ああ!!可愛くて熱上がりそう!!
「ニッシー、興奮すると鼻血でるばい!」
「出ないから!」
諭吉のツッコミに冷静に返す。
「でも、此上が騎士とか……俺だって、此上と身長か、変わんないし」
向こうが6センチ高いけど。
体格は……アイツ、格闘技得意なんだよな……元々はボディガードだったし。
色々考えると負けている気がして何だか悔しい。
「諭吉、俺と此上はどっちが騎士っぽい?」
真顔で諭吉に聞く西島。
「ニッシーはヘタレやけん、王子様やな。ヘタレ王子」
く、くそう諭吉め!!!
「マグロ買わないからな!」
「碧がこうてくる」
くそう!!諭吉!!
「千尋、お前、猫と話せるのか?器用だな?」
此上が戻ってきた。
もちろん此上にはニャーとしか聞こえてはいない。
サイドテーブルを用意して、そこにお粥が入った1人用の土鍋を置く。
フタを開けると美味しそうな出汁の香り。
「カツオ出汁か!美味そうやな」
諭吉はクンクンと鼻を土鍋に近付ける。
「お前、猫舌だろ?冷ましたのをあげるから」
西島はフタに少しだけお粥を入れた。
諭吉もお粥が冷めるまで見つめている。
そして、お粥を食べ始める西島。
黙々と食べている姿が子供時代の彼を思い出させる。
熱が出ると此上がお粥を作って食べさせていた。
「あつ、」
ちゃんと冷ましていないのを口に入れたらしく、西島は眉間にシワを寄せている。
そんな所も昔のまま……。
「食べさせてやろうか?」
「子供扱いするな!」
ムッとする西島。
「袖、捲らないとつくぞ?」
此上は西島の袖を3つくらい折り、土鍋に袖が入らないようにする。
「子供だろ?どう見ても」
ふふ、と笑う此上。
チクショーと思ったが碧のお粥を食べるのが先。
凄く美味しい。碧の一生懸命さが伝わってくる。
あ、そうだ碧は?
あれ?そもそも、今……何時?
西島はベッドの近くの時計を見た。
9時……
表示は9時だ。えっ?夜の?んん?
もっと良く見るとAMの表示も見えた。
9時いいいいい!!!!遅刻やんかあ!!!
西島は食べるのを止めた。
「どーした?」
「やばい、遅刻」
慌ててベッドから降りようとするが、此上にガッツリ阻止させる。
「馬鹿か、熱あるんだから休みだろ?会社には連絡入れてる」
「はっ?なんで?」
「なんでじゃない!お前、熱39度あったんだ!」
「ないよ!もう、下がった!」
「下がってないから会社に連絡入れたんだろーが!この馬鹿千尋」
「馬鹿とか言うなよ!」
「いいから大人しくしてろ!そうじゃなきゃ!病院突っ込むぞ!」
「あ!!そうだ!嫌だって言ったのに病院とか此上の馬鹿」
西島は病院に連れて行かれたのを思い出した。
「また、連れていくぞ!」
此上はガシッと西島の両手を拘束する。
「もう!離せよ!」
暴れようとして、視界にサイドテーブルが入り、土鍋に諭吉が顔を突っ込んでお粥を食べていの気付いた。
「諭吉いいい!お前!」
「あ、」
此上も諭吉に気付いた。
「美味かったぞ?」
諭吉はお腹ポッコリとさせている。
「諭吉いいい」
俺のお粥……と喧嘩が中断されたのであった。
◆◆◆◆
お粥を諭吉に食べられた西島は拗ねていた。
諭吉は怒れない。だって、食べずに此上と言い合っていたのだから。
「食べ足りないなら作るぞ?」
「いい」
此上にはしょんぼりしているように見えて微笑ましい。
「苺ミルク買ってやろうか?」
「はい?」
突然の此上の台詞に何を言い出すんだコイツ!という目で見る西島。
「熱出した時に良く飲んでただろ?あと、コーヒー牛乳?」
「だから、子供扱いしてんじゃねーよ!」
「充分に子供だけどな?」
「うるさい」
「直ぐに文句言うとことかガキの頃のまんま」
クスと笑われてムッとする西島。
「大人しく寝てろよ?洗濯とかしてくるから」
此上は嫌がるのを知ってて、西島の頭を撫でる。
「やーめーろー!!」
案の定、嫌がられた。
此上は笑うと寝室を出て行った。
西島はベッドに横になる。
まだ、少しダルイ……
諭吉にお粥食べらてしまったけれど、どうけ全部は食べれなかった。だから、助かった。
それもあって諭吉を怒らなかった西島。
諭吉がシーツの中にモゾモゾと入ってくる。
いつもは、自分の寝床か足元とかに寝ているのに珍しい。
諭吉は潜り込んで顔だけを出す。
「寂しかやろうけん、添い寝してやるばい」
諭吉はちゃっかりと枕に頭を乗せている。
「それはありがとう」
「どういたしまして」
諭吉はゴロゴロと喉を鳴らす。
可愛い……なんて思って諭吉の頭を撫でる。
目を閉じている諭吉を見ていると、西島も自然と眠くなった。
洗濯を終えた此上が戻って来たときには西島と諭吉は熟睡していた。
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