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大丈夫です!側にいますから。 13話

彼の精一杯のSOS。 意地っ張りで素直じゃない彼。甘えるのが下手で自分をかなり追い込んだ後にやっと言葉にする。 助けてという言葉ではなく、いかないで……、ここに居て。 やっと言葉にしても上手く気持ちを言えないでいた。 ずっと、愛されて育った子供が急に誰も知らない場所へと無理矢理連れて行かれたら言葉なんて失ってしまうだろう。自分でも状況を把握出来ないのに。納得なんてしていないのに、無理矢理連れて来られて……その気持ちや感情を説明なんて出来ない。それを此上は分かっている。 だから、少しづつ時間をかけて、何が嫌で何が欲しいのかを聞き出していた。 「お前……どうしたんだよ、本当に」 此上は西島の頭を撫でる。 そのまま、額を触ると熱く感じた。ああ、熱上がったな。 此上はスマホを取り出し、西島かかりつけの病院へ電話をかけた。 ◆◆◆◆ 「やっぱり、入院がいいんじゃないの?千尋くん」 点滴をしながら院長先生は心配そうな表情を見せる。 「今回、まだ入院は」 「理由分かったの?千尋くんがこんな風になったワケ」 「いえ、不安がってるのは分かるんです……ゆっくりと聞き出そうかと」 「千尋くん、どうしても自分を追い込んじゃうからね」 「……注意して見てます」 「ふふ、でも、良かった。此上くんがまだ側に居てくれてて」 「そうですか?」 「うん、また、何かあったら呼んでよ」 「はい……すみません来て貰って」 「いいよ、千尋くんの担当医だったんだから。あんな小さい子供がこんなに大きくなるからビックリだよね。年を急に感じちゃったよ」 ニコッと微笑む先生に此上も微笑む。 本当に身体は大人なのにな……。 心と身体のバランスが取れていない西島。 もっと、早く会えば良かった?それとも会わない方が良かった? つい、考えてしまう。 ◆◆◆◆ 碧がマンションの入口に来た時に白衣を着た男性が出て来た。 お医者さん? 何故ここに?と思った瞬間、碧はダッシュした。 ちひろさん!!ちひろさんに何かあったんだ!!! エレベーターのボタンを急いで何度も押す。何度も押せば早く降りて来てくれるんじゃないかと思うから。 降りてきたエレベーターに乗り込む。 気ばかり焦る。早く着いて!!! 何時もは何も感じないエレベーターに乗っている時間さえも長く感じる。 エレベーターが着くと急いで降りた。 鍵を差し込もうとするが慌てている時って何だろう?1発で入ってくれないから余計に焦る。 ようやく、鍵を開けて中へ。 「ちひろさん!!」 「えっ?碧ちゃん会社は?」 勢い良く寝室に来た碧に驚く此上。 「早退しました!あの、さっき、白衣着た人とすれ違ったんです、ちひろさんに何か……」 「ああ、それで勢いあったのか……千尋は大丈夫だよ。ただ、診察に来てくれただけ」 此上は心配させないようにそう言った。 「ほ、本当ですか……良かったあ」 碧はその場に座り込む。 「碧ちゃん大丈夫?」 「えへへ、ビックリして」 座り込んだ碧は笑って見せる。 「早退して大丈夫だった?仕事は?」 「星……あ、同僚が僕の分も仕事してくれるって言って」 「同僚?友達?」 「はい、斉藤星夜くん」 斉藤?……あ、佐々木と一緒に居たあの子か。 「仲良しなの?」 「はい」 「千尋と碧ちゃんの事を知ってるの?」 「はい!恋愛の先輩だからたまに相談するんです」 「へえー、どんな相談かな?碧ちゃん、着替えて向こうで話そうか、お昼ご飯食べてないだろ?」 此上は座り込む碧を立たせた。 「はい!」 素直に返事をすると、着替えて来ますと寝室から離れた。 碧ちゃん何か知ってるといいけど。 此上は西島に聞けない分、碧から何か聞き出そうと思った。 ◆◆◆◆◆ 「碧、どげんしたとな?」 「諭吉!」 着替えていると諭吉が側に来た。 「ちひろさんが心配で、そしたら星夜くんが帰ってやれって」 「ほお、星夜は良い奴ばい!ワシにもマグロくれるし」 諭吉にとって、マグロくれる人は皆、良い人なのだ。 「うん、星夜くん優しいよ」 「良か友達出来たな……碧は大人しいけん、心配やったとばい!誰も知らんとこに行くって聞いた時は」 「えへへ、ありがとう諭吉」 着替えた碧は諭吉を抱っこしてキッチンへ。 「碧ちゃん、何食べたい?」 此上が待っててくれた。 「マグロうう!!」 碧の代わりに諭吉が答える。 「あはは、諭吉はマグロだね」 此上は猫用の缶詰を取り出す。ちゃんとマグロと書かれている。 「そ、その缶詰は高級ネコ缶やないか!!」 諭吉の目がキラリと光る。 「その缶詰高いやつですけど、此上さんが買ったんですか?」 諭吉を下へ降ろす。 「うん、さっきね、千尋が寝ている隙にスーパーへ行ったんだ。猫飼った事ないからどれがいいかスタッフに聞いたらススメられたんだ」 ああ、さすが、スーパーのスタッフ。高い値段を勧める……と碧は感心する。 「諭吉、その缶詰のシリーズ好きなんです!でも、ちょっと高いから特別な日とかにあげてて」 「へえ、そうの?諭吉、大好きなんだコレ」 「そうばい!はよう!!はよう、容器入れろ!!」 諭吉はニャーニャー鳴いて猛ハッスル!凄い食い付き。 容器に移されるとガツガツと食べる。 「凄いなあ、この食い付き」 「諭吉は食いしん坊なんです」 碧は少し恥ずかしそうに笑う。 「じゃあ、次は碧ちゃんのご飯」 「えっ、僕、自分で作ります!」 「いいんだ、作らせて?」 此上の好意に戸惑いながらも素直に受け取る。 此上は手際良く作っていく。その姿を見ていたら西島とかぶる。 あれ?と思う。 「もしかして、ちひろさんに料理教えたの此上さんですか?」 「えっ?」 手を止めずに聞き返す此上。 「何か、似てるなあって……姉も母に料理の仕方習ってるから動きとか調味料入れるタイミングとか似てるんです……だから、そうかな?って」 「碧ちゃん凄いね、洞察力あるんだ?」 「そうですか?宿題とかキッチンの側のテーブルでやってたんで見てて。ちひろさんもご飯作る時は僕、見てるから」 「ふふ、千尋が大好きなんだな」 此上の言葉に碧は真っ赤になる。 そして、「はい。大好きです」と迷う事なく答えた。 ああ、凄いなあこの子は。 本当にストレートというか素直というか。 「千尋も碧ちゃん好きだからな。お粥、嬉しそうに食べてたよ」 「ほ、本当ですか?」 「うん、碧ちゃんが頑張って作ってたって言ったら凄く嬉しそうだった。美味しいって言ってた」 「良かったあ」 碧は幸せそうに笑う。 此上はそんな碧を見て、千尋もこんな風に笑ってくれたらいいのにと思う。 ずっと、笑ってくれたらどんなにいいか。 「そう言えば相談って何してたの?」 「えっ?星夜くんですか?あ……えっと、色々と」 さっきまでテキパキと受け答えしていたのに急にしどろもどろになる。 此上は直ぐにピンと来た。 「言えない事かな?ふふ」 「はい」 碧は真っ赤になって俯いた。 俯いた視線の先にオムライスが登場した。 大好きなオムライスを目の前に碧はキラキラとした顔で此上を見た。 「あはは、良かった、オムライス好きそうで」 わかりやすい碧の表情が微笑ましい。 「はい!大好きなんです」 碧はいただきます!と両手をあわせて挨拶すると、ニコニコとした可愛い笑顔で食べ始めた。

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