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大丈夫です!側にいますから。 14話

「碧ちゃん美味しそうに食べるね、作った甲斐があるよ」 「だって、美味しいですもん!」 「ふふ、ありがとう碧ちゃん」 此上は手を伸ばすと頬に触れた。 「ケチャップついてるよ?」 指先で頬についたケチャップを拭って微笑む此上。 大人の色気……?碧はドキッとした。 本当に騎士様だあ。 「あ、あの、此上さん……ちひろさんの好きな食べ物教えて下さい」 「ん?」 此上は指についたケチャップをペロと舐める。 「ちひろさんが治ったら好きな物をたくさん作ってあげたくて……このオムライスもちひろさんと同じ味がします。ずっと、この味付けで作っているって事は此上さんの料理が好きって事ですもん」 「碧ちゃん……」 「だから、教えて下さい」 「うん、分かった」 健気な碧の頭を撫でる此上。 この子は周りを元気にしてくれる子だな。 自分でも気付かなかった。そうか、千尋は俺の作る料理を好きで居てくれたんだ。 碧の言葉が此上の心を温かくさせる。 この子が居るなら……千尋、早く立ち直れるんじゃないかな? でも、この子が居るのにどうして今の状況に……? 首を傾げてしまう。 「千尋、オムライスも好きだよ。多分、碧ちゃんと好きな料理かぶるんじゃないかな?好きな人同士って面白いくらいに好きな食べ物も似てるから」 「……あ、言われてみたら、ちひろさん僕の好きな料理ばかり作ってくれます!良く分かるなあって思っていたんですけど……好きな食べ物が似てるんですね」 碧は喜んでいる。大好きな西島と好みが同じ。それだけでも、嬉しいのだ。 食事を終えて、片付けは自分がするとキッチンへ立つ。 ちひろさんと好きな食べ物同じなのかあ…… 嫌いな食べ物も同じかな?だったら、作りやすいな。嫌いな食べ物を聞かなくて済む。 あ、そうだ、ちひろさんもピーマンを昔は食べれなかったって。ふふ、僕と同じだあ。 でも、ちひろさんは食べれるようになったんだよねえ……うーん、僕も頑張らないとダメかな? 色々考えながら後片付けを終えた。 「碧、此上も良か奴やな」 諭吉が足元をウロウロする。 「高い缶詰買ってくれたもんね」 「そうばい!あの缶詰は美味かあ!!また、こうて来て欲しいかばい」 「もう、食いしん坊なんだから」 碧は諭吉を抱き上げると寝室へ来た。 「碧ちゃん、俺と交代しようか?俺、少し仮眠するから」 「はい!任せて下さい」 「うん、よろしく」 此上が寝室を出て行くと諭吉がピョンとベッドに飛び乗る。 「こら、ダメだよ、起きちゃうでしょ!」 「でも、起きんば飯食えんやろ?」 「あ、そうか……お粥作ろうかな?」 「碧のお粥美味かったばい」 「なんで、諭吉が知ってるの?」 「ニッシーが少しくれたとばい!ニッシーも美味しかて言いよったしな」 「じゃあ、作る!!諭吉、ちひろさん見てて」 「任せておけ!!」 諭吉はそう言いながらシーツの中へ。西島の隣で目を閉じる。 「任せておけって言ったくせに」 碧は笑うとお粥を作りにキッチンへ。 リビングで此上が仮眠しているからなるべく音を立てないように気を使う碧。 ◆◆◆◆ 昼休み、医務室へ来たのは斉藤だけで神林は「碧ちゃんは?」と心配そうに聞く。 「碧は早退しました」 「えっ?碧ちゃんまで具合悪いの?」 「違いますよ!碧が心配そうだったんで、帰れって言ったんです。碧の仕事は俺が片付けてます」 「そっか、優しいんだね斉藤くん」 「碧にはいつも元気貰うし」 「そうだね、俺も元気貰ってる……お茶とコーヒーどっちがいい?」 神林はマグカップを持ち斉藤に微笑む。 「コーヒーで……此上さん……西島部長の看病してるんでしょ?」 「うん、今日、休みだからって」 「碧が此上さんを騎士みたいだって……お姫様抱っこされたんでしょ?俺も見たかった」 「千尋に怒られるよ?」 「だって、西島部長を軽々と抱っことか……俺も頑張れば出来ると思うけど、ガタイいいですもんね、此上さん……エッチ激しそう」 神林はコーヒーを口に含んだ瞬間だったものだから、ぐはっ!!と吹出しかけた。 「ちょ、神林先生!!!」 斉藤は自分のハンカチをポケットから出すと神林へ渡す。 「激しいんですね」 ニヤニヤと笑う斉藤。 「な、何言って」 「首、めっちゃキスマークついてますから言わなくても分かります」 ビクッ!!となる神林。か、カマかけてきてるだけ……動揺するなトオル!!!と冷静になろうとする。 斉藤は無言で小さな鏡を渡す。 彼が髪型を整える為の鏡だ。 「う!!!」 斉藤の言う通り、首にキスマーク。 うわあ!!!いつの間に?あれ? そうだ、昨日、風呂で…… 神林は隠すようにシャツの襟を上に上げる。 「神林先生の反応可愛くて好きですよ」 ニヤニヤしている斉藤。 くそう!!篤さん!!! 帰ったら怒らなきゃ…… 「神林先生は心配とかしないんですか?」 「えっ?千尋の?」 「いえ、此上さんと西島部長……」 「なんで?」 神林は星夜が何を言いたいかは想像出来た。 そう、西島にとって此上は初恋の相手。 でも、今は西島には碧が居る。間違いなんてない!!! ちゃんと分かっている。分かっているけれど……ほんの少し、ほんの数ミリ単位の気持ちに不安がある。 昨夜はそれを此上に読まれた感じだった。 大丈夫!!絶対に大丈夫!! そう言い聞かせるのは本当は不安だからじゃないかと、星夜が言う心配じゃないんですか?で思ってしまった。 「大丈夫だよ?千尋には碧ちゃんいるし」 大人の余裕を見せる。心は無理しているくせに。 「さすが神林先生!」 斉藤は持ち込んだサンドイッチを食べ始める。 「手作り?」 容器に入っているサンドイッチは具がタップリだった。 「はい!めぐちゃんが作ってくれて」 「お兄さんね」 いきなり、誘ってくる大胆な斉藤の兄を思い出して笑う。 「ゆうちゃん……何食べてるのかな?」 「ラインとかは?」 「してる。でも、向こう、仕事だから我慢してる」 ……そうだ。佐々木……彼は大丈夫なのだろうか? 心配事が気付くと増えている。神林は、コーヒーを飲んで心落ち着かせる。

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