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大丈夫です!側にいますから。 15話

◆◆◆◆ お粥を作って、水も用意して寝室へと戻って来た碧。 西島はまだ眠っていて、起こそうか悩む。 悩みながら西島の寝顔を見て、夏が読んでた絵本を思い出した。 王子のキスで目を覚ますお姫様。 ちひろさんは王子様……、僕が騎士ならいいのに。 キスしたら起きるかな? 顔を近付けて西島の頬にキスをする。 えへへ、キスしちゃった……。 でも、王子様はまだ目を覚まさない。 やっぱり、唇にキスした方がいいのかな? 碧は手を伸ばし西島の唇を指先で触れた。 やわらかい。 キス……してもいいかな? 顔を近付け軽くキスをした。 チュッ、て軽くキス。すると、偶然なのか西島が目を開けた。 えっ?嘘、本当に目を覚ました?! 碧は驚きながら、そして、照れてしまう。 絵本みたいな事をしてしまった。 誰か部屋に入って来たとボンヤリとした意識の中で気付いてはいた。 此上だろうって思っていたが、甘い香りがして…… 碧ならいいなあって心で願った。 でも、まだ仕事しているだろうから違うよね?きっと、此上だ。 そう思っていたら、やわらかい何かが唇に触れて目を開けた。 「ちひろさん」 可愛い声に名前を呼ばれた。 「あおい……」 あれ?碧……なんで?もう、夜……? 「お粥、たべれますか?」 顔を覗き込んでくる碧。 夢かな?と手を伸して碧の顔に触れる。 やわらかい手触り。すべすべのいつも触れている肌。 温かさが手のひらに伝わってくるから、夢ではないようだ。 「あおい」 「はい」 返事が返ってくる。 「もう……夜?」 「いいえ、まだ、お昼を過ぎた所ですよ?」 碧は頬に当たる西島の手を触る。 「お昼?仕事は?」 「……あの、ちひろさんが心配で……あ、仕事は星夜くんが代わりにやってくれてて」 ああ、やっぱり軽率だったかな?と碧は不安になる。 彼は自分の上司。 「そっか、早退して来てくれたんだ?」 「は、はい」 碧が返事をすると、西島は微笑んだ。 その微笑みに碧はホッとした。良かった……戻って来て良かったんだ。 「お粥作ったんです」 「お粥……」 西島は碧の頬から手のひらを外して起き上がる。 碧は慌てて西島を支える。 サイドテーブルに置いたお粥が入った土鍋と水をテーブルごと動かす。 「朝も作ってくれたんだろ?」 「はい」 「凄く美味しかったよ」 「本当ですか?良かったです」 碧は嬉しそうに微笑む。その微笑みは可愛くて西島は碧の頭を撫でる。 ちひろさんが撫で撫でしてくれた。 あ、僕もちひろさんを甘やかすんだった!! 「ちひろさんもお粥食べれたんで撫で撫でします!」 そう宣言して西島の頭を撫でた。 西島はビックリしたが、撫でられるのは嫌いじゃない。それに碧から撫でられるのは嬉しい。 「じゃあ、お粥」 頭を撫でたあと、碧はお粥をレンゲですくうとフーフーと息をかけ、冷まし、「はい、あーんして下さい」と西島の口の前に持ってきた。 突然の行動に驚いた西島だったが反射的に口を開けてそのままお粥をパクリと食べる。 「お、美味しいですか?熱くないですか?」 心配そうな碧。 「美味しい」 今朝と同じ、凄く美味しい。 西島の美味しいという言葉に碧は笑顔になる。 「はい、次もどうぞ!」 碧はまた、レンゲにお粥をすくって冷ますと西島の口へ。 半分食べたくらいに西島が「碧、もうお腹いっぱい」だと言ったのでそこで食べさせるのを止めた。 「余ったらワシが食うぞ!」 諭吉がシーツの中から顔を出す。 「諭吉、さっき、猫缶貰ったでしょ?」 呆れる碧。 「良かやん、余ると勿体ないばい」 諭吉は土鍋に鼻を近付ける。 「こら、ダメだってば!」 諭吉の身体を掴み、降ろそうとすると、 「いいよ、碧が良いって言うなら……俺はもう食べれないし、残すのが勿体ない」 と西島が言う。 「いいんですか?」 碧は西島を見つめる。 「諭吉もこのお粥が大好きみたいだし」 「そうばい!美味か!」 確かに残すのは勿体ない。なので、碧は床に土鍋を置く。 諭吉はピョンと下へ降りるとお粥を食べ始める。 「ちひろさん、何か欲しいものあったら言って下さいね 」 「欲しいもの?」 「はい!食べたいモノとか……アイスとかプリンとか?」 「ふふ、その2つは碧が食べたいモノだろ?」 確かに碧が好きな食べモノだ。 「ち、違いますもん!」 図星でもあったが碧は否定する。 「碧が側に居てくれたらいい」 西島は碧の手を握る。 「僕……ですか?」 「そう、碧」 西島は握った手をぐっ!と引っ張り碧の身体を抱きしめ、そのままシーツの中へと連れ込む。 西島の腕の中から顔を出して西島と見つめ合う碧。 「このまま……ここに居てくれるだけでいい」 「……はい」 西島の身体は熱い。まだ、熱があるみたいで……きっと、辛いんだろう。 碧も熱がある時は気持ちが不安定になり、寂しくなる。きっと、西島も同じ。 碧は西島の頭を自分の胸へと持ってくると抱きしめる。 しばらくすると西島の寝息が聞こえてきた。 「安心したんやないか?」 諭吉がピョンと飛び乗ってきた。 「安心?」 「ニッシーとずっとおったけど、不安そうやったけんな。此上が居ってもワシが居っても……1番肝心な碧が側に居らんくって、不安そうやった」 「……諭吉、それ、本当?」 「動物はな、そういうとこ敏感にわかるとぞ」 ドヤ顔の諭吉。 「僕が居なくて不安だったの?ちひろさん」 「そうやろ、ニッシーは碧が大好きやけんな」 「僕も大好きです」 「側に居てやれ」 「うん」 碧は西島をもっと強く抱きしめる。 諭吉はベッドの隅で丸くなって目を閉じた。

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