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大丈夫です!側にいますから。 16話
◆◆◆◆◆
夕方、神林が西島の部屋に帰ってくると、此上が玄関で出迎えてくれた。
「ただいま篤さん、千尋は?」
鍵を閉めて部屋に上がると「可愛いもの見れるよ!」と寝室まで神林を連れてきた。
可愛いもの?
なんだろうと思った神林は寝室を見て納得。
西島と碧が抱き合って熟睡中。しかも、碧が西島の腕枕をしている。
「本当だ可愛い」
神林は2人を見て和む。
「思わず、写真撮ったよ」
此上はスマホを出すと、少し前に撮った写真を見せる。
「千尋に怒られるよ?」
「だな、でも、凄く可愛くてさ2人とも。千尋は元々童顔だから寝ると子供みたいだし、碧ちゃんは子供だしで」
「確かに……俺も写真撮ろう」
神林も可愛さに写真を撮る。
西島が前髪アップしているのは童顔が嫌だから。そんな理由だったなと神林は思い出して笑う。
本当、寝顔は可愛い。
「碧ちゃん、千尋を甘やかすって言ってたもんな」
「さしずめお母さんかな?病気で不安な子供も抱っこしてあげる……ふふ、可愛いね」
「そんな感じですかね?あ、夕食、作りますよ?」
「手伝うよ」
2人をそのまま寝かせて寝室を出た。
◆◆◆◆
神林は帰り道、スーパーに寄って食材を買って来ていた。
袋から取り出していると、ビニールのガサガサという音に気付いたのか諭吉が走って来た。
「諭吉、お腹空いたの?」
ビニールを気にする諭吉。
「諭吉には猫缶買ってるのがまだあるぞ?」
此上は諭吉を抱き上げる。
「そいは本当か?高級猫缶ぞ?此上は金持ちか?」
諭吉のテンションが上がる。
「諭吉、俺の言ってる事分かるのかな?」
此上にはニャーニャーとしか聞こえないが、会話に返事をしたような気がしたのだ。
「諭吉、マグロも買って来てるからね、あとからあげるね」
神林はマグロが入ったパックを袋から出す。
「マグロおおおおお!!!」
此上の腕の中でテンションマックスな諭吉。
「なんや、なんや、此上も神林も!良か奴やな!ニッシーが病気になればワシには良い事が起こるとな!!」
「ふふ、テンション高いね諭吉」
此上はにゃごにゃご鳴く諭吉の頭を撫でる。
「たまにこの子、会話してるみたい聞こえるんだよね」
神林は食材を冷蔵庫に入れるのを終えると諭吉の頭を撫でた。
「マグロ美味いばい!って言ってるのも聞いたし」
「午前中は千尋と会話してたぞ?千尋が一方的に話してる感じだったけれど、諭吉がタイミング良く鳴くから会話してるみたいで可愛かった」
「諭吉はおりこうさんなんだねえ」
神林はよしよし、と諭吉の頭を撫でる。
「そうばい!だけん、マグロ!!マグロばくれよ!」
「あはは、マグロ食べたいの?諭吉だけ先に食べる?」
「食べる!」
「は?」
神林と此上の声がハモる。
「いま、食べるって聞こえた」
「俺も……」
神林と此上は思わず見つめ合うと笑い出す。
「本当、諭吉凄いなあ!!凄いからマグロあげるね」
神林は冷蔵庫に入れたマグロを取り出すと諭吉専用のお皿入れる。
諭吉は待ちきれなくて此上の腕の中からスルリと抜けて飛び降りた。
「マグロ!!マグロ!!」
諭吉はマグロが入った皿めがけて突進。そして、ガツガツ食べる。
「いい食べっぷり!」
2人は思わず笑う。
◆◆◆◆
あたたかいなあ。
さっきまでは熱いって思っていたのに、今は心地よい温もり。
西島がその温もりの中、目を開けると碧の寝顔があった。
……あ、そうか、碧が側に居てくれているんだ。
だからかな?凄く安心。
可愛い寝顔に癒される西島。
やわらかいマシュマロみたいな頬に手のひらで触れる。
可愛い……眠れる森の?ふふ、そんな感じだな。
寝顔を見ていると、「……ぼく……ちひろさんのナイトなんです……つよくなります」と碧が言った。
起きたのかな?と思ったが寝息が聞こえる。ああ、寝言かあ。と西島は笑ってしまう。
ナイト……騎士か。そうだ、此上が言ってたな。騎士と王子様って。
碧は俺の騎士になりたいのかな?お姫様みたいなルックスなのに……
俺が碧の騎士になりたいけどなあ。
西島は碧のオデコにキスをする。
そして、身体を起こすと瞼や頬にも……
唇へキスを落とすと、薄く空いた彼の口内へ舌を入れた。
くちゅと絡む舌。
「……ふぅ……んっ、」
碧から漏れる可愛い声。
唇を離すと碧が目を覚ました。
「おはようお姫様」
「ちひろさん」
ボンヤリとした視界に西島の優しい顔。
わあ、王子様だ。夏姉ちゃんの読んでた漫画に出てくる王子様みたいだ。
「僕、お姫様ですか?」
「キスしたら起きたから」
「……僕、ナイト様がいいです」
「だめ、俺がナイト」
「ちひろさんがナイト様ですか?」
「そう、可愛い碧を守るナイト」
碧は西島にぎゅっと抱きつく。
「僕のナイト様ですか?」
「うん、碧だけの」
「えへへ、嬉しいです」
ぎゅっと抱きつく碧を組み敷く西島。
「碧……」
碧を見つめてキスをしようとするが、諭吉がじーっと見つめている。
「諭吉?」
「盛るとは良かばってん、飯できとっぞ?2人が声かけるタイミングを失っておるばい?」
2人?
西島はゆっくりとドア付近を見る。
うそーん!!!!
視線を向けた場所に神林と此上が立ちつくし、こっちを見ていた。
……えっーと、いつから見られていたのだろう?
固まる西島と2人に気づき慌てて起きる碧。
「あ、ごめん、邪魔して……碧ちゃん、ご飯食べるかなあって」
申し訳なさそうな神林。
「えっ、えへへ、あの、はい、食べます」
真っ赤な顔で返事をする碧。
「千尋はまだ、ベッドな!」
此上が側に来て、碧を立たせた。
此上に見られた恥ずかしさで今なら死ねる!!!と西島はそのままベッドに倒れ込んだ。
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