376 / 526
人って温かいんですよ?
◆◆◆◆
「碧ちゃん!!」
此上が様子を見に来て泣いている碧を見つけ驚く。
「どうしたの?」
側に行き、理由を聞く為に側にしゃがむ此上。
「子供のちひろさんが……」
碧はそう言って泣き出した。西島の事を考えると寂しかったのかな?とか辛かったのかな?とか考えてしまって心の中では感情を抑えきれなくなって、泣いてしまったのだ。
「碧ちゃん、こっちおいで」
此上は泣いている碧の手を引いてリビングに連れて行く。
「えっ?碧ちゃんどうしたの?千尋に何か?」
泣いている碧に神林も驚く。
「千尋は寝てるから大丈夫だと思う、トオル、碧ちゃんにホットミルク作ってあげて」
此上は碧をソファーに座らせると神林にそう言った。
「はい!ちょっと待っててね碧ちゃん」
神林は冷蔵庫から牛乳を取り出すとマグカップへと注ぐ。
「ワシも!!ワシもミルク!!」
牛乳に反応した諭吉は神林の足元へと走って来た。
「何?諭吉、ご飯はさっき食べただろ?」
「違うばい!ミルク!!」
諭吉の視線が牛乳にあると気付く神林。
「牛乳好きなの?あ、猫用のミルクあったな」
神林は牛乳を冷蔵庫に戻すついでに猫用のミルクを取り出した。
「諭吉は猫舌だもんな、少しだけ温めような」
神林は諭吉にもミルクを用意してくれた。
◆◆◆◆
「で、どうしたの?子供の千尋って?」
此上は碧の横に座り、優しい口調で泣いていた理由を聞く。
碧は西島が寝惚けて言った言葉を話した。そして、諭吉に聞いた事をこんな感じなのかな?と自分の感じた事だと偽って話した。
猫が話したとは言えないから。
「そっか……千尋、そんな事言ったのか」
頷く碧。
「碧ちゃん鋭いね……付き合い長い俺より理解してる」
此上は頭を撫でる。
「千尋は気持ちを隠してしまうから……聞き出すのに苦労してたよ……でも、碧ちゃんなら上手く聞き出せそうだね」
「えっ?」
何を?と碧はキョトンと首を傾げる。
「碧ちゃんが心配するといけないから言わなかったけれどね、千尋の熱は多分、ストレス……小さい頃からの癖なんだ。我慢ばかりして心と身体が悲鳴あげてる。ストレスを感じると高熱を出してね、酷い時には入院までしてた」
ストレス……ちひろさんのストレスって何?
考えても分からない。
「ちひろさん……ストレスって、お仕事?」
それは西島が上司だからと碧の考え。責任が重い仕事。
「違うと思う。それを碧ちゃんに聞き出して貰いたい。原因が分かれば対処出来るし、千尋の心も軽くなる」
此上の言葉に自分に出来るのだろうか?と悩む。
「碧ちゃん、ホットミルク」
考えていると神林がホットミルクを持って現れた。
「ありがとうございます」
碧は受け取ると少し口にする。
甘い蜂蜜の味がした。
「で、どうして泣いてたの?」
神林の問いかけに此上が説明をしてくれた。
「ああ、そうか……確かに碧ちゃんなら、千尋も心開きそうだもんな」
「僕……役に立ちますか?」
「うん、碧ちゃんにしか出来ない」
「僕にしか?」
「そうだよ、心を見せる事を碧ちゃんにはしてるから」
此上は碧に微笑む。
碧もその微笑みに釣られ微笑む。
「はい……僕、手伝います」
「うん、ありがとう……千尋の心を軽くしたい……安心させてあげて」
「はい!」
頷く碧。
「あの、此上さん、ちひろさんって子供の頃どんな感じだったのですか?」
碧は西島の子供時代を聞いて、せめて……その寂しさを共有したいと思った。
ちひろさん……僕がずっと側に居て寂しくないようにしてあげたいです。
碧は自分に誓う。
ともだちにシェアしよう!