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人って温かいんですよ? 12話

「あ、ちひろさん寝ちゃったんですか?」 碧の声に振り向く此上。 碧の声に反応したのは此上だけじゃない。西島もピクンと反応した。 「神林先生がちひろさんと飲みなさいって」 碧の両手にはマグカップが一つづつ握られている。 「ああ、おいで……千尋は寝てないよ、俺が説教したから拗ねちゃっただけ」 此上の説明に西島はこの野郎!!!此上の馬鹿!!!と今すぐにでもシーツから顔を出して叫びたかった。 「トオルは?」 「朝ごはん作ってくれてます。僕も作るって言ったんですけど、ちひろさんの所へ行ってあげなさいって」 「そっか、じゃあ、俺がトオルの手伝いをしようかな」 此上は碧の方へ歩いてきて、頭を撫でた。 「ありがとうございます」 碧は微笑む。素直な碧と感情を出せなくて心にしまい込む西島。 両極端な2人なのに惹かれ合う。 面白いな……と此上は思う。 碧はベッドの側へと歩いて行くのを見た後に此上は寝室を出る。 此上が出て行った後、「ちひろさん……あの、神林先生が2人で飲みなさいって作ってくれて……飲めますか?」 遠慮がちな声。 西島はシーツから顔を出す。顔が出たら甘い香りを感じた。 「ココア?」 「はい!あの、マシュマロ入です。僕、初めて飲みます」 マグカップを持ってニコニコ笑う碧に西島は一瞬にして元気になった。 色々と考え込んで心がしょげていたのに……さっきも碧の声と顔を見たら元気になれた。 西島は起き上がると碧に近くに座るように手招きする。 「僕、床でいいですよ」 「いいから、横においで」 手招きと一緒にそう言われて碧は西島の横に座る。 「えへへ、ベッドでココア飲むとか初めてです!お菓子とか食べちゃダメ!!って怒られた事あって」 西島にもう一つのマグカップを渡す。 「俺も此上に怒られてたな……でも、病気の時はベッドでプリンとかアイスとか食べれて……なんか、特別な感じになれた」 「はい!今、僕がそうです!なんか特別な感じします!」 ニコニコと笑う碧。 その笑顔に癒される。 「ふふ、でも、ちひろさんも甘い物好きだったんですね……ココアにマシュマロ入れると凄く甘くて美味しいです!溶けかけたマシュマロが生クリームっぽい」 碧はココアを飲んで感動している。 「子供時代はね……碧が気に入って良かった……あれ?マシュマロって家にあった?」 西島はいつマシュマロを買ったかな?と考える。 「えっと、あの、僕のオヤツです」 えへへ、と照れ笑い。 甘い物大好きな碧はマシュマロも大好きでたまにコッソリと買うのだ。 あまり甘い物ばかり買うと西島にそんな食べちゃダメ!って注意されるから。 アイスも1日2個まで。 「でも、ココアに入れるなんて考え無かったです……焼いて食べた事はありますけど」 「ああ、焼いても美味いな」 「はい!美味しいです」 元気に返事をする碧。口元に溶けたマシュマロが付いていて、西島はフイに顔を近付け、口元をぺろりと舐めた。 「きゃっ」 ビックリして声を上げる碧。 「マシュマロついてた……甘いな」 碧に微笑む。 ひゃー!!!ちひろさん!!!心臓に悪いです!突然そんな……ちひろさんのキスも甘いですよ。なんて言いたくなる碧。 「マシュマロのココア、気に入った?」 「はい!大好きになりました」 「碧は素直で可愛いなあ」 西島は碧の頭を撫でる。 撫でられた碧は気持ち良さそうにスリスリと寄ってくる。まるで猫。 本当に可愛い。 撫でられながら碧はハッ!!!と気付く。 ぼ、僕があまやかされている!!ちがう、僕がちひろさんを甘やかしたいんだった。 「ちひろさん!!僕に甘えてください!」 突然の発言に西島ははい?と首を傾げる。 「急にどうして?」 「僕、ちひろさんが治るまでちひろさんを甘やかすって決めてるから!僕にして欲しい事言ってください」 碧は真面目な顔で西島を見ている。 何だか小さな子供が親の手伝いを突然したくなり、手伝う!!と発言しているみたいで、なんとも和む。 「んー?急に言われても……」 西島は少し考えて。 「それは今しかダメ?」 「えっ?いつでもいいですよ?何ですか?僕に出来る事ならなんでも!!」 任せてください!と言わんばかりの碧。 「じゃあ、耳かして」 西島は碧の耳元であるお願いをする。 それを聞いた碧の顔は見る見る赤くなり、「えっと、あの、今ですか?」と慌てている。 「ううん、今は此上と神林がいるだろ?帰ってから……お願い聞いてくれる?」 改めて西島に聞かれ碧は真っ赤な顔で頷く。 「ちひろさんがやって欲しいなら僕頑張ります」 「まじ?やった!!じゃあ、早く治さないとな」 西島の言葉に真っ赤になりながら何度も頷く碧。 ち、ちひろさんが元気になるなら……僕、頑張ります!!! 心に誓うのであった。

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