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幸せって意外と近くにあるもんですね。

◆◆◆◆ 神林が作った朝食を2人共、完食した。 「良かった、食欲出てきたみたいで」 神林は西島の食器を重ながらホッと息をつく。 「うん、美味かった」 ニコッと神林に微笑む西島。 食器を重ねる手が思わず止まる。うわ!!千尋、そんな可愛く笑うんだ……えっ?マジで?今までそんな風に笑った事なかったじゃん……しかも、料理美味かったとか……そんな素直に。 今までとちょっと違う西島に戸惑ったようだ。 もしかして、熱は高いのかも? 思わず額に手を置こうとするが先きに此上の手が額にあった。 「なんだよ、此上?」 「いや、素直だから……熱上がったのかな?って」 此上は冗談で言ったというより真顔。 「失礼だな……美味いのを美味いって言って何が悪いんだよ?」 「お前、俺が作る飯にあまり美味いとか言った事無かっただろ?」 「美味しくなかったら食べてないよ!それに此上と一緒に居たのって思春期真っ只中だろ?素直になれるわけがない」 「いや、お前、まだ続行中だろ?」 「喧嘩売ってる?」 そんな2人のやり取りをハラハラして見ている神林。見慣れてはいるけど、今は碧もいるのだ。碧が驚いているんじゃないかと、チラリと気にする。 碧はニコニコと此上と西島のやり取りを見ていて、あれ?って神林は予想外なニコニコに逆に神林が驚いてしまう。 「碧ちゃん……驚かないの?」 思わず聞いてしまった神林。 碧という言葉で西島がしまった!!という顔をする。碧が側に居るのを忘れていて、いつものようにやってしまった。 「えっ?家で見慣れてますもん……お兄……えっと、兄達がご飯の時とか今みたいにやり取りしてて、仲が悪いわけではないって分かりますし、兄弟ってそんなものでしょ?ちひろさんと此上さんって兄弟みたいです」 碧のニコニコの理由はそれだった。 兄達と同じ。仲良しだからそんなやり取りになってしまうのを知っているから。 「確かに」 神林は西島と此上を交互に見て笑う。 「何笑ってんだよ」 ムッとしている西島。 「千尋に男兄弟居たらこんか感じかな?って」 「神林は兄弟多いもんな」 「まーね、確かに碧ちゃんの言う通り、兄弟喧嘩みたいなものか」 「俺は此上みたいな兄はうるさくて嫌だけどな」 「お前が言う事きかないからだろ?」 西島の言葉に反論する此上。 「俺はもう大人なんだからほっとけ!」 プイっと横を向く西島。 「そんな事言って、本当はお兄ちゃんが構わないと寂しいくせに」 此上はからかうように言う。 横を向いていた西島は此上の方を向き、じっーと見つめる。 「何?図星?」 ニヤリと笑う此上。その此上に「ところで、何時から2人付き合ってんだよ?」と聞いた。 その言葉に神林はいきなり咳き込んだ。 ニヤリと笑っていた此上は驚きの表情に変わる。 えっ?なんで知って……神林は動揺する。俺言ってない……えっ?篤さんが言ったの? 神林は此上を見るが彼も驚いているから言ってはいないようだ。 じゃあ、碧……?と碧を見るが違うかな?と思う。 「えっ?なんで……?」 急に神林は怖くなった。 西島の好きだった相手だ……会いたかった相手に会えて……しかも、今は精神的に疲れているような西島に更にダメージ与えるような事。 嫌われる? 色んな覚悟が同時に来た。 「なんでって、名前で呼びあってるし……トオル、篤さんって前は神林くん、此上さんだっただろ?」 西島の言葉に神林と此上は顔を見合わせる。 気を付けていたようで、気を付けていなかったようだ。 「あと、昨夜……水飲もうと寝室出た時にお前らイチャついてたから……つーか、他人の家でイチャついてんじゃない!水飲めずに戻ったんだからな」 あ!!!しまったあ!!と2人、その場に崩れ落ちそうだった。 最後まではやってはいないが、キスやらキスやら……もう、本当にごめんなさい!!と謝りたくなる。 「な、なんか、ごめん」 神林はもう、恥ずかしさと色んな思いが同時に来ているものだから西島の顔を見れない。 きっと、顔は赤い。 「神林が言ってた恋人って此上だったのかって……もっと、早く言えよ……此上も!!」 2人を睨む西島。 「ご、ごめん」 此上と神林の声が綺麗にハモった。 「言うつもりだったんだ……」 神林は俯いて話す。顔をちゃんと見れない。 凄く怖いから。イチャついていたのを見られたのも恥ずかしかったけれど、それよりも怖さが先に来た。 「タイミングが難しくって」 「なんで、タイミングいるんだよ?」 「それは……」 お前が篤さん……好きだったのを知っているからって言いそうになって止めた。 碧が居る。 恋人の初恋とか聞きたくないだろう。しかも、目の前に居るんだから。 「……俺さ、此上が神林を好きだったの、前から知ってるんだ」 「は?」 神林は驚いて顔を上げた。 「は?って、本人から聞いてるし」 「えっ、ええ?どういう事?」 「留学する前に喧嘩したんだよね、その原因の1つがお前」 「……は……い?」 驚いてもう、頭、真っ白。神林は此上へ視線を向ける。 俺……何も聞いてないんですけど?そんな表情で。 「此上がお前には告白しないとか言うし、イライラして喧嘩した」 「ちょ、ちょっと待って!!えーと、俺、コーヒー飲んで落ち着いていい?」 神林は頭はもう、パニック寸前だった。

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