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幸せって意外と近くにあるもんですね。 2話

◆◆◆◆ 取り敢えず、コーヒーを飲んで落ち着こうとしている神林。 でも、頭の中は……えーと、えーと、どうすればいいんだっけ?とまだパニックだった。 「もう落ち着いた?」 西島に聞かれるけれど、頷いて、いや、落ち着いていない!!と首を振る。 「なに?どっちなん?」 頷いて首を振る神林に首を傾げる西島。 「トオルは多分、頭、パニック中だと思う」 此上の説明に「まあ、見てたら分かるけどね」と西島は笑う。 「じゃあ、此上が説明しろよ」 此上を見る西島。 「……お前に気付かれてるとは思わなかったから、俺も微妙に頭の整理が追いつかない」 「何だよ、それは」 どうして、直ぐに教えてくれなかったんだろう?って寂しくもある西島。 「……直ぐ、教えてくれてもいいじゃん……だいたい、俺より先に神林は此上に会ってたって事だろ?此上に会ったんなら言えよ」 文句の一つを言っても罰は当たらないだろう。なんて、西島は思う。 「あ、会ったのは偶然だったんだ……」 「此上から待ち伏せされてたんじゃないの?」 ニヤリと笑って西島は此上を見る。 「えっと、いや」 待ち伏せ?……えっ?あれ?どうだったかな?頭の中、パニックの神林はしどろもどろ。 「待ち伏せはしたよ、悪いか」 「開き直りかよ」 ニヤリと笑われたのが嫌だったのか此上は少しキレ気味のようで、それも西島にはおかしくてたまらない。 いつも、ポーカーフェイスで動じないイメージ。 どんな時も冷静な感じがするのに、今の此上はいつもと違い、動揺しているかのようだ。 「彼氏の事、言わなかったのはそういう事か……言ってくれてもいいじゃん!」 西島は此上と神林を交互に見る。 言ってくれても……そう、言われても言えない。 だって、西島が好きだった人だ。 どうして、言えなかったのかって……今、言えるわけがない、目の前に碧が居る。 西島の初恋の話はきっと、聞きたくないかも知れない。 神林は碧の事を考えていたので、チラリ、チラリと碧を気にする。 西島は神林の視線が碧に行っているのき気付いた。 どうして、碧を気にするのか?……少し考えて分かった。 「碧には隠し事とかしたくないから言っちゃうけど、俺ね、子供の頃から高校生くらいまで……此上が好きだったんだ」 突然の西島の告白に神林の目はクリクリと大きくなり、何言い出すんだ!お前!!という表情を見せる。 此上も予想外だったのだろう、驚いた顔をして、碧を気にした。 恋人の好きだった人の話をされてしまうと、この子は大丈夫なのだろうか?と。 でも、碧は驚くとかそういう表情とは違い、真っ直ぐに西島を見つめている。 「お前、何言って……碧ちゃんにそんな事」 此上は少しハラハラしていた。普段の西島だったらこんな事を言い出さない。どちらかと言えば隠す方で……もしかして、追い詰めてしまったのだろうかと心配さえしてしまった。 「碧は俺の恋人だから隠し事とかしたくないんだよ」 「いや、お前はそれでいいかもしれないけれど、聞かされる碧ちゃんの身にもなれよ」 西島も心配だけれど、碧も心配だ。なんせ、まだ、子供。高校を卒業したばかりで……動揺も凄いだろうと思ってしまう。 「あ、あの、僕……わかります!!此上さん、カッコイイですもん!!ちひろさんが子供時代から好きになるのわかります」 碧は目をキラキラさせて、興奮がちに言った。 心配していた此上は碧の反応にあれ?とフリーズしてしまう。 「もし、僕も此上さんが小さい頃から守ってくれてたら好きになると思います。それくらい此上さんは素敵な人なんです。ちひろさんは見る目ありますよ」 ニコッと笑って西島を見る碧。 「碧……」 ニコッと笑う碧に西島も微笑む。 「俺はね……きっと、今の碧みたいに憧れてただけだったと思う……近くで守ってくれていた此上を恋愛感情抱くとか……子供だったんだきっと、碧を好きになって、本当の感情を知ったんだ……あれは恋愛感情じゃない……きっと、憧れと家族愛だ」 西島はそう言って此上に微笑んだ。

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