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幸せって意外と近くにあるもんですね。 4話
「次、謝ったら怒るからな?だって、謝る事じゃないだろ?幸せな事なんだからさ」
ニコッと西島が笑う。
彼が笑うと胸がチクチク痛む。
彼を好きだった頃を思い出すし、彼が此上に片思いしてた頃を思い出す。
「俺は運命の人に出会えた……だから、あの頃があんな感じで終わって良かったって思う」
「運命の人?」
碧は西島の言葉に反応をする。
「うん、碧が俺の運命の人」
「ちひろさん!!」
碧の大きな瞳が更に大きくなる。
「うん」
「ぼ、僕でいいんですか?」
碧は嬉しそうな表情を見せる。その嬉しそうな表情はみるみる頬を赤く染めてより一層、碧を可愛くさせた。
ち、ちひろさんが僕を運命の人って……どうしよう、幸せ過ぎてどうにかなりそう……
もう、興奮しちゃうよ!頭がボーッてなるよ!ちひろさん!!
「あ、碧!!」
「えっ?碧ちゃん!!」
西島が慌てていて、此上も神林も慌てている。なんで?どうしたの?って思っていた。
皆が慌てた理由は直ぐにわかった。
鼻血だ……
西島がとっさに近くにあったタオルを碧の鼻に当てた。
「碧、大丈夫か?」
心配そうな西島と此上達。
「どーひたんですか」
口元にタオルが当てられるから上手く発音が出来ない。
「碧ちゃん、鼻血出やすい体質なのかな?」
神林の言葉で自分が鼻血を出しているのだと碧も気付く。
「ひゃい」
はい!と言いたかったが上手く言えない。
碧の鼻血騒動で動揺した神林の気持ちは徐々に落ち着いてきた。
甲斐甲斐しく碧の世話をする西島。
幸せそうだ。
うん……二人、凄く幸せなんだな。
そう思ったら少し落ち着いた。
◆◆◆◆◆
碧を休ませる為に寝室へと2人で来た。今は碧がベッドに居る。
ううっ、僕ってば……
碧はしょんぼりとしている。
鼻血は止まった。でも、折角、西島から感動の言葉を貰ったのに鼻血……とか。
あーん、僕のばかばかばか!!!
「碧、大丈夫か?」
鼻血を出しても西島は優しい。
「はい……」
しょんぼりと返事を返す。
「どーした?調子悪い?」
元気がない碧を気にする西島。
「違います……せ、せっかく……ちひろさんに運命の人って言ってもらったのに鼻血とか……台無しです」
今にも泣きそうな碧。
「台無しじゃないよ」
西島は碧の頭を撫でる。
こんなにも可愛い碧。彼が何をやっても可愛いし、何を言っても可愛い。
「はい……」
頭を撫でられた碧は少し元気が出たのか笑った。
「あ、あの、僕、大丈夫だからちひろさんがベッドに入って下さい」
病人だった人がベッドの側で座っているのはどうも申し訳ない。
「じゃあ、一緒に入ろう」
西島は碧の隣へと入って来た。
「ちひろさん、もう大丈夫なんですか?」
「うん、碧が看病してくれたから……ありがとう碧。いっぱい心配させてごめん」
「ちひろさんが元気になるなら僕は何でもやれますもん!元気になって良かったです」
碧は元気そうな西島に安心した。此上にお姫様抱っこされて運ばれて来た時は心臓が止まるくらいに驚いた。
でも、隣に居る西島は元気そうに見えて、本当に嬉しい。
西島の体温と安心からか、碧はウトウトし始めてそのまま眠ってしまった。
そんな碧を見つめる西島。
彼の頭を撫でる。
本当に愛おしい存在。
こんなにも誰かを愛おしいって思える日が来るなんて自分でも思わなかった。
此上に対する恋心は寂しさから来たのだと今なら分かる。
それを此上はちゃんと見抜いていたのだろう。
此上にはきっと一生叶わない。
西島も碧を抱きしめるとそのまま眠りに落ちた。
◆◆◆◆
「2人とも寝ちゃったみたいだな」
此上は寝室を覗き、笑う。
「本当に何時までも手のかかる子だよ、千尋は」
「何か碧ちゃんの方がしっかりしているように最近思い始めました」
横に居た神林も笑う。
「さて……次はトオルだな……おいで」
此上は神林の手を引きキッチンへ。そこで、ホットミルクを作りマシュマロを入れた。
「ホットミルクが甘くなるから小さい頃の千尋はコレも好きだったんだ」
そう言うと神林へ渡す。
神林を椅子に座らせ、「ずっと泣きそうな顔をしていた……別に泣いても構わないよ?俺は側にいるから」
微笑んで頭を撫でる。
「篤さん……千尋と同じ扱いですか」
神林はつい、笑ってしまった。
「千尋と同じじゃないよ?だって、千尋にはこんな事はしないから」
此上はそう言うと神林にキスをした。
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