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幸せって意外と近くにあるもんですね 16話
◆◆◆◆
直樹は碧とのメールのやり取りにちょっとガッカリしていた。
遠回しに誘わず、ハッキリと誘えば良かったな……と。
碧に恋人が居てもやはり顔を見たいし、また話もしたい。だから、友達と福岡に行くから観光地教えてなんてメールして見た。
CMで流れていた光の道も碧と見てみたいと思ったから。
でも、返ってくる返事は直樹が欲しい返事では無かった。
そりゃそうだ……遠回しの誘いだし、友達と!と書いてしまったものだから案内しましょうか?とは書いてはくれない。
あーあ、ちゃんと遊びに行くから都合の良い日を教えてって書けば良かった!!
直樹はベッドに転がりジタバタしている。
俺の馬鹿!!
女の子を誘う方がもっと簡単な感じがする。
意識した子を誘うのにこんなにも不器用だとは。
碧……今頃、何してんのかな?
ちーちゃん先生と一緒かな?
いいなあ、ちーちゃん先生。
そんな考えもしたものだから余計にジタバタしてしまうのであった。
◆◆◆
「で?結局、直樹からの返事は?」
食事も終わり、2人で片付けをしている。
「残念!って言う返事が来ました」
西島の質問に答える碧。
その残念はきっと、碧と行けないからの残念なのだろうと西島は思う。
「僕、福岡来てまだ日が浅いからアドバイスとか無理なんですけど、ちひろさんいい場所とか美味しいモノとか知ってますか?」
「あー、観光地はタワーか太宰府か……観光なのか買い物なのかどっちかハッキリしたら言えるけど」
「そうですね、聞いてみます」
碧は『ちひろさんが観光するのか買い物したいのかどっちですか?って聞いています』
と返事をした。
ベッドでゴロゴロと悶えていた直樹の止めを刺す内容のメールになるとは知らずに。
ちひろさんが聞いてます。というメールを読んだ直樹は、あああ!!ちーちゃん先生と一緒に居るのか!そうだよねえ、恋人だもんなあ……一緒に住んでるって言ってたもんなあ。
更にのたうち回る直樹。
ちくしょー!!ちーちゃん先生め!!
そう叫びたかった。
ちーちゃん先生が居るなら案内しましょうか?とはきっと碧は言ってくれない。
本当に残念。
とりあえず、買い物したいと返事をした。
……俺、碧を忘れられるかな?
ため息が出る。
◆◆◆
「満足しました?」
ベッドに寝転がる恵に聞く愁。
「ああ、結局3回やったからな……ちょっとスッキリした」
「3回やって、ちょっとしかスッキリしないなんて絶倫ですか?」
クスクス笑う愁。
隣に寝転がる愁の頭をポンポンと軽く叩く恵。
「何ですか?」
「……愁が止めてくれて良かったなって」
「星夜くんですか?」
「……そう。やっぱ、誰かに止めて貰わなきゃ気付けない事ってあるよな……」
「犯罪だって気付きました?」
「気付きました!」
「それは良かった……あのままだったらダークサイドに恵さん落ちてましたよ、で、ダースベイダー卿になってました」
キリッとした顔で言う愁に思わず笑う恵。
「傷つけなくて良かった」
「そうですね……可愛い弟なんでしょ?もし、一線越えたかったら無理矢理とかコソクな手口使わずに正面から当たって砕けて下さい。そっちが恵さんらしいから」
「何それ、俺、砕ける前提なの?」
「そうです……だって、彼にはユウちゃんが居るでしょ?それに恋仲になる運命なら時期が来たらそうなるかも知れないでしょ?それかとっくになっているか」
愁の言葉を思わず彼を引き寄せる。
「お前ってさ……中身、男前だな」
「恵さんには負けますけどね」
「なあ?」
「はい?」
「もう1回する?」
「……本当、絶倫ですよね恵さん」
「するの?しないの?」
「はいはい、しますよ!」
愁は身体を起こすと恵にキスをする。
◆◆◆◆
「星夜くん!!おはようございます」
朝、会社近くで斉藤を見つけた碧が声をかけてきた。
「おはよ、あれ?西島部長は?もういいの?」
「はい!ちひろさんも会社来てますよ?」
「そうなのか?もういいんだ?あれ?西島部長一緒じゃないの?」
「それが……朝早くに会社から呼び出しがあって」
「呼び出し?呼び出しされたから西島部長会社来てるの?えっ?大丈夫なのか?」
「体調は良くなったんですよ、タイミング良く呼び出されただけです」
碧の言う通り、朝食を食べていた時に西島の電話が鳴ったのだ。
体調が回復したので出勤予定の西島は碧と同伴出勤は叶わず、先にマンションを出る事になってしまったのだ。
「呼び出しって何だろ?何かあったのかな?」
斉藤と並んで碧も歩く。
「神林先生知ってるかもですよ?」
「あ、そうだな……寄ってみるか!」
碧と斉藤は神林の所へと寄り道を決めた。
会社内へ入ると受付の女性が「斉藤くん!」と声をかけて来た。
受付の女性とは前に飲みに行った事があり、結構仲が良いのだ。
「斉藤くんって佐々木部長と仲が良かったよね?」
「うん……なんで?」
何故に佐々木の事を聞いてくるのだろう?と斉藤も碧も思った。
「佐々木部長、会社辞めちゃったんだって……斉藤くん、知ってた?」
「は?」
その言葉に斉藤も碧も同時に固まってしまった。
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