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幸せって意外と近くにあるもんですね 24話

「何で千尋が居るんだよ?ウチの会社呼ばれていないだろ?」 佐々木は不思議そうな顔をして西島を見ている。 「呼ばれてないけど……入り込んだ」 「どうやって?」 「……父の……」 父親の力を借りた。そう言いたいのだが、言うのも何か悔しいというか、嫌なので口ごもる。 「ああ、そうか……千尋の親父さんか」 佐々木は納得したような表情を見せた。 「で、何してんだよ?」 佐々木と西島の質問が被る。 何か気が合うみたいで嫌だなっと西島は露骨に嫌な顔をした。 「俺は専務達に頼まれて……」 「専務?」 佐々木の質問にコクンと頷く。 「専務が明治とかの貴族じゃないんだから、恋人居るのに会社の為に結婚とか馬鹿げてるって」 「あはは、専務らしいな……それで、千尋が来てくれたんだ?」 佐々木はニコッと微笑む。 「き、来たくて来たわけじゃない……斉藤が泣いてて可哀想だし、斉藤が泣くと碧が心配するからそれで……」 お前の為にじゃない!!と素直じゃない西島はここに来た理由を言う。 「千尋……お前って」 素直じゃない言い方の西島につい、笑ってしまう佐々木。 「何だよ?」 「高いスーツ似合うよな……本当、顔立ちいい奴は憎たらしい」 「はあ?」 お前、何言ってんだ!折角来たのに!!と言いたい。言いたいけれど、我慢する西島。 「ありがとう」 西島の頭をクシャと撫でる佐々木。 「お前!!」 撫でる手を慌てて叩く。 「来てくれて、ありがとう。」 改めて礼を言われ、西島は怒るのを止めた。 「昨日さ、ホテルに戻る途中で拉致られたんだ」 「えっ?」 佐々木の言葉に驚く西島。 「親父の差し金なんだけど、ここに連れて来られて部屋に閉じ込められてた。本当に明治の貴族か何かだな……」 「そうなんだ……」 「そしたら、さっき、ヒロ兄が出してくれた窓から」 「窓!?」 西島は佐々木の叔父を思わず見た。 「縄ばしご降ろしただけだよ。ドアは見張りあったし」 ニコッと微笑む叔父。 縄ばしご降ろしただけでも充分凄いと西島は思った。 「外に連れ出してやってよ」 西島を見て微笑む叔父。 それはもちろん……と言いたい。でも、逃げてもきっと追いかけてくる。 「俺は家を継ぐ気は無いし、星夜と別れる気も無い」 「いいのか?」 西島のいいのか?は覚悟はあるのか?という意味だ。 「俺はとっくに覚悟はできてる……星夜の方が大事だ」 佐々木は西島を見て微笑む。 それは凄く良い笑顔で、何かふっ切れた感じがした。 「ユウは窮屈な仕事とか似合わないし、自然児だし?」 叔父は佐々木を見て笑う。 「ヒロ兄サンキュー……窓からヒロ兄来た時は驚いたけどね」 「あはは、昔は良く家を抜け出してたからね。マイ縄ばしご」 「何だよソレ」 佐々木もあははと笑う。 「さしずめ、騎士様ってとこだな」 佐々木は此上を見てニヤリと笑う。 「姫を守るのが騎士だからな」 此上は真顔で返す。 「……此上さん、まだ怒ってます?」 「別に?」 2人の会話が分からない西島はキョトンとしている。 「まあ、千尋に悪さしなければいいよ」 「流石にもうしませんって!星夜居ますから」 「えっ?えっ?何の事だよ?」 訳が分からない西島。 「ん?ほら、劇でキスしようとしただろ?」 此上は誤魔化した。 本当は西島を抱こうとした事を言っているのだけれど、あの日、酔っていた西島はそれを知らない。 「あー!!もう、その話はやめろ!!」 顔が赤い西島。 「ほら、やっぱり君はまだ、可愛くて色気あるよ」 佐々木叔父がクスクス笑う。 「もう!いい加減にして下さい」 からかわれていると思ったのか西島は怒る。 「あはは、ごめんごめん!ほら、もう行かなきゃ見つかるよ」 佐々木叔父は車の鍵を此上に渡す。 「車はいつでもいいよ。ユウを隠して連れ出して」 「はい」 此上はニコッと微笑む。 「ほら、じゃあ、佐々木君は後部座席に隠れて、千尋は助手席」 此上は2人を促す。 「また、飯食いいこーな」 佐々木叔父は佐々木に微笑む。 「うん、ヒロ兄ありがとう」 佐々木は車の後部座席へ乗り込む。 「じゃあ、お願いね」 佐々木叔父はシャッターを開ける。 そして、佐々木を乗せた車を走らせた。 ◆◆◆◆ 恵は車に戻っていた。 運転席の愁が誰かと話しているのを待っているのだ。 暫くして愁が電話を切ると「どうだった?」と勢い良く聞く。 「なんか、結婚するとか何とか……」 「はあ?」 恵は驚きの声を上げた。

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