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幸せって意外と近くにあるもんですね 27話

◆◆◆ 片付けをしていた時にチャイムが鳴ったのでもしかして佐々木部長?と玄関に急いだ碧。 斉藤は風呂に入っているので、とにかく確認をしたかったのだ。 佐々木なら直ぐにドアを開けてくるだろう。鍵を持っているのだから。でも、チャイムを鳴らすから違うのだろうと思うが少し期待した。 どうか、佐々木部長でありますようにって! ドアについている覗き穴から確認すると恵だった。 星夜くんのお兄さんか……とドアを開けるといきなり抱き締められた。 驚いたが星夜と間違えていると直ぐに分かった。 「星夜、迎えに来た」と恵が言ったので。 碧は風呂場へ着くと「お兄さんが来てますよ!」と声をかけた。 「えっ?めぐちゃんが?」 驚いたような声が中から聞こえてきた。 「上がって貰いますか?」 「……えー」 どうしようと斉藤は悩む。 酔った行為とはいえ、あの時は怖かった。 いつも、優しい恵が違う人に見えて。 本当に犯されると思った。 セックスは好き。気持ちいいから。 でも、佐々木と出会って、彼を本気で好きになるとセックスは愛し合った者同士でしかやってはいけない気がしてきて、女の子をとっかえひっかえやっていた自分が信じられないと思った。 恵と気持ち良い事をするのは好き。でも、その先は進みたくない。 越えてはいけない一線なのだと思ったから。 もし、佐々木と出会わなかったら、その線は越えたのだろうか? 「ダメ……」 考えて出した答え。 「どうして?」 質問してきた声が碧ではなく恵だったので斉藤はバスタブの中で驚いた。 「めぐちゃん」 ドアの向こうに恵が居る……それだけでドキドキしてきた。 無理矢理……どうにかされちゃうのかな?そう思ってしまったから。 「どうして?」 その声に驚いたのは碧も同じ。てっきり、玄関で待っていてくれると思っていたから。 振り返ると恵ともう1人、知らない男性が居て、派手そうだが、碧にペコリとお辞儀をして「勝手にごめんね!止めたんだけど、恵さんが」と謝ったので見た目よりも良い人なのかな?と碧は大丈夫ですと首を振った。 「ここに来る前に会社に寄ったんだ……謝ろと思って……お兄ちゃん、酔っていたとはいえ星夜に怖い思いさせたみたいでさ」 ドアの向こうの恵の声は優しいいつもの彼。 「寄ったついでにユウちゃんの話も聞いた」 その言葉に斉藤はビクッとなる。 「風呂上がっておいで、話があるから」 「話?」 何を話すのだろうか?謝罪はもう受けた。……ユウちゃんの事? 「うん、早くおいで待ってるから」 恵はそう言ってリビングへ。 「星夜くん、タオル置いておきますね、諭吉は僕がちゃんと乾かしますから」 碧も恵の後を追う。 風呂場で諭吉を抱っこしまま斉藤は悩む。 「何の話?めぐちゃん」 何故だろう?凄く不安でいっぱいになった。 ◆◆◆◆ 恵達にお茶……と碧はキッチンへ。 それを察知した愁が「えっと、名前なんだっけ?」と碧に話かける。 「佐藤碧です」 「碧くん、よろしくね。俺は愁!恵さんの見張り役」 変な自己紹介をする愁。 「見張り役ですか?」 キョトンとする碧。 「うん、そう……あの人見張っていないとろくな事しないから」 愁は笑いながら説明する。 「愁、俺に失礼だぞ!」 もちろん、恵に聞こえていたので、拗ねたような恵の言葉。 「全然、失礼じゃないと思います!本当の事ですから」 愁は恵にそう返すと「お茶入れようとしてるでしょ?いいんだよ、直ぐに帰るから」碧に微笑む。 「でも……」 「いいから、おいで!」 愁は碧をリビングへと連れて行く。 丁度、濡れた諭吉がリビングへ来た。 「わあ!諭吉ダメでしょ、絨毯が濡れちゃう」 碧は慌てる。 「斉藤がちゃんと拭いてくれたばい?そいより、風呂入ったら腹減ったばい」 流石猫……空気を読まないなと碧は感心した。 客が居ても平気みたいだ。 「マグロくれんか?マグロ!」 「マグロ?いま、マグロって言った?」 愁がマグロという単語を聞き取った。 「聞こえたなマグロって」 恵も聞き取ったらしい。 「す、すみません……マグロが好きで催促するんです」 碧は恥ずかしそうに説明をする。 「すごいねえ。マグロって言えるんだあ」 感動する愁。 「碧、冷蔵庫にマグロあるから諭吉にあげていいよ」 斉藤が風呂場から出てきていた。 「なに!斉藤、良か奴やな!」 諭吉は斉藤の足元でニャーニャー鳴いて催促する。 「なんか、催促してるね可愛い」 愁は猫が好きみたいでニコニコしながら諭吉を見ている。 「星夜くん、ごめんね……うちの諭吉が」 「ううん、諭吉にはいっぱい癒し貰ってるから」 斉藤は足元の諭吉を抱き上げる。 「ドライヤーかけても平気?」 「うん、怖がらないよ?でも、僕がやりますよ!お兄さん来てますし」 ニコッと微笑む碧。 斉藤は恵とあまり話をしたくはなかった。 きっと、彼は勘が鋭いのだろう。 恵が言いたい言は聞きたくない言葉なのだから。

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