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幸せって意外と近くにあるもんですね 28話

◆◆◆ 「斉藤が心配していたぞ?」 「星夜……」 西島の言葉に斉藤を思う佐々木。 連絡が出来なかったから心配はするだろう。なんせ、スマホを没収されてしまったのだから。 スマホは指紋認証でしか見れないから中身を見られる事はないと思うが少し心配でもある。 スマホから斉藤へ何かしらアクションがあったら。 嫌な思いをする羽目になったら? 心配してしまう。 「辞めた事でショックで泣いて仕事出来ないから神林が早退させた。元々、風邪引いてたし」 ああ、凄く心配しているだろうな?と佐々木は早く斉藤に逢いたくてたまらない。 「碧が一緒だから大丈夫だとは思うけど」 「碧ちゃんが?」 1人で居るのだろうと思っていた佐々木は少しホッとする。 仲良しの碧と居れば寂しさも紛れるだろう。 「お前さ……いつも、チャラいけど斉藤の事、大事にしているのは分かる……分かるから仕事辞めたって聞いた時は何かあったんだなって思った。専務達も、お前に恋人が居る事は気付いてたみたいで幸せそうなのに納得いかないって息巻いて、人事部の人達もまるで葬式みたいに元気なくなってて……天然人たらしってまで言われてたぞ」 西島の言葉に思わず笑う佐々木。 「それってさ、千尋も、ものすごーく心配したって事なんだろ?」 「調子に乗るな!」 「ありがとうちーちゃん」 「ちーちゃん言うな!」 西島は後ろを向いて佐々木を睨む。 「すいません、うちの千尋、素直じゃなくて」 からかうように此上は謝る。 「此上まで!!」 今度は此上を睨む西島。 「ちゃんと恋人の所まで連れていってやるよ……あとは、多分、千尋の親父さんが何とかしてくれると思うよ」 此上の言葉にピクっと反応する西島。 「電話、初めてしたんだろ?喜んでたぞ?」 「此上、うるさい!」 西島はプイと反対方向を向くと外の風景を見ている。 「あ、マンション帰る前に寄る所あるんだけど?」 佐々木は思い出したように言う。 「いいよ、寄ってあげるよ」 「ありがとう」 佐々木は此上に寄りたい所の場所を伝えた。 ◆◆◆◆ 「恵さん、めっちゃ、警戒されてますね」 斉藤が恵には近寄らずに諭吉にドライヤーをあてているのを見た愁の感想。 それはとっくに恵も気付いている。 何時もなら、めぐちゃんー!!って抱き着いてくるのに来ないし、目も合わせない。 話があると言ったのに音が大きいドライヤーを使う。 思いっきり拒否されていると泣きたいくらいに気付いている。 「自業自得ですけどね」 「愁……お前は俺に優しいのか冷たいのか分からなくなる」 「どっちもですよ。飴とムチ」 「俺はムチは要らない。Mじゃないから……飴だけでいい」 「恵さんは暴走止める人が居ないとダメ人間になりますよ?」 「この野郎め!」 とにかく、愛する星夜の警戒は解きたい恵である。 「碧くん、星夜と話あるからドライヤー代わってくれるかな?」 近くに座る碧へと声をかける。 「あ、すみません」 碧は慌てた。そうだった……お兄さん、星夜くんに用事あるんだった。 斉藤の側に行くと「ドライヤー代わります!お兄さんが話あるって」声をかける。 斉藤はチラリと恵を見た。 目があった恵はこっちおいでと手招きをしている。 諭吉の毛はとっくに乾いていて「星夜くん、諭吉の毛乾いてますよ?」とドライヤーを止めさせた。 「何?めぐちゃん」 仕方なく、恵に話かける。 「ここを出て、俺の所へおいで」 ……やはり、そういう話かと思った。 「いや、ここでユウちゃん待つ」 首を振ってそう言った。 「……お前のユウちゃん……親が決めた相手と結婚するらしいぞ……」 その言葉で斉藤も碧も固まってしまった。 何を言っているのだろう?そんな目で恵を見る2人。

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