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幸せって意外と近くにあるもんですね 29話

「だから、俺と帰ろう……ここに居ても彼は帰っては来ない」 恵は星夜の為を思ってその話をした。 大事にしている弟を本気にさせてたくせに結局は女と結婚する方を選んだ最低の男を忘れさせる為。 世の中は差別で溢れている。 同性愛者は傷つく方が多い。 恵も少なからず差別にあったり、傷ついてきた事が沢山ある。 可愛い弟にはそんな思いさせたくないし、泣くのはみたくはない。 忘れさせてあげれるなら、どんな事だってする。 「ユウちゃんは……」 震える声を出す星夜。 恵を涙目で見ている。凄く傷ついた顔。 ああ、だから……ユウちゃんとの交際反対だったんだ。 早く連れて帰って慰めてあげたい。 「帰ってくるもん……約束したもん……」 星夜はそう言うとポロポロ涙を零した。 「星夜……」 抱き締めて慰めようと彼の側へ行こうと立ち上がった。 「星夜くん!」 恵より早く碧が星夜を抱き締めた。 アレ……? 行き場所を失って立ったままの恵。 ど、どうしよう……。 「めぐちゃんのバカあ……なんで、俺の嫌がる事言うの?」 碧に抱き締められた星夜が泣きながらに言う。 「約束やぶらないもん!ユウちゃんは約束やぶらないのおお!!」 碧にしがみついてとうとう、大泣きしてしまった星夜。 「恵さん、言い方選ばないから」 愁にはため息つかれた。 「えっ?俺が悪いの?」 悪いのはユウちゃんだろ?と言いたいが、今、それを言ったら完璧に嫌われる。 「星夜くん、恵さんが言っている事は本当みたいだよ?多分、望まない結婚。親が勝手に決めたんだと思う……彼、資産家の息子なんでしょう?」 愁の言葉はトドメを刺す言葉だ。 碧もショックだった。 佐々木も斉藤も本当に愛し合っていて……見ていて凄く素敵だった。 これから先もずっと……一緒に居るものだと思っていたのに。 辛い現実を突きつけられた。 星夜は大泣きで、今すぐ連れて帰りたいが……きっと、嫌がる。 今は無理かな? ここに自分も泊まって落ち着いてから連れて帰ろうかと思った。 「愁、長期戦になるから着替え欲しい」 「は?」 「俺もココに泊まる」 「何言ってんですか?傷心の彼を抱くつもりですか?碧くん居ますよ?」 「違う!様子を見るだけだ!俺を鬼畜扱いするな!」 「鬼畜でしょーが、可愛い義弟、犯そうとしたり、デリケートな問題なのに言葉選ばないし」 愁に怒られる。 「な、何だよ?俺が悪者みたいに言うな!悪いのはユウちゃんだろ?星夜の後ろの処女奪って惚れさせたくせに女と結婚とか……ふざけやがって!」 恵は逆ギレ状態になる。 「今は悪者ですよ、恵さんは」 愁は肩にポンと手を置く。 「と、とにかく着替え!」 「はいはい」 愁はチラリと星夜を見る。 友達が居るから恵は変な事をしないだろうと考え、着替えを取りに行く事に。 玄関を開けようとドアノブに手を置いた瞬間、外側から鍵が開く音がした。 えっ? 一瞬、驚いた。 ドアが開いて、顔を出した本人も愁を見て驚いた? 「えっ?誰?あっ、もしかして星夜の友達かな?」 顔を出したのは佐々木だった。 「はい……そうです」 驚きながら返事をする。 「そっか、ごめんね……ありがとう。星夜は?奥にもう何人か居るよね?」 佐々木は玄関の靴を見て愁に聞いた。 「はい……えっと、星夜くんのお兄さんと碧くんが」 「は?お兄さん?」 碧は居るだろうと思っていた佐々木だが恵は予想外だった。 ◆◆◆◆ 寄り道したい所へ寄って佐々木はマンションに戻ってきた。 佐々木が戻る事で碧が要らなくなるので、いや、佐々木が危ないという理由で西島が碧を迎えに行くと言い出した。 泊まらせてもいいよ?という佐々木の言葉を却下! 3Pしたいとか言い出し兼ねないからだ。 此上も降りて3人でマンションまで行き、佐々木の部屋のドアを開けると見知らぬ男。 派手目な……でも、派手なだけで、目は優しい感じ。 佐々木と西島、此上に軽く会釈をする男。 年も若そうだから、星夜の友達だろうと佐々木は咄嗟に思った。 まさか、結婚するという事を告に来られるとは思ってはいない。 星夜の兄が居る……予想外の展開。 具合悪くなったのかな?と心配して、慌てて靴を脱ぐ。

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