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幸せって意外と近くにあるもんですね 32話

「何かいいね……こういうの」 此上は諭吉を抱き上げて微笑む。 「騒がしいのが似合うからな俺は」 佐々木も微笑む。 「俺、仕事とか順調にこなしてても、何か足りないってずっと思ってた……色々と考える度に幸せってどこにあるのかな?って、そもそも俺は幸せになれるのかな?とか……でも、凄い近い所にあったよ」 佐々木が言う幸せとは星夜の事。 「そうだね、幸せって意外と近くにあるんだよ。気付かないだけ、気付かないで終わる人も居るんだろうけど、大概は君みたいに見つける事が出来るんだ」 此上の言葉に佐々木は頷く。 本当にそうだ……幸せってもう、既に手にしていた。 気付いて良かった。 「トオルも呼んで改めて皆でお祝いしよう」 此上は微笑む。 「はい。ありがとうございます」 佐々木は頭を下げる。 「じゃあ、また!」 此上と西島の言葉がハモる、 「仲良しだな、本当」 佐々木に笑われ、言い返そうと思った西島だが、幸せな場面にそういうのは無しだなと大人な態度を見せ、碧と諭吉を連れて、佐々木の部屋を出た。 碧はずっと泣いていて、西島のハンカチだけじゃ足りないみたいで此上からもハンカチを借りてしまった。 佐々木叔父の車に乗り込み「とりあえず、トオル連れに行かなきゃな」と此上。 西島と碧と諭吉は後部座席。 「会社に寄らなきゃ……専務達に任務完了を告げないと」 スーツも返さなきゃいけない。 高いスーツだし。 此上は西島の勤める会社へ車を走らせた。 ◆◆◆◆ 西島達が帰った後、二人っきりの佐々木と星夜。 まだ、泣いている彼をお姫様抱っこすると寝室へ。 ずっと、抱きたかった。 逢いたくて死にそうだった。 ベッドに降ろすと泣いている彼の頬にキスをする。 何度も……何度も。 少し、しょっぱい味がする。 「ゆうちゃん……夢じゃないよね?」 なんて言う星夜。 「ゆうちゃんが会社辞めたって皆言うし、めぐちゃんもゆうちゃんが結婚するとか言うし」 また、涙と鼻水だらけになる顔。 佐々木はベッド近くのティシュの箱を取ると中から何枚もティシュを抜くと彼の顔を拭く。 「心配させたな」 「ゆうちゃんんん」 ぎゅっと抱き着いてくる。 「なあ、星夜……俺、そろそろ限界なんだわ……ずっと、お前抱きたくて」 「ゆうちゃん」 「星夜をめちゃくちゃ抱いてもいい?足腰立たないくらいに……」 「うん、うん……俺も……ゆうちゃんが欲しい」 その言葉に佐々木は押し倒す。 押し倒して直ぐにキスをする。激しいキスを何度も。 抱きたくてたまらない相手を目の前にするとこんなにも余裕がなくなるものなのだと、実感した瞬間だった。 ◆◆◆◆ 「いつまで拗ねているんですか?」 助手席で膝を抱えたままの恵に声をかける愁。 「うるせえ、ほっとけよ」 子供みたいな態度にため息が出る。 「露骨にため息ついてんじゃねーよ!」 顔を上げなくてもため息は聞こえる。 「はいはい、すみませんね」 「俺、今日、仕事しないからマンションに帰る」 本当にこの人は子供だ……と愁は車線変更をする。 その行き先は恵のマンションと逆方向だった。

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