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好きな人を守る騎士になりたいです
愁が向かった先は恵の仕事先だった。
車が駐車場に着き「お前!俺は帰るって言ったよな?」と恵は愁に怒り出す。
「怒る元気はあるみたいですね、降りて下さい」
「嫌だね、帰る!マンションまで送れよ……俺は傷心なんだよ、少しは優しくするとかあるだろ?ちくしょう……俺がどれたけ星夜を可愛がったと思ってるんだ、いきなり現れた奴にあっという間に持って行かれた……なんだよ、もう……」
怒るというより、拗ねる……拗ねるというより愚痴るという言葉が今の状況にはあっている。
グチグチ言う恵の言葉を遮るように「恵さん」と愁は名前を呼び、恵が愁の方へ身体を向けた瞬間、ドゴオッ!!!と鈍い音が車内に響いた。
一瞬、恵は固まったり、思わずドアへ背を向けた体勢で後ずさる。
「……何……やってんだ……」
やっと、言葉を発する事が出来たのは数秒後だった。
「壁ドンです……あ、壁じゃないか窓ドンですね」
愁が言う通り、彼の腕が恵の真横を勢い良く通り過ぎて窓ガラスを拳で殴ったのだ。
良く割れなかったな……というより、手は大丈夫なのか?と後から思った恵だった。
「いや、ドンって可愛いもんじゃなかったぞ、ドゴオッって音がした」
「じゃあ、窓ドゴオッですね」
愁は冷静に返す。
「……いや、そうじゃなくて、なんで窓ドンやってんだよ?」
「恵さんが女みたいに愚痴るからです!振られたってさっさと認めればいいのに」
「振られた言うな!!」
恵は愁を睨む。
「振られたんです、あなたは……星夜くん、ちゃんとした人を選んだじゃないですか?流石、俺の弟って褒めてやればいいのに」
「う、うるせえ!どうせ、俺は心が狭い男だよ」
「そうやって直ぐ、いじける」
「悪いかよ」
「恵さんはチャラくてセフレもいっぱい居て、面倒くさいけど、仕事は出来るし、たった1人で今の店を大きく出来るくらいに凄い人なのに、本当……振られたくらいで情けない」
愁は恵の胸ぐらを掴むと自分の方へ引き寄せ、そのままキスをした。
なんじゃそりゃ!!!と恵は思いながら愁にキスされた。
唇が離れ「あなたみたいに女々しい男は俺みたいなシッカリとした男と付き合うのがいいんですよ?」と愁は真顔で言う。
「……なあ、もしかして俺を口説いてる?」
「口説いてます」
「すげえ、男前だなお前」
「でしょ?今がお買い得ですけど?」
「……セックスさせてくれるなら」
「しますよ……でも、どちらかと言えば、恵さんを抱きたいです」
「えっ?」
愁の言葉に驚く。
「俺、本当は攻めなんですよ!タチの方……恵さんに合わせていただけです」
「何?その告白」
「今から、奥の部屋に言って恵さんをめちゃくちゃ抱いていいですか?失恋の痛み忘れるくらいに」
「それって違う痛みを受けるって事だよな?」
「いいから、さっさと俺に抱かれて下さい」
愁はそう言うとまた恵にキスをした。
◆◆◆
「えっ?プロポーズしたのか?」
医務室で神林に佐々木と斉藤の報告をする西島達。
「佐々木部長、カッコよかったです」
碧はまだ瞳が濡れたままでウットリしている。
「思い切ったなあ」
神林も話を聞いて、嬉しそうな顔をする。
一時はどうなるかと思ったけれど、本当に良かった。
「俺、専務達に報告してくるから碧をよろしく」
碧を神林と此上に託し、医務室を出て行った。
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