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好きな人を守る騎士になりたいです。5話

お見合い……。 前も西島が結婚するという誤解をした事があった。あの時も凄く不安で悲しくて……でも、誤解だったから今の関係になれた。 西島は年齢的にも結婚をススメられるのだと改めて感じた。 どうして、結婚をススメてくるのだろうか?佐々木もそうだった。 法律で何歳以上は必ず結婚しなければいけない!とかいうのは無いのに。 碧の兄弟達はまだ誰も結婚はしていない。 だからピンと来ないのかも知れないし、まだ、18の碧自身が結婚にピンと来ないから焦りがないのだ。 ただ、西島のお嫁さんにはなりたいと思った男だけど。 斉藤が結婚を申込まれたのを見て良かった!って感動したけれど、いつか……自分も!って自然に思えた。ただ、それは今ではない。 遠いけれど、近い未来に。 そんな密かな夢を持った瞬間に衝撃な言葉。 僕じゃ対象にはならないの? 一瞬、そう思った。 西島と付き合っている事を専務は知らないのだから仕方ないし、男だという事で除外されてしまうのだと……凄く悲しくなった。 それだけ、男同士は難しいのだ。 碧は不安で西島の上着をギュッと更に強く握った。 やだ……ちひろさん!嫌です!お見合いとか嫌です。 言葉に出来たらどんなに良いか。 「専務、お断りしましたよね?」 碧の不安を遮るような西島の言葉。 強くてしっかりとした口調。 「今後もその様な話は持って来ないでください。自分には大事な人が居ます。その人とちゃんと将来の事も考えているんですから」 ちひろさん!!! 西島の言葉は碧を興奮させるものだった。 まるで、結婚宣言みたいに聞こえた碧。 ついさっき、斉藤を羨ましいと思ったのを読んだかのような言葉。 俯き気味だった碧は顔を上げて西島を見た。 彼の横顔は真剣で……今を誤魔化すだけの言葉や表情じゃなかった。 ちひろさん!ちひろさん!!! 碧は嬉しくて泣きそうで西島の上着を強く掴む。 「ふふ、そうか……分かった」 専務はニコッと笑う。 「分かればいいんです」 「西島くんってたまに凄いよね、物怖じしないってこういう事なんだよね、ちゃんと意見は言うというか、納得させてしまう……悪かったね、お見合いの話は持って来ないし、他の奴らにも持って来ないように言っておくよ」 「助かります」 真っ直ぐに見つめる西島は微笑んでいるが、次は怒りますからね!みたいな瞳だった。 本当に凄いよなあ……こういう所……。 専務は笑いそうになるのを堪えるの「じゃーね、佐藤くん、諭吉、また、連れて来てね」と横を通り過ぎる時に碧の頭に手を置いてくしゃくしゃと撫でた。 その行動に碧はビックリして専務を見た。 諭吉を撫でるかと思ったのに自分を撫でた。 「ふふ、佐藤くんって猫みたいだね、驚くと目がまん丸になる……大きい瞳がもっと大きくなってるよ」 ニコッと微笑む専務。上司なのに……凄く偉い人なのに、まるで親戚のおじさんみたいな温かさを感じた。 西島は専務が碧の頭を撫でた瞬間、この野郎!!と思ってしまった。 俺の碧に触るな!!って手を叩きたかった。 「じゃーね」 専務は西島を見てニコッと笑う。まるで、反応を楽しむかのように。 その時に自分の相手が碧だと気付かれたと感じた。 でも、その方が良い。 ハッキリと断る理由に碧との関係を言えば良かったかな?と思った。 同性での交際を反対するような会社なら、辞めても構わない。 佐々木が家よりも斉藤を選んだのを見て決心がついた。 何より大事なのは碧なのだ。 碧が何より大事な人。 専務が歩いて行ってしまった後、「マグロくれるってばい!ここは良か奴が揃っとっるな」と諭吉が空気読まない発言。 「お前はウロウロと!!」 西島は諭吉を怒る。 「なんや?ニッシーの臭いがしたとばい」 「ほら、もう!帰るからな」 西島は碧の背中に手を回す。 「ちひろさん……」 西島を呼ぶ碧の瞳はジワっと涙が……。 「あ、碧!!どーした?」 碧の涙に慌てる西島。 「あの、ぼく……」 西島が専務に放った言葉に感動したのと、迷惑かけてしまった事で涙がポロポロと零れてきた。 「大丈夫だよ、碧?専務怒っていなかっただろ?」 「ぼく……」 上手く言葉に出来ない碧。 「碧、こっち、おいで……」 西島はポケットからハンカチを出すと碧の涙を拭く。 「とりあえず帰ろう」 碧の背中を押して歩かせる。 泣いている事に焦るし、可愛い泣き顔を他の誰にも見せたくない。 「碧ちゃん、千尋!」 此上が探しに来たのか進行方向から歩いて来るのが見えた。 「あれ、碧ちゃん泣いてる、どーしたの?」 泣いてる碧に気付く此上。 ちくしょう!!此上に見られた! なんてヤキモチ。さっきは碧の頭を専務に撫でられたし。 「さっき、諭吉が専務に見つかって」 「えっ?怒られたの碧ちゃん!」 焦る此上。 違うのだけれど、泣いているを見たあとにその理由を聞けば誤解はしてしまう。 「怒られてはいない。専務は無類の猫好きだから」 「えっ?そうなの?じゃあ、何で泣いてるの碧ちゃん?」 此上は碧の顔を覗き込む。 「緊張してたみたいでさ」 「そっか……怒られると思ったのかな?ふふ、可愛いね碧ちゃん」 此上は碧の頭を撫でる。 その瞬間、「さわんなよ!」と手を退かす。 「お前は心狭いな?」 「うるさい!さっきも専務に碧の頭を撫でられたんだよ!」 「……ああ、分かるかも、碧ちゃんは撫でたくなるからな」 「分からなくていい!撫でるのは俺だけでいいから」 西島はあからさまなヤキモチ。 「俺達は帰るから神林によろしく」 「分かった……あれ?スーツ返すんじゃなかったのか?」 スーツを着替えていない事に気付く此上。 「貰った」 「……お前も碧ちゃん同様、可愛がられるタイプだもんな」 「俺は可愛くはない!」 そう言って此上の横を通り過ぎる。

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