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好きな人を守る騎士になりたいです。8話

◆◆◆ 風呂場から聞こえた西島の声。 此上と神林は思わず顔を見合わせた。 風呂場から? 着替えるついでに風呂に入るのか?と此上は立ち上がり、寝室へ。 寝室に行くとベッドに無造作に投げられたスーツが。 高いのに……アイツ。 子供だな……身体は、成長しているのに。 ヤレヤレと西島のスーツと碧のスーツをそれぞれ、ハンガーにかける。 まあ、頼ってくれるのかな? なんて考えてると「ふふ、千尋、篤さんに甘えているじゃないですか」と神林が寝室に登場した。 「千尋と碧ちゃんの好物作ってあげないとね、お父さん」 からかうように言う神林。 「じゃあ、トオルがお母さんか?」 此上は神林に近付くと腰に手を回す。 「ちょっとお!!ダメですよ、ここ!千尋の寝室」 「寝室じゃなきゃいいのか?」 此上は顔を近付けてくる。 「そうじゃないでしょー!ほら、夕食作りますよ」 近付く顔を手で押し退ける。 「此上、着替え忘れたあ!バスローブだけでいいから持ってきて!」 西島の声かまた聞こえきた。 「アイツ」 「ほら、お父さんじゃないですか?」 神林はクスクス笑う。 「何時までも手がかかる子だよ」 「さっきまで親離れ寂しそうだったのに?」 「こういうとこは大人になって欲しいもんなんだよ、小学生の頃と変わらない」 「ふふ、お風呂から叫んでたんですね、なんか、慣れてるというかいつもやってたみたいに自然だから千尋」 「高校生になっても叫んでたよ、制服脱ぎっぱなしで……キチンとする時はするんだけど、たまに子供みたいになる」 「千尋なりに甘えているんでしょ?」 「そうかな?」 「そうですよ」 神林は此上に微笑む。すると、「スキあり!!」此上は神林にキスをした。 「もう!!どっちが子供ですか!」 呆れるやら、照れるやら……神林は笑ってしまう。 「さて、着替え持っていってくるよ」 此上は神林から離れると着替えを持って風呂場へ。 その間、神林はキッチンへと戻った。 「神林、喉乾いたばい!」 待ち構えたように諭吉が足元へ。 「諭吉、マグロおかわり欲しいの?もう、ないよ?」 「違うばい、水!」 諭吉は水用の器に片足でちょいちょい触る。 「えっ、あっ、もしかして水?」 「そうばい」 神林にはニャーと聞こえ、それはまるで返事をしているように思えた。 水を容器に入れて床に置く。すると、諭吉が水を飲み出す。 「そっか、やっぱり水かあ……諭吉はおりこうさんだね」 神林はしゃがむと頭を撫でる。 「諭吉、千尋は君に色々話してるんだろ?君が話せたらなあ……千尋が思ってる事を聞けるのになあ……でも、本心は聞くの怖いかも」 「何でや?」 「……俺を本当は嫌ってたらどうしようとか……って、えっ?いま、何でって言った?」 神林は驚いて諭吉を見る。 気のせいだろうか?何でや?と聞こえたのだ。だから、思わず言葉にしてしまった。 「大丈夫ばい!ニッシーはアンタを友達と思うとる」 諭吉は神林の手をぺろぺろ舐めた。 今、諭吉が言った事は神林には聞こえなかったけれど、手を舐める諭吉が自分を慰めてくれているんだと思った。 「本当、動物のヒーリング効果って凄いね……癒されるよ」 諭吉の頭を撫でる。 ◆◆◆◆ 「千尋、着替え置いておくぞ、碧ちゃんの分も」 ドアの向こうから此上の声。 「ありがとう」 素直に返事をする西島。 磨りガラスの向こうに人影が見える。 覗くわけではないが2人仲良く風呂に入っているのだなと微笑ましく思う。 恋人同士なのだが、先程、神林にお父さん扱いされたので、長男と次男が仲良くお風呂に入っている……そんな想像してしまう。 「のぼせる前に上がれよ、夕飯作ってるから」 お父さんみたいな声をかけてしまった。 西島と碧はイヤらしい雰囲気が感じられない。どちらかと言えば……初々しい中学生とかの可愛いカップル。 キスが精一杯な感じ。 いや、もっと幼いかな?小学生?いや、行き過ぎか…… 此上は小学生の頃の西島を思い出していた。 女の子みたいな可愛い顔。 可愛かったな……。いつも、泣いては此上の側にベッタリで。 甘えているんですよ! 神林の言葉……。甘えてくれているのかな? ちゃんと本音を言わないのに。 『俺を見捨てたくせに』 あの時の言葉がまだ、引っかかる。 この意味を知りたいと思うのはダメだろうか?傷をえぐってしまうだろうか? 俺も同じだ……怖くて自分の本音を口に出せない。 こんなんじゃ千尋に信じて貰えないよな。 此上はため息を吐きながら風呂場からキッチンへ移動した。

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