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好きな人を守る騎士になりたいです。 10話
◆◆◆◆
お風呂……長いなあって思うのは野暮な事かな?と神林は考える。
「そろそろ出てくるんじゃないかな?碧ちゃんのぼせやすいから」
此上に心を読まれたのか!!と勢い良く此上の方を振り向く神林。
「えっ?何?……トオル、風呂場気にしてるから」
此上の言葉に、そんなに見ていたのかと顔が熱くなる。
「顔赤いぞ?色々と想像したのかな?エッチだなトオル」
ニヤニヤとからかうように言われるもんだから、更に顔が熱くなる。
「違いますから!!」
「その必死な否定が違うって言ってるんだよ?本当にからかいがいがあるよな」
ニヤニヤからクスクスに笑い方が変わる。
絶対に遊ばれている!!
そんな事を考えていると、足音が2人分聞こえてきた。
湯上りのホカホカの2人。
頬が赤くてお風呂上がりでツヤツヤの碧。小さい子供みたいで可愛い。しかも、西島と手を繋いでいる。これも、お兄ちゃんとお風呂入ってきた!っていう雰囲気で神林はキュン!!とくる。
そして、西島は濡れた髪と前髪が下りて学生時代の彼の姿のまま、ただ、色気が増している。
なんだよもう!この2人……。ハアハアくるよ!
「あー、千尋、お前ちゃんと髪乾かさないできたな!」
此上が西島の頭にタオルをかぶせた。
「ちょ!!やめろ!」
「あ!ちひろさん僕ばかり乾かしてくれたから」
慌てる碧。
確かに碧の髪は乾いているようだ。
「碧ちゃんは座っていいよ!ほら、千尋、お前は来い!」
此上は碧を椅子に座らせ、西島を引きずり洗面台へ。
「ぼ、僕だけ髪乾かしてもらっちゃって、ちひろさんの事……」
心配そうに西島と此上が去った後を見つめる碧。
「篤さんは千尋の世話焼きたいだけだからさせてやってよ」
神林は碧の頭を撫でる。
「いつも乾かして貰ってるの?」
サラサラの髪を撫でながら聞く。
「はい……でも、良く考えたら僕、髪乾かして貰ってると気持ち良くなってウトウトしちゃって……ちひろさんの髪……僕も乾かしたいです」
「千尋デカイから座って貰わないとだね」
「はい……でも、此上さんなら立ってても届きますね、いいなあ!僕ももっと高くなりたいです!此上さんくらいにそしたら、ちひろさんを抱っこ出来るでしょ?」
碧の願望。
だが、神林的には碧には小さく可愛く居て欲しいと思うし、きっと西島もそうだろう。
「ふふ、俺的には碧ちゃんはこのままがいいなあ……」
「で、でも、僕はちひろさんを守れる騎士になりたいんです」
グッと両手で握り拳を作る碧。
その言葉と行動が愛らしいというか碧らしいというか可愛くて神林は和んだ。
「うん、頑張って碧ちゃん」
と頭を撫でた。
◆◆◆◆
一方、西島は……、
「あー、もう!自分でやるから!」
と暴れていた。
「大人しくしてろ!」
「いやいやいや、待てよ!三十路近い野郎が野郎に髪乾かして貰うとか気持ち悪いだろーが!」
「俺はトオルの髪を乾かしてるぞ?」
「神林はいいんだよ、付き合ってんだから!」
「あ、碧ちゃんに乾かして貰いたかったのか?」
「もう、いいから戻れよ」
西島は此上を押し出そうとする。
「着替え持って来いって叫んだクセに……」
その言葉に西島はウッと言葉を飲む。
「ちゃんと髪乾かしてこいよ」
此上は濡れた西島の髪をくしゃくしゃと撫でる。
「……喜んでたよ」
「えっ?」
「電話あったって」
その言葉で何の事か西島に分かった。
父親の事。
「し、仕方ないじゃんか……場所分からないし、入り込めないし」
「そんなに話すの嫌?」
西島は俯いてしまった。
子供みたいな顔をして……ここはまだ成長していない部分。
子供と大人が同居しているような。
「俺……千尋を見捨てたつもりは無かったよ。でも、結果……そうなった」
此上の言葉で俯いていた西島が顔を上げた。
「俺もどうして良いか分からなくなってたんだ……小さい時は抱き締めれば良かったのに成長するとそうもいかないし、考えも変わるしさ成長していく千尋に戸惑ってしまってた部分もある」
西島はじっと此上を見ている。
「ばか」
小さく呟く西島。
「馬鹿?」
「いつも俺の意見聞かなくて無理矢理だったクセに……急にこっちの意見を尊重したりするなよ……勘違いするだろ」
「千尋……」
「俺は何も変わってないよ、どうせ、ガキだと思ってんだろ?まあ、ちょっとは成長したかな?っては思うけど……此上と神林見ても何とも思わなくなったし……」
西島はちょっと笑って。
「まあ、そういう訳だから心配しないでよ」
と此上の肩を叩く。
「あ、あと、多分……専務には碧との関係がバレたっぽいし」
「は?」
「諭吉を俺の猫って説明した後に碧が来て、自分の猫だって説明しちゃってさ……専務って勘いいんだよなあ、佐々木に恋人出来たっていうのも気付いてたし、それが斉藤とは知らないだろうけど」
「お前……」
大丈夫なのか?みたいな目で西島を見る此上。
「大事な人が自分には居るから見合い話は持って来ないで欲しいって言えたしいいかなって」
「大丈夫なのか?」
「ん?あの人、詮索はしない人だし……もし、碧との関係で何かしらあるとしたら、俺は容赦なく会社の方を切る。仕事は他にも沢山あるけど、碧は1人しかいない」
ニコッと微笑む西島。
「お前、英語話せるし、その気になれば何でも出来そうだしな」
フフッと笑う此上。
「此上は……あの人の会社に入ればとかは言わないよね、まあ、あの人も自分の会社に入れとは言わなかったし」
「えっ?言って欲しいのか?」
「違うよ!!!」
思いっ切り否定した後に「……ただ、不思議ではあるけどね」と視線を外しタオルで髪を拭く。
「なに?」
「何で……引き取ったのかな?って」
自分からそういう事を口にした事がなかった西島。
此上は驚いた。
少しづつ、心が追い付いてきているのだろうか?だったら……そろそろ話しても良いんじゃないかと考えた。
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