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好きな人を守れる騎士になりたいです。 11話
◆◆◆◆
「ニッシーまだや、飯ばい」
足元に諭吉。
「ああ、そうだ……食事、待たせちゃうな」
西島の言葉に此上がキョトンと首を傾げている。
諭吉の声はニャーとしか此上には聞こえないのだが、諭吉の鳴き声で食事という言葉が出る。それが不思議でキョトンとなる。
「急にどうした?諭吉の言ってる事、分かるのか?」
そんなわけ、ないけれどきいてしまう。
「えっ?いや、ほら、食事作ってただろ?それに諭吉は食いしん坊だから、この時間鳴くのはご飯欲しいからで……」
西島は笑って誤魔化す。
諭吉の言葉が分かるなんて言えない。
「諭吉、さっき、ご飯あげたよ」
「えっ?そうなのか?」
足元の諭吉を見る。
「美味かったばい」
舌で口の周りを舐める。
「なんか、凄いタイミングで諭吉って鳴くよな?本当、会話してるみたいだ」
此上はしゃがむと諭吉の頭を撫でた。
「猫がいるっていいよな……千尋、猫飼いたがってたから良かったな諭吉が居て」
「まあな、マグロ、マグロうるさいけど可愛いよ、風呂待ってたり、肉球で起こしに来たり」
「へえ、それは可愛いなあ」
此上は諭吉を抱き上げて立ちがある。
「人間の方の飯食いに行こう」
此上は西島の前を歩く。
◆◆◆◆
「あれ?乾かすんじゃなかったの?」
戻って来た西島の髪は完全には乾いていない。
「いいんだよ、これくらい乾いてたら自然乾燥するし」
西島はそう言いながら碧の隣に座る。
「ちひろさん風邪引きますよ?」
碧が心配そうに西島の髪を触りながらに言う。
「もう、暖かいし大丈夫だよ」
ニコッと微笑む。
「あの、僕もちひろさんの髪を乾かしたいです、いつも僕ばっかりだもん」
「それは俺がやりたいから、碧の髪、触るの好きなんだよサラサラして」
西島も碧の髪に触る。
サラサラしている髪、頭を撫でると碧は気持ち良さそうな顔をするのだ。まるで子猫が触られて気持ちいいって目を閉じるように。
この顔を見るのも好きだった。
可愛いなあってずっと撫でていると「えーと、そろそろいいかな?千尋、食事冷める」神林は咳払いと共にそう言う。
あっ、そうだった!2人居たな……と我に変える西島と碧。
◆◆◆◆
此上が作った料理は美味しい。
西島が好きな物を作ったが碧も西島と好きな物が似ているので結果、碧の好きな物にもなる。
「美味しいです」
ニコニコ笑顔の碧。
「本当、碧ちゃんは美味しそうに食べてくれるから作りがいあるよ」
「嫌味か!」
此上の言葉に反応する西島。
「別に……お前が文句言わず食べるのはイコール美味しいってトオルに聞いてるから」
「は?」
「俺の居ないとこでは美味いって言って食べてくれてたし」
ニヤニヤする此上。
西島は余計な事を言いやがって!という目で神林を見る。
「千尋、素直じゃないから」
クスクス笑う神林。
「うるさい!」
文句を返しながらもちゃんと残さず食べる西島を可愛い!!と神林と此上は思うのだった。
「後片付けはするから帰っていいぞ!」
西島は食器を重ねながらに言う。
「何、そんな追い出そうとするんだ?」
「ずっと、かわらかうつもりだろ?冗談じゃない!」
色々と過去のネタバレを碧にされると困るのだ。
碧の前ではカッコイイ恋人でいたいし、部長という肩書きもある。威厳は保ちたい。
「片付けするよ、千尋は碧ちゃんとテレビ見てたらいい、片付け終わったら帰るから」
神林が2人の間に入る。
「えっ?僕がしますよ!!」
碧も慌てて参加。
「碧ちゃん、アイスあるよ、おいで」
此上が手招きする。
アイス!!!
碧の目がキラキラと輝く。
「あ、でも……」
食べたいが西島にアイスの量を決められている。
「いいよ、碧食べても」
碧が躊躇しているのに気付き優しく言う。
「千尋も」
此上は西島と碧の手にアイスを渡す。
「ワシのは?ワシもアイス食べたいばい!」
諭吉が此上の足元で鳴く。
「諭吉はダメー!」
「いやばい!ワシもアイス!!」
ニャーニャー鳴く諭吉。
西島はアイスを碧に渡し、諭吉を抱えソファーへ。
「ニッシーケチかぞ!」
「お前、まじで食いすぎだからな!」
諭吉を押える。
「あはは、ちゃんと諭吉の分もあるよ」
此上はカップアイスを持って西島と諭吉の側に。
「ペット用アイス」
「わざわざ買ったのかよ?」
「諭吉可愛いから」
此上はアイスを容器に入れ、床に置く。
「おお!!流石、此上ばい」
諭吉は西島の腕から飛び降りる。
「甘やかせ過ぎ」
「んー?だって俺、諭吉のファンだから」
「はあ?何それ?」
「諭吉は可愛いよなあ」
此上はそう言って諭吉の頭を撫でる。
「諭吉いると、お前素直だから……」
此上の言葉は本音。
諭吉が居ると、西島が素直になり隠していた言葉を口にしてくれる。猫相手に喧嘩したり……今まで見た事がない彼も見れるし、楽しそうで……そして、幸せそうな。そんな西島を見れるから嬉しいのだ。
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