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好きな人を守れる騎士になりたいです。 12話

◆◆◆ 「また、来てください」 此上と神林が帰るというので碧と西島は玄関まで見送りに来た。 「もちろんだよ碧ちゃん」 此上は碧の頭を撫でる。そして、その手を弾く西島。 「碧の頭撫でていいのは俺だけだ!」 「千尋は心が狭いなあ……あー、分かった。自分もされたいんだな」 此上は西島の頭に手を置く。 「やーめーろおお!!もう、お前来んな!」 その手を弾き怒る西島。 「寂しいクセに」 ニヤニヤと笑う此上。 この野郎!!と文句を言おうとしたら諭吉が「またマグロ持ってこいな」と玄関に走って来た。 「諭吉、マグロか?ふふ、冷蔵庫にまだあるから明日、千尋に貰ったらいいよ」 此上の言葉に諭吉の目がキラリと輝く。 「此上、お前、イイヤツ!!何時でも来て良かばい」 ニャーニャー鳴く諭吉の頭を撫でる此上。 「篤さん、すっかり諭吉の心掴んでますね」 クスクス笑う神林。 「うん、諭吉いい子だから……千尋をよろしくな」 「ちょ、何、猫に頼んでんだよ?」 「もちろん、碧ちゃんにも頼むよ」 此上は立ち上がると碧に「じゃあ、千尋の面倒見てやってね、碧ちゃんがしっかりしてくれてるから助かる」と微笑む。 「こーのーうーえええ!!」 何言ってんだー!と睨む西島。 「じゃーね」 ヒラヒラと手を振り、2人は帰って行った。 「此上は良か奴ばい!アイスとかマグロとか!」 諭吉は興奮している。 「お前直ぐ、懐柔されやがってええ」 西島はヒョイと諭吉を抱き上げる。 「ニッシーはケチくされやんか」 「何だとお?お前が食べ過ぎるからだろ!心配してるんだからな」 「そがん心配はいらん!お腹いっぱいの時なら食わんし、ワシだって美味しかもん食べたか」 「だから、食いすぎなの!」 諭吉と西島の会話を聞きながら碧はクスクス笑う。 「ふふ、兄弟みたいですね」 「碧、違うばい!ワシが年上やけん、師匠と弟子ばい」 碧の言葉に訂正を入れる諭吉。 「はあ?何で俺が弟子なんだよ」 「ニッシーはヘタレやけん、弟子で良か…」 「ちひろさんはヘタレじゃないけど、諭吉は師匠だよね?人生の師匠……あ、先生?諭吉先生」 「おお!そいは良かな!ニッシー、ワシば先生っち呼べ」 「調子に乗ってえええ!」 西島は諭吉の頭をグリグリと撫でる。 ◆◆◆◆ 「そろそろ千尋に話そうかと思って」 帰り道、此上はそう切り出す。 「話すって……お父さんの事?」 「うん、ちゃんと向き合わなきゃダメだし、もっと早くそうしなきゃいけなかったんだけど、違う問題ができたから」 此上が言う違う問題とは、西島が此上を好きになってしまった事。 それにより、更に自分を追い込んでいって、それどころではなかった。 「でも、良く考えてたら、俺が逃げてた……千尋の気持ちからも、千尋と親父さんの問題からも……どうして良いか分からなかったから、逃げた」 「そ、それは……だって、難しい問題じゃないですか?でも、どうして急に?」 「今日、千尋から言い出したんだよ、どうして自分を引き取ったのか?って。話題するのも嫌がってたのに少し成長しているのかな?って思って」 「えっ……?そうなんですか……千尋……やっと向き合う気持ちになってきたのかな?」 「元々はあったと思うんだ、でも、子供だったからどうして良いか分からなかったのだろうし、今の状況を把握するのが精一杯だったし、でも、避けて通れないって気付きだしたのかもな」 「……いつ、言うんですか?」 「それなんだよなあ……タイミングあるよな?」 此上はため息をつく。 「千尋、カウセリングいくの嫌がるからな……その手の専門の人と一緒にした方がいいかも」 「トオルって心理カウンセラーやってないんだっけ?」 「はあ?俺……ですか?」 神林は驚くように此上を見る。 「確かに学生時代授業受けてましたけど」 神林は困惑する。 「全く知らない人の方がいいのかな?それとも、身近な人……」 「見つめないで下さい!前向いて!!」 神林は信号が変わると慌てた。 やれないわけはないけれど、西島に……。 でも、ちゃんと向き合って欲しい。 「先輩に相談してみます」 そう言うのが精一杯だった。

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