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臆病者って弱いんじゃなくて優しいのです。 5話

「お家に帰らなくて大丈夫なのかい?」 「はい……今日、遅いんでちひろさん……あっ!一緒に暮らしている人です」 「覚えているよ、碧くんの大好きな人だろう」 ニコッと微笑まれて碧は照れ笑いをする。 「ちひろさん部長だから色々大変なんです……僕も手伝えたらなあって思うけど、できないから美味しいご飯作って待っていようかなって」 「碧くんは良い子だね」 西島父は碧の頭を撫でる。 「だって、他にできないから……」 「そんなに忙しいのかな?」 「えっと、今……別の課の部長さんが不在で代わりに色々やってるみたいで」 「別の課の部長さん……どうしたの?辞めちゃったとか?」 「あの、結婚するんで……相手のご両親に挨拶にアメリカに」 「へえ!それはめでたいね」 ニコッと微笑んでまるで自分の事のように良い顔を見せるヒロちゃんがまさか大好きな西島の実父だとは思わない碧。 優しい微笑みに言動。 思わず碧は佐々木と斉藤の話をする。 この人ならきっと、理解してくれる。そう思ったから。 ◆◆◆ 「そっか、碧くんのお友達と結婚するのかその部長さんは」 「そうなんです!みんなの前でも言っちゃって……女性スタッフは佐々木部長をカッコイイって騒いでて……僕もカッコイイと思いましたもん」 碧は興奮気味に言う。 「確かにカッコイイね……碧くんが大好きな人とどっちがカッコイイかな?」 相手が千尋だともちろん知っている。なのに、イタズラ心というか……大好きだとは知っているけれど、どう答えるのか知りたいのだ。 「ちひろさんです!」 迷う事なく即答する碧。 「大好きなんだね」 即答されて思わず嬉しくなる。 「はい!大好きです!カッコイイし頭もいいし、優しいし……きっと、ちひろさんのお父さんが優しいからだと思います」 「お父さん……?」 ドキっとする西島父。 「ちひろさんは複雑な家庭で育ったんですけど、それでも、他人に優しくできるのはお父さんとお母さんが優しい人だからだと思います……血筋ってあるじゃないですか……顔とか似ちゃう血縁関係。それは性格も受け継ぐと思うのでちひろさんのお父さんは優しい人だと思うんです」 ニコッと可愛く笑う碧。 ああ……本当に可愛い子だなと思う。 「そうだといいね」 自分だとは言えずにそう言う。 「そうです!」 言い切ってしまう碧の頭を撫でたくなる。撫でてありがとうと言いたい。 「ご飯作らなくて大丈夫なの?」 照れてしまってこれ以上会話ができないのでわざと帰らせるような事を言う。 「あ!!本当だ!」 碧は案の定、慌てる。 「またね、碧くん」 「ヒロちゃんも早くお家帰ってね」 「分かったよ」 手を振ると碧は走ってマンションへ向かった。 「なーにやってるんですか」 碧が帰った後に此上は姿を現す。 「見てたのか」 「本当、素直じゃないですね……千尋の様子見に来られたんでしょ?」 「……元気そうでなにより」 西島父は立ち上がる。 「送りますよ」 「千尋のとこ行ってるんじゃないのか?」 「買い忘れあるんで……」 ニコッと微笑む此上と一緒に西島父は歩いて行く。

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