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臆病者は弱いんじゃなくて優しいのです。 6話

◆◆◆ 「あれ?此上さんは?」 部屋に戻った碧はキッチンに神林だけなので驚く。 「買い忘れあるって買い物に行っちゃったんだよ…」 本当は西島父を送って行ったのだが碧には言えない。 「そうなんですね……僕、着替えたら手伝いますね」 碧は着替えに行く。 諭吉もついてきて「マグロば買こうてきたって神林がな見せてくれたばい!神林と此上は良か奴らばい」とご機嫌だ。 「諭吉にオヤツあげたいって……ちゃんとお利口にしててよね諭吉」 着替えながら諭吉に言う。 「ワシはいつもお利口ばい?」 諭吉は碧の近くにゆくとクンクン匂いを嗅ぐ。 「誰かと会ってきたとや?違う人間の匂いするばい」 「さすが、諭吉……うん!ヒロちゃん。この前じいちゃんとバス旅行行った時に仲良くなった人だよ、公園にも来てる優しい人」 「ああ、だけん匂い嗅いだ感じがしたとな」 「公園のニャンコ達も仲良くなってたよ」 「猫好きにはな悪か奴はおらんけんな」 「うん!そうだね、みんな、優しいもんね」 碧は急いで着替えると諭吉とキッチンへ。 ◆◆◆◆ 帰りたい……。 西島は何故か会議室ではなくて少し高めの高級居酒屋に居た。 会議だと呼ばれていったら、あれよこれよと断る暇もなく連れて来られたのだ。 詐欺だ……と言いたい。 「騙してごめんね、こうでもしないと西島くん来ないから」 専務がニコニコ顔で言う。 「飲みませんよ」 そう断っても勧めてくる。逃げたい……それが本音。 会社の飲み会でさえ出たくないのに。 「いつも上手く言って逃げちゃうからね……飲めないわけじゃないんだろ?」 「そうですけど」 「少しでいいからさ……付き合ってよ」 ニコッと微笑まれてまあ、少しならと西島は承諾した。 ◆◆◆ 「碧くんはいい子だね」 後部座席から此上に話しかける千尋の父親の博巳。 「碧ちゃんいい子ですよ可愛いし」 「……優しい人だって言ってたよ」 「えっ?千尋ですか?」 運転しながら返事を返す此上。 「違うよ……私の事だ。千尋が優しいからきっと優しいって」 ふふっと嬉しそうに笑う。 「嬉しそうですね」 「碧くんと話すのは楽しいよ。ヒロちゃんって呼んでくれるし」 「ヒロちゃんですか」 クスッと笑う此上。 「お前もヒロちゃんって呼んでいいぞ?」 「は?何言ってるんすか!!」 「千尋は千尋って呼んでるし、昔は博巳さんって呼んでただろ?もしくは兄貴」 ニヤリと笑う博巳。 「高校生の頃でしょそれは!!今は大人なんです!様づけしますし、呼び方気をつけてるんです、これでも!」 「気にするな」 「します!!雇われてるんですから」 「つまらん……碧くんは素直だった」 「碧ちゃんと俺は立場違うでしょーもう!本当、千尋にもこういう風に接すればいいんですよ!コソコソと様子みないで」 「気にするから千尋が」 「どちらかが歩みよらないと近付けません!」 「厳しいな」 「当たり前です。2人みていたらもどかしいし、イライラきます」 「お前……雇い主に」 「こういう時だけ!」 プンっと怒る此上。 本当……2人素直になれよなあ。なんて考える。

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