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臆病者は弱いんじゃなくて優しいんです。 8話
◆◆◆
多分、ここかな?と此上は地図を見て店の近くまで来ていた。
もう1度電話入れようかと思っている時に店から男性2人が出てきて路肩に停車しているタクシーに乗り込んだ。
2人といっても、1人は意識がないようで背負われていた。
顔は見えなかったがなんとなく西島に似ている。
此上は車から降りて顔を確認に行く。
後部座席に乗せられた男性の顔が見えた。
やはり西島。
あっ!!と思った時にはタクシーは発進してしまい此上は慌てて車に戻る。
千尋……あいつ、意識無くなるまで飲んだのか?
タクシーの後を追いながら考える。
いや、そんなはずはない……。
あんなに気を付けていたのだから。
まさか……何か盛られた?
誘拐?
いやいや、まさか……。でも、西島は資産家の息子。
此上がずっと一緒に居たのもそういうモノから守る為でもあった。
子供時代はそういう事は無かったが成人したから安心というワケでもないよな?と不安を感じる。
もしくは……西島を無理矢理犯そうとしているか?
彼は見た目が良いからそういう事があってもおかしくはない。
現に過去に佐々木とも危なかった。
まさか……同じ会社の人に狙われているとか……本当、千尋!お前は無防備過ぎるだろ!!
此上はタクシーを見失わないように気を付ける。
そして、道が……西島の住むマンションとは違う事にとっくに気付いていた。
逆方向。
送る気はゼロって事かよ……。
タクシーが進む道路はホテルも沢山ある。
マジかよ……。
◆◆◆◆
「此上さん遅いですねえ」
碧は時計を見て呟く。
彼が出て行ってもう2時間は過ぎていた。
「ちひろさんも遅いし……会議ってそんなにかかるんですか?」
会議に出た事がない碧は神林に聞いてみる。
「いや、そんなにかからないとは思うけどなあ……うん、遅いねえ。何かトラブルとか?」
神林も時計を見て心配そうだ。
「碧ちゃんお風呂先に入っておいで、その内帰ってくると思うから」
「はい」
碧は素直に返事をすると立ち上がり、風呂に入る準備をする。
お風呂……一緒に入りたかったなあ。
なんて思う。
疲れた西島の背中を流してあげたい。なんて思う。
「碧、ワシも」
諭吉もついてきた。
「うん、一緒入ろ」
諭吉を抱き上げると風呂場へ行く。
碧が風呂へ行っている間にと神林は此上に電話を入れてみる。
確かに戻ってくるのが遅い。
西島も……会議ってそんなにかからないと思うけどなあ……。と少し心配になっていた。
◆◆◆
西島はタクシーの中、熟睡し専務の膝枕されているとは思いもよらないだろう。
専務の手は西島の頭を撫でている。
「運転手さん、ホテルの裏側につけてくれる?」
「いいですよ」
専務は運転手にホテルの裏側へと行くように指示をする。
表から熟睡した男性を連れては目立って仕方がないからだった。
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