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臆病者は弱いんじゃなくて優しいのです。 11話
◆◆◆◆
何コール目かで此上が出たので神林はホッとする。
「篤さん……今どこですか?千尋も帰って来ないから碧ちゃんが心配して会社まで迎えに行きたいって」
「……碧ちゃん、心配しちゃってるのか……大丈夫だよ千尋も一緒に居るから連れて帰る」
「千尋、一緒なんですか?良かった……会議にしては遅いから」
此上の答えにもホッとする神林。……でも、どうして一緒なのだろう?途中で拾ったのかな?
きっと、此上も心配していたのだろうな、なんせ過保護だから。と思った。
「あと少しで戻るから……で、お願いがある。下についた頃に電話するから降りて来てくれないか?」
「えっ?」
なんでだろう?とキョトンとなる。
「千尋、飲み会に付き合わされて爆睡してるんだよ、荷物とか持ってくれたら嬉しい」
「えっ?あれ?会議じゃ?」
「戻ってから理由は話すから……碧ちゃんにちゃんと連れて帰るから先に寝ててって伝えて」
「わ、分かりました」
千尋……なんで飲み会?あいつ、嫌いなのに……。
不思議だった。
◆◆◆
「碧ちゃんって佐藤くん?」
電話を切った此上に聞く専務。
「そうです」
「そっか、やっぱり付き合っている子って佐藤くんの事か」
「嫌ですか?男と付き合うの?」
「……いや、別に。心配だったから……千尋はちゃんと誰かを愛せるのかな?って愛情に対して裏切られたとか家族は要らないとか思ってしまうんじゃないかな?って心配しててね。兄夫婦もそれを一番心配していたから」
「確かに俺も信用得るまでに時間かかりましたし、情緒不安定で心配でしたから」
「親が変わるなんて体験したくないからね。離婚だって相当堪えたからな僕自身……別れるくらいなら結婚しなければ良いのにって思ったもんだよ、まあ、大人になると色んな事情出てくるし、愛情って永遠じゃないからね……男女の関係では……子供時代に男女の愛に永遠は無いと学んだよ」
ニコッと微笑んでみせる。
「良かった……あなたが碧ちゃんと千尋を反対するなら全力で二度と近付かせなくしたから」
此上もニコッと微笑む。
「あはは、その笑顔怖いよ……君みたいな人がずっとついててくれていたんだね。安心した……大人を信用出来なくなった彼はどうやって毎日を過ごしているのだろう?って考えていたから」
「果たして俺で良かったのか心配ですけどね」
「全力で守ってるじゃないか?さっきは凄い迫力だったよ?悪い虫をずっと退治してくれている感じが凄かった」
クスクス笑う。
「まあ、守るのが仕事ですので……千尋可愛いし」
「安心したよ……これからもよろしく」
専務は此上に握手を求める。
「僕の事は内緒にしてね」
「分かりました」
そうやって2人は会話をして別れた。
◆◆◆◆
「碧ちゃん、千尋、遅くなるみたいだよ……なんか、会議の後に飲み会あったみたいで」
「えっ!!そうなんですか?」
「だから待たなくていいって」
「……でも」
碧はそれでも待っていたいという顔をしていて、可愛くて「じゃあ、ソファーで待っていようか?」と言ってしまった。
ソファーなら眠くなれば寝てもいいし、寝てくれたら運べる。
「はい」
碧は素直に返事をしてソファーへ。
諭吉もポンとソファーへ飛び乗った。
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