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臆病者は弱いんじゃなくて優しいのです。12話
◆◆◆◆
「これからも千尋をよろしく……って僕が言うのも変かな?血は繋がっていないから」
「それを言うなら俺もですよ?」
専務の言葉に微笑む此上。
「そうだね……」
「千尋の両親にコイツちゃんとやってるって伝えてください」
「うん、そうするよ……もう、飲みには連れ出さないから安心して」
「……でも、夕飯とかなら千尋付き合うと思いますよ?」
「そう?だったら次からちゃんと騙さずに誘うよ」
専務はニコッと微笑む。
そして、西島を連れて車に乗り込む。
寝ているからお姫様抱っこしても怒らない。起きていたらきっと暴言吐いて暴れるだろう。
後部座席に寝かせると此上も運転席に乗り込む。
「送っていきますよ?」
「いや、大丈夫だよ?僕はお酒強いし……早く連れて帰ってあげて……お家で待ってる佐藤くんが心配してるだろうから。タクシー呼ぶし」
専務は遠慮をするとタクシー会社へと電話を入れた。
先に車を発進させるわけにもいかないので、タクシーが来るまで待機。
彼がタクシーに乗り込むのを確認すると此上も車を走らせる。
ミラー越しに後ろを見る。
熟睡中の西島は起きない。
これは本当にお持ち帰りされるな……。
本気で専務が西島を犯ってしまうのかと焦ったが……まさかの義父の弟だとは思わなかった。
そうだよな……手放した方だって傷ついている。
嫌いで相手に渡したわけではない。
愛しているから。
どちらも辛い。ただ、本当に辛いのは西島が両方の親を憎んであるという事。
憎む必要なんてなかったのに。
◆◆◆◆
「ニャー」
神林の足元に諭吉が擦り寄ってきた。
「なに?お腹空いた?それとも水かな?」
キッチンで洗い物をしていた神林は諭吉を撫でようとしゃがむ。
でも、するりと逃げられソファーの方を見る仕草を見せる。
神林は立ち上がりソファーへ。
ソファーで碧が眠り込んでいた。
「碧ちゃん寝ちゃったのか、諭吉教えてくれてありがとう」
足元の諭吉にお礼を言うと。
「良かばい」
と聞こえた。
ん?と諭吉をじっーと見る。
「喋った?」
「ニャー」
普通の猫の鳴き声に神林は空耳かと思い。寝ている碧を抱き上げる。
寝室へと連れていき、ベッドに寝かせた。
諭吉もポンと飛び乗り碧の足元で丸くなる。
良かばい……あれは空耳かなあ?
そう考えながらキッチンへまた戻った。
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