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臆病者は弱いんじゃなくて優しいのです。13話
◆◆◆◆
神林のスマホにLINEが此上から届く。
『駐車場に着いた』
そんな内容。
『帰ってきたの?』と返事をすると直ぐに既読になる。
『うん、千尋が起きない』
やっぱり……起きないのかあ……
◆◆◆
西島を降ろそうとしていると「んー」と唸り声を上げて目を開けた。
「大丈夫か?」
「このうえ……なんれいんの?」
少し呂律が回らない西島の言葉。
「そりゃ、迎えに行ったからだよ、お前が俺を呼んだんだろーが」
「そーだっけ?」
「LINEで店の地図送ってきたクセに……ほら、起きろ」
此上は西島を起こす。
「んー、眠い」
西島は起き上がらせたのにその場に横になる。
「本当、お前、絶対に外では飲むなよ!たまたま、あの人だったから良かったけど……絶対に犯られる!」
たまたま……というより原因はあの人だったな。と思う此上。
「んー、喉乾いたあ」
「だから起きろって」
「此上抱っこお」
西島は此上にぎゅっと抱き着いてきた。
本当……こいつ、あざとい。計算か?こんな事を他の野郎とかにやったら誘われていると思ってマジで犯られる!!
「頼むから外で碧ちゃん以外にはするなよ?」
「此上にもダメなの?」
西島は此上の顔をじっーと見つめる。
本当こいつあざといいいい!!こんちくしょう!!
子供の頃から可愛くて大人の今は可愛いというより色気がある。
「ダメじゃないけど」
「ならいいや」
西島はまたぎゅーと抱き着く。
「お前、本当、酔うと素直になるな……っていうか甘えん坊の子供」
此上は西島の頭を撫でる。
「もっと撫でて」
「はいはい」
グリグリと撫でる。
「此上ってぇお父さんみたい」
「この野郎!せめてお兄ちゃんと言え」
「だって、俺に甘いじゃんか」
確かに西島には甘い。なんせ、迎えに行くくらいだから。
「そうだけど、お兄ちゃんと呼べ」
「やだ!」
「じゃあ、歩いて帰れ」
「それもやだ!」
「……篤パパ、何イチャついてんですか?駐車場で」
神林の声がした。
「トオル……何?やきもち?」
此上はよいしょと西島を抱き上げる。
「千尋、ダウンですか?」
「そう!」
此上にぎゅーとしがみつく西島を見て、頭を撫でる。
酔っていると素直で可愛い。素直に誰にでも甘えてくれる。
「かんばやしい」
西島は頭を撫でる神林を見る。
「碧と諭吉は?」
「もう、寝っちゃったよ……お前も着替えて寝なきゃな!」
頭をまたグリグリ撫でる。
こういう時でないと撫でれない。これはこれで楽しい。
神林が西島の荷物を持ち、部屋へと戻った。
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