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にゃんこ♪第4話

「はい、仕事に戻れ」 拭き終わると西島はまた怖い上司の顔に戻る。 「あ、あの、ありがとうございました」 碧は深々と頭を下げて、 「お、お先に失礼させていただきます」 と挨拶をして去って行った。 「あ~あ、碧ちゃん何かビビってたぞ!可愛い子をびびらせて楽しいか、ん?」 佐々木はからかうように西島の眉間を指さす。 「向こうが勝手にビビっているだけだ」 西島は上着を整えると、クレンジングと洗顔を佐々木に押しつけ、トイレを出た。 確かに碧は西島にビビっている。 オドオドして、  そんな姿見ていると子猫をイジメているような錯覚に陥り、胸が痛む。  それは佐々木にはバレたくない。  絶対に、 からかわれるから!! そんな事を考えていたら自然と歩く足に力が入りカツカツと足音が廊下に響いた。 ***** 「え~碧ちゃんメイク落としたの?可愛かったのに」 洗顔して戻って来た碧に女子社員はブーイング。 「何だよ碧、またメイクされたのか?」 碧に声を掛けてきたのは一緒に入社した斉藤。  斉藤と佐藤って発音似てるよな?って斉藤の方から話し掛けて来た。  都会に出てきたばかりの碧には知り合いなんているはずもなく、特に人見知りだから、声を掛けてくれるのは嬉しかった。 「碧で遊ぶな」 なんて庇ってくれる。 「で、俺とエッチな遊びとかしよーぜ」 と女子社員の中で一番可愛い子の肩に手を回す。 「ばーか」 斉藤は手を思いっきりつねられる。 チャラ男っぽい感じだけど、明るく社交的な彼は結構人気があった。  エッチな話も斉藤なら仕方ないと変な意味ではなく、受け入れられていて、碧は密かに羨ましく思っていた。 碧は女子社員に解放され、席に座る。 つい、西島の机がある方向を見てしまう。 まだ会議中。  トイレで会ったのは休憩中だったのだろう。  あんなに近くで西島を見た事が無かったからドキドキした碧。 部長は俳優さんみたいにカッコイい。 入社式の時に挨拶をした西島を見た新入女子社員達はざわついていた。 田舎育ちの碧も、都会の男性はこんなにカッコイいのかと感動したのだ。 身長も高い。 田舎には西島と同じ年の男性もいるけど、  月とスッポン。  そう思った。 そんな西島にサンドイッチを貰ったあげくに、メイクまで落としてもらったなんて夢みたいだ。 緊張して上手く話せない。 怖いとかじゃなく、 西島が格好良すぎて緊張するのだ。 結果、あんなビクビクした態度になってしまった。 今日は良い日だ。 スマホの諭吉の写メを見ながら、  ーーゆきっつあん、今日は良い日だったよーー なんて心で呟く。  定時になっても西島は戻って来なくて、  ちょっと寂しく思いながら会社を出た碧。 「あおいーっ」 後ろから斉藤の声がして振り向く。 女子社員数人も一緒に居た。 「なあ、飲みに行かん?」 「えっと、僕未成年だし」 碧はまだ二十歳になっていない。  だから歓迎会とか楽しめなかった。 たまに誘われるが、碧はその台詞で断ってきた。 「ご飯食べるだけだよ。碧ちゃん、行こうよ」 女子社員にも誘われるが、財布の事情もある。 「僕、お金ないから」 「いいよ~奢るよ?」 女子に男が奢って貰うなんて以ての外! 「いえ、そんなダメですよ!皆で楽しんで来て下さい」 碧は深々と頭を下げて、逃げるように走って行った。 あおい。って斉藤の声が聞こえて振り返り、もう一度頭を下げて、走って行った。 「や~ん碧ちゃん可愛い!」 後ろ姿を見送りながら女子達は騒ぐ。 「碧ちゃんって童貞かな?」 1人の女子が言葉を放ったら、  「碧ちゃんはイケメンに食べられてるのが似合うよねえ」 と騒ぎだす。  「あ~わかる!碧ちゃんネコっぽいもんねえ」 「なに?君ら腐女子?」 会話からすると、斉藤もそう判断する。  「もちろん」 女子達の声は揃う。  「あっそ、」 斉藤は呆れたように先を歩き出す。 女子達はまだ腐的な話題を話ながら、ついて来る。 全く、腐女子め!
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