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にゃんこ♪第5話

***** 公園の隅っこ、碧はガサガサとビニール袋の音をわざとさせる。 にゃ~ん… 野良猫が数匹走ってきた。 碧は毎晩、公園に寄り道しては猫達と戯れている。 アパートが近いから引っ越して来た日に公園を通ったら、 猫達が足下にまとわりついてきたのだ。 実家に置いてきた諭吉に会えないのが凄く寂しかった碧の心の支えになったのはいうまでもない。 それから毎晩、餌を持って公園へ。 野良達は痩せた子は1匹もおらず、 きっと他にも餌を与えている人が居るんだろう。 「ごめんね、今日は少ないんだよ。お金無くて」 碧は安いドライフードを缶に入れて与えた。 猫達には少ないとか、お金ないとか関係ないみたいに食べ始める。 碧はキョロキョロと周りを見て、もう1匹探す。 公園にはもう1匹猫が居る。 まだ子供の猫。 出会った時は小さくて、ほっといたら死んじゃうんじゃないかと心配した。 アパートはペット禁止だけど、実家に…なんて思いながら何度も確保しようとして失敗してきた。 死んじゃうんじゃないかと思った子猫は、少しずつ成長して碧を安心させた。 でも、一度も近くには来てくれない。 遠く離れた場所から見ているだけ。  あの子はご飯食べれてるよね?  じゃなきゃとっくに死んでる。 猫は遠巻きに碧を見ていて、 あの子を一度くらい撫でたいなあって思う。 カツカツカツ、  足音が響き、碧は咄嗟に隠れた。  つい、条件反射。 足音が聞いた事があるような感じがしたのだ。  何時もは、この時間、人は通らないのに。 碧は隠れながら足音の主を見た。 ーー!! えっ、嘘?  碧は目を疑った。 足音の主は、 西島部長。  え?ええっ?  部長って、この辺りに住んでるの? ドキドキしながら通り過ぎるのを待った。  が、  足音は公園の中へ。 そして、遠巻きに見ていた子猫が、にゃーん。  と鳴いた。  初めて聞いたあの子の声。  しかもかなり至近距離まで近付いている。 でも、あと一歩手前で子猫は止まった。  西島は袋から猫用缶詰めを出して猫に与えている。 そうか、あの子が成長出来ているのは部長が。 西島は餌を置くと子猫から離れた。 距離が少し離れた瞬間に子猫は餌を食べている。 あの子が食べてる姿、初めて見た。 モソモソとゆっくり食べる子猫。 凄く可愛い。 そして、食べている子猫を見ている西島の顔は碧が見た事もない優しい笑顔。  あんな顔するんだ。 いいなあ。  西島部長…。 子猫が食べ終わるのをずっと見ていた西島。  そんな西島と子猫を見ている碧。 子猫は食べ終わると、ちらりと西島を見て、茂みへと消えて行った。 何か、お礼言った感じだったなあ、あの子。  なんて、碧は思った。 「また明日なにゃんこ。」 西島は茂みに消えた猫にそう言って空の缶を片付け、彼はまたカツカツと足音をさせながら帰って行く。  部長の家ってどこだろう。  後ろ姿を見ていると、碧のアパートを通り過ぎて更に歩いていく。  確か、この先に凄く高そうなマンションがあった。  まさか、そこ?  気付くと碧は後を付けていた。  案の定、部長は高いマンションへと入って行った。  知らなかった。  こんな近くに住んでいたなんて。 通勤とか、会わなかったな。 会わないのは碧が早めに会社へ行くからだ。  何かあったら?とか有りもしない心配をして2本早い電車に乗っていた。 歩いて帰って来たんだから電車だよね?  あ、明日……時間、遅らせようかな?なんて碧は考えながら自分のアパートに戻る。 シャワーを浴びて、カップラーメンを食べながら部屋に貼っている諭吉の写真に、  「ゆきっつあん、あの子猫ね名前、にゃんこだったよ。部長が呼んでたもん…良かった、にゃんこもご飯くれる人が居て」 なんて独り言。  今日はやっぱり、良い日だったと碧はちょっとどころか、クッション抱いて転げ回るくらいにテンションが上がっていた。

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