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諭吉2話

「はいはい、皆さん何の話題かな?」 「おはようございます~、碧ちゃんが諭吉って猫飼ってるって話題なんですよ」 女子社員2が佐々木に答える。 ……上司に話す時は碧ちゃんじゃなく名字だろ!と西島は心で突っ込むが、佐々木は全く気にしないようで、 「へ~どんな猫?」 と写メを見せて貰っている。 佐々木は社交的で年齢問わず話ているのを見かける。 なので、色々な情報を佐々木は持っている。 「可愛い猫だね。碧ちゃんも猫っぽいけど」 「あー、分かりますそれ!ですよねーっ」 女子社員達は佐々木の言葉に共感し、はしゃいでいる。 あー、もう余計にウルサくなったし! 仕事開始時間にはまだ少しある。 西島はコーヒーでも飲もうと席を外した。 カツカツカツ、歩く足につい、力が入る。 碧の横を通り過ぎ、廊下に出た。 通り過ぎる西島を碧はつい、目で追う。 もしかして、うるさかったかな? なんて心配しながら。 ***** 「佐藤」 西島に名前を呼ばれ碧はドキッと心臓が脈うつ。 「は、はい」 慌てて立ち上がり西島の席まで急ぐ。 また、怒られるのか? なんて周りの雰囲気をちょっと感じた。 「この前の書類直したのか?」 「あっ、はい。」 碧は慌てて自分の席に戻り引き出しを思いっきり開けた。 まあ、そんな勢い良く開ければ引き出し全部が抜けてしまうわけで、 「ああっ、」 碧の情けない声と共に引き出しが床に落ち派手な音が西島の元まで届く。 もちろん中身も散らばってしまった。 「あ~あ、碧、慌てるから」 斉藤が素早く碧の側に来て散らばった中身を拾う。 「碧ちゃん大丈夫?」 「佐藤は怒られない時は何かやらかすからな」 女子社員や周りのスタッフも心配しながら拾ってくれた。 「碧、書類ってコレ?」 斉藤は散らばる中身から書類を拾い上げ碧に渡す。 「う、うん、それ」 碧は書類を手に急いで西島の元に。 「あ、あの、部長、書類の提出遅くなって申し訳ありませんっ」 と勢い良く頭を下げ、 ゴツッ、 西島の机で思いっきり額をぶつけた。 「碧!」 「碧ちゃん」 「佐藤」 スタッフがそれぞれ碧の名を驚いたように呼び、 「大丈夫?」 と声が揃った。 「あ、…すみません」 碧は顔を上げ、西島を恐る恐るみた。 はあ~っ、 大きなため息をつかれ、碧は穴があったら入りたい。そんな気持ちになった。 ***** ううっ、僕ってなんで…… 昼休み、碧は自分で作ったお握りを手に食べる場所を探す。 「あーおいちゃん」 弾むような呼ばれ方で振り向くと佐々木が居た。 「お、お疲れ様です」 「はい。お疲れ様。碧ちゃん、お昼食べる場所探してんの?」 「はい」 「手にしてるのはお弁当?もしかして碧ちゃんの手作り?」 「はい」 「そっかそっか、自分で作って偉いね。んじゃ、俺が良い場所教えてあげるからおいで」 ニコニコと微笑む佐々木に碧は返事をすると、素直に従う。 佐々木は上司だけど、上司独特の威圧感がなく、親しみやすい。 人見知りな碧は、佐々木みたいなタイプにも助けられる。 「はい。着きましたよ碧ちゃん」 連れて来られたのは医務室。 あれ? って思ってたら、 「佐藤」 西島も居て、碧は驚いて目がまん丸になる。 「碧ちゃん、猫みたいな 驚き方するね。おめめまん丸」 佐々木は碧を椅子に座らせる。 「はい、じゃあ神林ちゃん治療してやっちゃって!」 佐々木が両手をヒラヒラさせ、白衣着た男性を紹介した。 「顔上げてね、碧ちゃんだっけ?」 ニコッと微笑む男性は佐々木達と同世代っぽい。 医務室があるのは知ってはいたが入社してから、ここに来るのは初めてな碧は緊張しながら顔を上げる。 顔を上げて、 あれ?何で僕は先生に診て貰ってんの? と不思議に思ってしまった。 しかも、西島も居る。 余計に不思議で、不思議過ぎて緊張してしまう。 「佐藤、お前、医務室に行けと言っただろ」 西島の言葉にアッと、思い出す、額を打った後のこと。 西島に、 「医務室で診てもらいなさい」 と言われた事を。