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臆病者は弱いんじゃなくて優しいのです。 20話
「此上も驚かんな……ワシが喋っても」
「充分、驚いているけど?今も、もしかしてストレスとかでおかしくなってんのかな?とか思うから」
「何やストレスって?此上も悩むとな」
「悩むよ、俺だって、そんな能天気に見えるのか?諭吉には」
「能天気やのおて、対処法ば知っとお感じがするけんさ、そうじゃなきゃニッシーば支えれんやろろ?」
「諭吉!!お前凄いな!対処法とか難しい言葉知ってるんだな」
此上は偉い偉いと諭吉を撫でる。
「……まあ、解決法はない訳では無いんだけどな」
「なんや、まどろっこしいやんか!もったいぶるな」
「あはは、もったいぶっているわけじゃないよ……どうして良いか悩むんだ……どうやったら上手く伝えられるか」
「何や難しゅう考えんでズバッと言えさ……どうせニッシーの事やろ?」
「……諭吉、するどい」
「他に無かろーもん」
「そうだな」
「何ば悩みよっとや?言うてみんしゃい」
「……千尋の親の事。ちゃんと説明しなきゃって思ってるんだけど、言葉をちゃんと上手く伝えられるか」
「ああ、ニッシーは聞かんもんな、まあ、怖くて逃げてるだけやろーけどな」
「うん……聞かないんだよ!アイツ、マジで!」
「まあ、1番良かとはニッシーが自分から聞きたいと思う事やろうな。そうやないと否定ばして終わる、嘘つきまで言うやろあなあ、性格上」
「あはは、凄いなあ諭吉……千尋を知ってる」
此上はまたわしゃわしゃと諭吉を撫でる。
「そりゃ、どげん人間か見とったら分かる……ニッシーは本当は怖がりで甘えん坊でそのくせ、甘え下手。言葉はいつも裏返しな事ば言う天邪鬼ばい」
「うお!すげえ!当たり!!」
「此上は忠実ばってんが臆病者」
諭吉の言葉はぐさりと突き刺さる。
そうだ……臆病者だ。
猫にまで見抜かれている。
「諭吉は凄いなあ」
「そうか?」
「千尋が何でも話す理由が分かった……諭吉はズバッと指摘してくる……人なら躊躇して言えなかったり変な優しさで言わなかったり」
「そりゃ、ワシは猫やけんな人とは違うばい」
「人生の先輩……ん?猫生?」
「生き物の先輩や?」
「あはは、そうだ!」
「此上……臆病者って優しいってワシは思うぞ」
「えっ?」
「マグロくれたら理由教えてやるばい」
「この野郎」
此上は笑ってしまった。
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