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臆病者は弱いのではなくて優しいのです 21話

◆◆◆◆ 確かに自分は臆病者だと思う。 幼い西島を守りたいと誓ったくせに、肝心な時に突き放した。 愛情を突きつけられて、戸惑った。 彼を恋愛対象として見る事なんて出来ないし、親みたいな愛情だったから、どう接して良いか分からなかった。 「此上、眉間にシワよっとーばい!ニッシーもよう眉間にシワ寄せて何か考えよる、よー似とーなあ」 マグロを食べ終わった諭吉は顔を上げた。 「お前、食うの早すぎな」 笑って諭吉の頭を撫でる。 「美味しかもんは早よう食べんば落ち着かん」 「あはは、そうだな」 「ニッシーは此上によう似とる、育ての親やけんかな」 「親言うな!せめてお兄さんだろ!」 「ばってん、ニッシーは此上に甘えよるやん、ワシから見たらな、親子ばい」 「くそう!兄弟には見えないのかよ」 「見かけやなかぞ!関係ってやつばい、ワシら猫でも血は繋がっとらんでも親子みたいな関係あるとばい、公園の猫がそうばい」 「公園の猫……千尋と碧ちゃんが餌やっている子達か?」 「まだ、子供の猫がおるやろ?あの子を他の猫が面倒ばみよる!縄張りがあるけんな、他のオス猫がくると守ってやったりな」 「ああ、子猫いるな……そっか……なんか可愛いな」 「此上とニッシーのごたるな」 「……諭吉、ごたるって何?猫語?」 此上は真顔で質問する。 「ごたるは熊本弁ぞ!~みたいな。とか意味ばい」 「えっ?諭吉って熊本?」 「肥後ぞ!」 「肥後かよ」 此上は笑う。 「此上は親の代わりでニッシーに色々と世話ばしてきたとばってんな、肝心な時に臆病になるとな……まあ、優しさが先にくるけんな仕方なかな」 「臆病者は優しいって言ってたよな」 「臆病は注意深いだけばい……焦ったら命とりやろ?ちゃんと見極めんとワシら動物は死んでしまう……此上もな、色々ニッシーの事ば考えとるとやろ?傷つかんように……大事に。そいは臆病とは言わん、優しさばい」 諭吉は撫でていた此上の手のひらに自分の顔をすり寄せた。 「あはは……ありがとう」 優しいのかな?俺。 諭吉の言葉に少し救われた気がした。

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