10 / 500

諭吉 5話

「碧、帰るんなら電話しろっち言うてるやろ?兄ちゃん迎えに行っちゃるとに」 碧の兄も顔を出す。 「でも、兄ちゃん忙しいから」 碧は遠慮がちに言う。 「可愛い弟やん、遠慮はいらん」 碧には兄が3人と姉が1人居る。 碧は末っ子だから家族から可愛がられて育った。 長男、肇(はじめ)次男、郁(いく)三男、理(おさむ)長女、夏(なつ) 碧が帰る度に兄たちは碧を甘やかそうとする。 それが、いけない!と碧は思っているのだけど、甘えて育ったから中々、自立出来ない。 「皆は?」 「もう直ぐ昼になるから戻ってくるよ。碧もご飯食べるやろ?」 母親に言われ碧は頷く。 「荷物は兄ちゃんが持っちゃるけん、中に入り」 肇は荷物を持つと碧の背中を押す。 「会社でイジメられとらんや?」 「大丈夫だよ」 心配する兄にニコリと笑う碧。 「もし、イジメられたら兄ちゃんに言えよ」 「ありがとう。…でも、僕もう子供じゃないよ」 そう主張する碧だが、土日には猫に会いに帰ってきて、子供じゃないと頬をプクッと膨らます仕草や行動は誰がどう見ても子供である。 昼には祖父や祖母、父親を含め、兄2人も戻って来た。 「碧~父ちゃんのスマホ見せちゃるけん」 碧の姿を見ると父親が自慢げにスマホを見せびらかす。 「碧~会社どうや?友達は?」 と次男の郁。 「友達より彼女やろ?碧は可愛いからモテるやろ?」 と、三男の理、 「碧、米と野菜ば後で送っちゃるけん」 と、祖父。 「婆ちゃんね、碧ちゃんにって諭吉の抱き枕作ったとよ」 と祖母。 家族の会話の中で一番反応したのは祖母が作った諭吉の抱き枕で、 「婆ちゃん、見せて!」 と食いついた。 「あー、婆ちゃんずるかぞ、」 家族の非難に祖母はニヤリと笑い。 「見せちゃるけんおいで」 と碧を連れて行った。 部屋につくと直ぐに、 「ほれ、諭吉抱き枕」 と碧に抱き枕を渡してくれた。 抱き枕はフワフワで諭吉にソックリ! 「婆ちゃん凄か~」 諭吉は長毛種の雑種猫で黒のトラにお腹と足先と鼻の頭が白。 そして額にはMのような模様。 抱き枕にもちゃんと額にMマークが刺繍されている。 祖母は器用で、碧の服や、ベッドカバーやクッション、何でもござれ!と作るのだ。 「婆ちゃんありがとう」 可愛く笑う碧。 祖母は満足そうな顔で、 「今度はお揃いでベッドカバー作っちゃるけんな」 と言う。 「うん!ほら、諭吉見てみて」 足元に居る諭吉に枕を見せる碧。 「にゃ~ん」 枕を見て鳴く諭吉。 可愛いと言ったように聞こえた碧は「諭吉も可愛いって」と祖母に微笑む。 「会社はどうね?友達出来たか?」 帰る度に聞かれる。 「だいぶ、慣れたよ。」 「友達は?」 「斉藤くんって人が良く声掛けてくれる」 「そうね、今度、斉藤くんも連れて来たら良かたい」 「来て…くれるかな?斉藤くんは都会育ちやもん。」 「都会育ちやけん、良いったい」 祖母にそう言われ、今度、斉藤くんに言ってみようかな?と思う。 「婆ちゃん、碧を早う返してさ」 中々戻らない碧を迎えに肇が来た。 「せからしかねー、こんのブラコンが!」 祖母は肇を罵倒する。 「何ね、弟可愛がって何が悪いとや」 肇も言い返す。 「弟は碧だけじゃなかやろうが」 「婆ちゃんだって孫は碧だけじゃなかやろうが」 二人の喧嘩は一種の行事だ。 碧も慣れているのでニコニコしながら二人を見ている。 「碧ちゃん」 小声で名前を呼ばれ振り向くと、碧を大人にしたような顔をした女性が手招きをする。 「夏姉ちゃん」 碧は嬉しそうに姉の元へ。 碧が来たと母親から連絡が入り慌ててきた長女の夏。 「ケーキあるよ」 箱を見せる夏に碧は、 「ありがとう」 とニッコリ笑う。 「ねえ、碧ちゃん……西島部長とはちゃんと話せるようになった?」 夏の言葉に碧は、 「あのね、あのね、聞いて!」 と西島の話を始める。 夏とは年が10歳離れているが兄弟では一番仲良くて、西島の話もしているのだ。 男に憧れてるなんて夏以外には話せない。
いいね
笑った
萌えた
切ない
エロい
尊い

ともだちとシェアしよう!