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恋心2
***
午前中は珍しく西島に怒られも注意もされなかった碧。
お昼になり、お弁当を持って医務室へと勇気を出して来てみた。
でも、ドアをノックする勇気がなく、どうしようかとドアの前でウロウロ。
「何してんだ?」
後ろから西島の声。
ビクっと身体が反応した。
「あ、あの、僕、お昼」
急に西島に話掛けられ碧は顔も上げれずにテンパってしまう。
「あれー、碧ちゃん」
佐々木もやって来たのでホッとした。
「今日もお握り?」
「は、はい」
「そっか、そっか、神ちゃんにお茶出して貰おうね」
佐々木に背中を押され、中へ入る事が出来た。
西島もその後ろから医務室へと入る。
碧がドアの前でウロウロしているのを見掛け、西島はつい、笑ってしまった。
動物園でアライグマとかが餌欲しくて飼育員が出てくるドアの前でウロウロしている感じに見えて笑った。
でも、碧は話掛けるとビクビクとして、佐々木に声掛けられた時にホッとした顔をしたのを見て、地味にショックだった。
碧は隅っこに座り、自分が作った弁当を広げている。
神林にも碧は普通だ。
ビクビクしない。
お茶を受け取りながら雑談をしている。
何か面白くない西島。
「ちょい仮眠するから」
西島はベッドへと乗り、カーテンを閉めた。
碧はちょっとションボリとなる。
西島と頑張って話そうと決意してここに来たのに上手くいかない。
お握りをモソモソと食べながらカーテンを見る。
「碧ちゃん、西島は気にしなくていいんだよ、どうせ明け方までYouTubeで猫動画みてたから寝不足だろ」
猫動画!
碧はピクンと反応。
「部長猫好き……」
うん。猫好きは知ってる。
「彼女とか居ないからさ、良い年した野郎が猫動画とかさ」
恋人いない!
そこにもピクンと反応する碧。
「あの、あの、部長は本当に恋人居ないんですか?」
碧は小声で聞いてみる。
佐々木と神林は同時に頷く。
本当に?
碧は心の中でやった!と叫んだ。
「碧ちゃん、気になるのかな?」
佐々木にニヤニヤされ、違うと首を振り、
振り過ぎて目が回り、神林に支えられてしまうくらいテンションは上がっていたのだった。
早く、夏に教えたい!そんな衝動にかられ、
碧は用事を思い出したからと嘘をつき、慌ててお握りを食べ、「ゴホゴホ、」結果、喉に詰まらせる。
「わあ、碧ちゃん大丈夫?」
佐々木が慌てて碧の背中をさすり、
「ほら、水」
神林に水を貰う碧。
「う~」
胸をドンと叩いて頑張って飲み込む。
ようやく飲み込めて息を吐く。
「碧ちゃん大丈夫?」
「は、はい。すみません」
碧は佐々木と神林に頭を下げると、
「あの、お先に失礼します!お茶ご馳走様でした」
お礼を言ってガタガタとドアにぶつかりながら出ていく。
ああ、大丈夫なのか?と心配そうに碧を見送る佐々木と神林。
****
何か騒がしい。
カーテンの向こうが気にはなるがベッドに転がりながら西島は何だかイライラ。
佐々木と神林には懐きやがって!
なんて、拗ねていると碧が2人にお礼を言って出て行った。
碧が出た後直ぐにカーテンが勢い良く開けられ、
「何時まで拗ねてんだ」
佐々木に嫌みを言われた。
「拗ねてない。YouTubeの猫動画見たせいだよ!」
佐々木に背を向ける西島。
「碧ちゃんがお前に恋人いないのを喜んでたぞ」
「はあ?そんな事までバラしたのか!」
西島は振り向くと佐々木を睨む。
「ケッ、違う所に注目しろよ、俺の可愛い碧ちゃんがお前に恋人が居ない事実を頬染めて嬉しそうな顔した所だよ」
「はあ?」
「俺じゃなく、ガミガミ怒るお前を意識しちゃってさ、俺だって独身なのに」
「うるせえバツイチ…佐藤が嬉しそうにしたのは、何時も偉そうに説教する上司が恋人もなく明け方まで猫動画見ているという寂しい実態にだよ」
西島は売り言葉に買い言葉で喧嘩越しに言う。
「あ~、分かってない。碧ちゃんのあの顔は恋する顔だ」
佐々木は腕を組み、露骨にため息。
「佐藤は男だって言ってるだろ!それに子供、そんな子供に恋心抱いてどうする」
露骨なため息にムッときた西島。
「あっそ、じゃあ碧ちゃんに手を出してもいいんだな?」
「は?」
「碧ちゃんをモノにする。抱いてしまえばこっちのもんだし」
佐々木はニヤリと笑う。
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