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恋心3

「抱く?はあ?お前ーっ、佐藤は男だし、未成年だぞ」 西島は起き上がり佐々木に食らいつくように言う。 「俺の離婚の原因、お前知ってんだろ。それに碧ちゃんの合意があれば関係ないね」 佐々木はバイセクシャルで、男と浮気したのが奥さんにバレたのだ。 「それに西島には関係ない事なんだろ?碧ちゃん男の子だし?」 そう言われたら言い返せない。 「碧ちゃんの後ろのバージンはいただく。まあ、1ヶ月くらいでモノにするよ」 佐々木は西島の肩を叩くと、じゃーな。と部屋を出て行った。 佐々木………、  あいつ、言った事は実行する! 西島はベッドから降りて部屋を出ようとするが、 「待て西島」 と神林に呼び止められた。 振り向くと、  「靴」 と足元を指さされて気付く。 靴を履いていない。  西島の靴はベッドの近くに脱ぎ捨てられたまま。 すごすごと戻り、靴を履くと咳払いして部屋を出て行った。  「あいつら、マジで出入り禁止にしようかな?」 ドアを見つめながら神林は呟く。 ***** トイレの個室、碧は夏に電話を掛ける。 数コール目で出た夏に、 「夏姉ちゃん、西島部長は恋人いないって」 もしもしを省略し勢い良く喋る。 「本当?碧ちゃんが聞いたの?」 「違う、佐々木部長に聞いたの、あとね、部長もYouTubeの猫動画見てるんだって」 「へえ~碧ちゃんと同じ趣味じゃん、話題出来たね」 夏にそう言われ、ああ、そうか話題が1つ出来たんだと顔がほころぶ。 「ねえ、碧ちゃんもう自覚しなよ」 「えっ?何を?」 「西島部長を好きだって事。だって恋人いないって知って嬉しかったんでしょ?」 夏の言葉に一気身体中の血液が頭に流れ込んできたみたいに熱くなる。 違うよ、憧れだよ。 そう言いたいのに言葉が出ない。 「碧ちゃんの初恋だね。お姉ちゃん応援するよ?」 「えっ?えっ?ちが、」 初恋とか? 夏姉ちゃんは何言ってるんだろう? 「相手が同性でも人を好きになるって最高の出来事だよ」 ドクンドクンと心臓が早くなって、 「夏姉ちゃん、また電話するね」 と言って電話を切った。 頭がクラクラする。 夏姉ちゃんは勘違いしてるんだ。 碧はフラフラしながらトイレを出た。 僕が西島部長を好き? 初恋とか? 違うよ。 違うよね、諭吉? 「碧ーっ、いたーっ」 斉藤が走って来るのが見えた。 「昼休みとっくに過ぎてんぞ!部長がお前が居ないから探して来いって」 斉藤は息を切らしている。 部長? 「西島部長?」 「そうだよ?碧どうした?お前、顔赤いぞ?」 斉藤が心配して碧の肩に手を置こうとした時に、碧はその場に座り込む。 「碧、大丈夫か?」 座り込む碧をのぞき込むように斉藤もその場にしゃがむ。 「目が回る…」 壁側に寄りかかる碧。 顔も熱いけど、身体も熱い。 斉藤はへたり込む碧を軽々と抱き上げると、医務室へと急いだ。 お姫様抱っこされてるとか、碧は気付いていない。 ただ、頭には西島の事でいっぱいで、ショートしそうだった。 **** あー、もう斉藤も戻らないし! 西島はイライラしながら二人の席を見つめる。 昼休み終わっても碧が戻って来ない。 まさかとは思う。 佐々木が脳裏を過ぎった。 使ってない資料室でたまにいちゃつく男女が居る。 まさかね? だから斉藤に探させに行ったのに戻って来ない。 どいつもこいつも! イライラして来た時に着信が入った。 表示は神林。 どうしたんだ?と電話に出た。 「西島?お宅の碧ちゃんが運ばれて来たんだわ、ちょい熱あるから少し休ませて帰すから、早退扱いで頼む」 「はい?」 佐藤は医務室? 「斉藤くんだっけ?彼が送るみたいだから斉藤くんも早退よろしくーっ。じゃあ」 「ちょ、待て」 と待ったをかけるが神林は電話を切った。 **** 「碧ちゃん、西島には連絡したから少し休んで家に帰りなさい」 ベッドで赤い顔をしている碧に話かける神林。 「あと、斉藤くんも早退だって伝えたから碧ちゃん送り届けて」 「はい。かしこまりました」 斉藤はビシッと敬礼した後に、  「へへ、早退出来るラッキー」 とニヤツく。

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