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逃げてばかりではダメなのです。 3話
「諭吉?」
神林は諭吉を見つめる。
「そうたいワシたい」
「は?」
諭吉の口が開き言葉を発した。
「なんや、神林にも聞こえるとな」
「えっ?えっ?」
神林は周りをキョロキョロ。んん?今の声……諭吉?え?諭吉?
座り込み考える。
俺……ノイローゼじゃないよな?夢……とか見てる?
頭の中を必死に整理する。
「トオル、凄いよな諭吉話せるなんて」
座り込む神林の頭の上から此上の言葉が降ってくる。
話せる?諭吉が話せる……?嘘やーん!!
「からかってます?」
顔を上げて此上をみる。
「何?信じないの?たまに諭吉の声聞いてたんだろ?諭吉が神林にはたまに言葉が通じたって言ってたぞ」
「えっ?」
確かに……ミルクとか色々と。
神林はゆっくりと此上が抱く諭吉を見る。
「ニッシーもな神林みたいな感じやったばい、ワシが話すって知った時は」
「えっ?千尋も?」
諭吉の言葉に驚く。
「碧ちゃんは小さい頃から話してたらしいし、千尋は諭吉に色々と相談してたんだってさ」
「ま、マジでええ!!」
神林はガシッと諭吉を掴む。
「な、なんか夢みたいというか……えっ?他の猫も話せるの?」
「さあなあ……波長が合うんやないんかな?ワシらは……猫はいつも人間に話かけとるぞ、ただ、ニャーってしか聞こえとらんけども」
「そ、そうなのか!」
神林は真剣に諭吉を見つめる。
でも、これで何となく分かった気がする。西島は本当に会話をしていたのだ。
「凄いなあ」
頭の中で納得するとあっという間に受け入れる事が出来た。人間って凄い。
「本当凄いよな……小さい頃から動物の言葉分かったらいいなって思ってたから」
此上は諭吉の頭を撫でる。
「動物と話せる指輪なんでしたっけ?」
「ソロモン王の指輪」
「そう!それ!」
神林はビシッと諭吉を指さす。
「凄いなあ……本当に話せてる?」
「そうばい」
諭吉の返事に神林は笑顔になる。
「ニッシーも此上も神林も気味悪がらんな」
「えっ?なんで?」
諭吉の言葉に即答する2人。しかも、上手くハモっていた。
「聞かれても困るけどな」
「面白いとか嬉しいが先にくるから別に」
神林が答える。
「そうだな、嬉しいが先だな……」
「なんや、ニッシーの周りって似たようなタイプばっかりやな、類友ってやつか」
「諭吉って本当、凄いなあ……色んな言葉知ってて」
感心する神林。
「そりゃワシはじいさんやからな……いくらプリチーな姿しとっても年はワシが上ばい」
「確かに!諭吉先輩」
此上が敬意を表す。
「おお、それは良かな諭吉先輩」
喜ぶ諭吉であった。
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