17 / 526
恋心6
「え~、もったいない。お前、俺から碧ちゃん守ろうと必死だからさ、もう食ったかと思ったよ」
ヤッた前提で話をする佐々木はもう手の施しようがないアホだ。
「お前と一緒にするな!佐藤は熱があるんだよ」
「無かったらヤッた?」
もう、言葉も出ない。
「………やらない。佐藤は男でまだ子供だ」
「碧ちゃんは女の子よりも絶対にエロいぜ?きっとセックスとか乱れまくりで可愛い声でもっとぉっておねだりして、恥ずかしそうに腰振る仕草とか想像したら、股間が暴走する」
「死ね!」
西島は怒鳴りつけると電話を切った。
あのアホ、信じられん!
佐藤をそんな目で……。
淫らな……ボンッとさっきの碧の下着姿が脳裏に過ぎる。
女の子よりもエロい。
確かに………なんて考えて頭を振る。
佐々木に影響されまくりだろ!
西島はエンジンをかけると車を走らせた。
******
「何で戻って来た?」
神林に車の鍵を返しに行くとそう言われた。
何でと聞かれても、
「仕事あるだろ?」
と答えるしかない。
「お前は碧ちゃんの面倒見なきゃならないだろ?」
「は?」
「碧ちゃん、熱上がってたんじゃないか?」
確かに上がっていた碧の熱。
「子供じゃないし」
「佐々木には碧ちゃんを子供だと言ってるのに、こんな時は子供じゃなくなるのか?」
神林の言葉に西島は言葉を詰まらせる。
「それに普段のあの子を見てたら心配になるのが普通だろ?きっと、ご飯とか着替えとか出来ないんじゃないかな?」
確かに!
普段の碧は只でさえ危なっかしいのに、熱がある今………
やばい!死んじゃうんじゃないかとさえ考えてしまった。
「会社には西島は早退したと言ってあるから、早く碧ちゃんの所へ戻れよ」
西島は、くるりと向きを変え走って行った。
「本当、世話の焼ける」
神林は西島の後ろ姿を見送った。
西島はスーパーへ寄り、色々買い込んだ。
買い物を終えて車を自分のマンションへ走らせている途中、公園の横を通り過ぎようとした時にアパートが目に入った。
佐々木が公園の横のアパートに碧が住んでいると言っていたのを思い出す。
本当か?
こんな近くに?
西島のマンションへは歩いて3分程。
公園のにゃんこを碧も知っているだろうか?何って考えてしまう。
後で餌を持って来なきゃな。
いや、まずは自分の部屋に居る碧のご飯が先だ。
****
「熱いよお……」
碧は熱の怠さでモソモソとベッドから降りる。
身体が熱すぎて冷たいモノを求めるようにフラフラと歩き出す。
自分の部屋だと思っている碧は、フラフラしながらも間取りの違いに、
「あれえ?冷蔵庫は?」
と戸惑う。
碧の部屋は7.8畳のロフト付き。
ベッドから進めば冷蔵庫に辿り着くはずなのに、何時もの場所に冷蔵庫がない。
碧はその場にペタリと座り込む。
*****
「は?」
西島は部屋に入り、短い声を上げた。
碧がフローリングで丸くなり寝ているのだ。
「佐藤?どうした?」
西島は慌てて、碧を抱き起こす。
身体の揺れと西島の声で目を開けた碧は、
「熱いの……冷蔵庫がない」
と意味不明な言葉を口にする。
「熱い?ポカリ飲むか?」
西島に聞かれた碧は頷く。
「待ってろ」
碧をその場に座らせ袋から1リットルのポカリを取り出すとフタを開けて碧に渡す。
ブカブカなシャツの袖から指先だけが出た手で受け取る碧は両手でペットボトルを持ち、ゴクゴク飲む。
ぐはっ!
西島は碧のペットボトルを両手に持つ姿に変な声を出しそうになった。
ペタンと正座を崩した座り方で座る碧。
足が太ももまで見えて、つい、そこに目が行ってしまう。
茶色いフローリングの板の上で色白が強調された碧の足。
そして、両手でペットボトルを持つ仕草。
あーー、何だ!この可愛い生き物は!!
西島は心で叫ぶ。
ともだちにシェアしよう!