20 / 526

恋心 9

****** 喉の渇きで目を覚ました碧。 視界に入る風景をぼんやりを見つめる。 ………………あれ? しばらく見つめて、知らない場所に居ると気づき、キョロキョロ辺りを見回す。 むくっと起き上がり、西島に気づく。 ぶちょおーーーっ! 西島が近くの椅子に寄りかかりうたた寝をしている。 何で?何で部長が? 碧の頭はクエスチョンマークでいっぱい。 でも、そんなプチパニックの中、西島の寝顔に碧は釘付けになる。 かっこいい。 うたた寝している西島はラフな格好で、髪もセットされてないから、何時もより幼く見えてドキドキしてしまう。 どうして西島と一緒に居るのか分からないけど碧は無防備な彼を見れてラッキーだと思った。 碧は西島を近くで見たくてベッドから降りる。 足が床につき、立とうとしたら、めまいがしてバランスが崩れた。 パタン、 その場に倒れた碧は膝等を打ち、 「いたいっ」 痛さにちょっと半ベソになる。 パタンという音と振動。 碧の痛いという声に西島は目を覚ました。 ペタリと床に座る碧の姿が直ぐに目に飛び込んで来て西島は慌てた。 「佐藤、どうした!」 碧の側に行くと、 「ぶちょうぅ」 涙目の碧が自分を見上げている。 「どうした?」 目の前に西島。 碧のテンションはピークに達する。 どう説明して良いか分からないくらいにパニック。 「のど、喉渇いて、ベッドから降りたら、膝うって」 しどろもどろで説明。 「喉渇いたのか?それならベッドの横にポカリ置いてただろ?」 碧の為に西島はポカリを常備していた。 涙目の碧……… ぐはっ、あーっ、もう! 何でコイツは一々可愛い仕草するんだよ! 西島はお腹空いたよう。と鳴く子猫に見えて、可愛い過ぎる碧に悶えそうなのをぐっと押さえる。 とにかく、碧をベッドに戻そう!と西島は思う。 ブカブカシャツで足を露わに出されちゃ目の毒だ。 「ほら、立てるか?」 碧を立たせようとしたが、膝が痛い碧は西島の方へと倒れ込む。 むにゅっと西島の胸辺りに顔が埋まる。 ぽふんっと西島の胸に飛び込む形になってしまった碧。 甘い香がした。 きっと柔軟剤か何かだろう。 碧が好きな香り。 西島の胸板は思ったよりも厚く、小柄な碧は羨ましく思ってしまい、しばらく胸の中で静止中。 「佐藤大丈夫か?」 西島の声で我に返る碧。 ああっ、僕ってば何してんだよう。 「はい。大丈夫です」 慌てて顔を上げる。 そしてドキッとした。 顔が互いに近い。 西島さんはやっぱり俳優さんみたいにカッコ良いなあ。 なんてじっと自分を見つめているなんて知らない西島は、碧の大きな瞳に吸い込まれそうな感覚に首をブンブンと振り、碧をひょいと抱き上げる。 「ぶ、ぶぶぶ、ぶちょお」 お姫様抱っこされた碧は一気に顔を真っ赤にさせ、動揺。 ぶちょおが、ぶちょおが僕を抱っこしてる! 軽々と持ち上げられて、西島の格好良さの株が碧の中で急上昇した。 ぽふんっとベッドに降ろされて、ポカリを渡させる碧。 ドキドキが止まらない。 ドキドキして手が震えてきた。 ポカリを飲もうにも上手くいかない。 上手く飲めない碧の手からポカリを取った西島は、待ってろと一言残しその場を離れた。 後ろ姿を見つめながら碧は、自分が居る場所が西島の部屋なのだとぼんやり理解した。 でも、どうして西島の部屋に自分が居るのか分からない。 斉藤と会社を出た所までは覚えている。 そこから先の記憶が飛んでいて、斉藤は? あれ?あれ?なんて頑張って思い出そうとするけど、その部分だけ欠落している。 改めて周りを見ると、部屋の中は青色の物が多い。 青色が好きなのかな? 碧の部屋とは正反対な大人な感じがする。 やっぱり、部長は部屋もカッコ良いなあ。 夏姉ちゃんに教えたいなあ。 なんて、考えてたら西島が戻ってきた。 「ほら」 改めて渡されたポカリはさっきよりも冷えていて、持ちやすい500mlのペットボトルでストローが刺さっていた。 西島はポカリを沢山買い込んでおり、重たそうに大きなペットボトルを持つ碧も可愛いけど、やはり飲めないと意味がない。 なのでストローをさし、小さいペットボトルに変えたのだ。

ともだちにシェアしよう!