21 / 526

恋心10

ストローでちゅうちゅうと飲む碧を見ていると、指を吸う碧の映像が頭で勝手にリピート再生された。 ううっ、何で思い出す? それに抱き上げた時に真っ赤な顔をした碧。 どれを取っても碧は可愛い。 くそ! ああ、そうだよ佐々木!佐藤は確かに可愛い! 可愛い過ぎて悶えそうだ。 でも、佐々木には口が避けても言えない! 可愛いと頭で認めてしまっているから、彼の仕草に全て反応してしまう西島。 500のペットボトルを両手で持ったりとか、 西島の萌ツボを刺激する碧。 碧は半分くらい飲むと、ストローから口を離した。 「もういいのか?」 と聞くとコクンと頷く。 「あの、ありがとうございます」 碧は西島に視線を向けて、ペコリと頭を下げた。 「いいさ、ほら、飲んだら横になれ」 西島は碧の手からポカリを受け取ると、横になるように促す。 横になっても良いのだけど、先程頭に浮かんだ沢山のクエスチョンを解決して行かなければいけない。 「部長、あの、僕はどうしてここに?斉藤くんは?」 これだけの質問に碧はかなり勇気を使った。 だって憧れの西島と2人っきり。 「斉藤は会社。神林に借りた車で送る途中で、君が寝てしまったから、……家、分からないし、だからここは私の部屋だ」 西島は状況を把握していない様子の碧にかいつまんで説明をした。 部長の部屋。 やっぱり部長の部屋だったと碧は改めて感じてしまうとドキドキが止まらない。 「あの、すみません僕、迷惑かけて」 碧は頭を何度も下げた。 嫌われたかな? なんて不安が頭を過ぎる。 「いいから横になれ、まだ熱高いんだから」 西島に身体を押されベッドに横になる。 「佐藤は1人暮らしだろ?」 西島に聞かれ碧は頷く。 「じゃあ、今夜は泊まっていきなさい」 えっ? 碧は大きな瞳をさらにクリクリと大きくさせて驚いた。 泊まる? 部長の部屋に? 驚く碧と、自分が言った言葉に驚く西島。 泊まっていきなさい。って思わず出た言葉。 何故、そんなこと言ってしまったのだろう? 目をクリクリと子猫みたいに動かす碧を…………… もう少し見ていたい。 そう思ったから。 「いや、やましい意味とかはない」 咄嗟に出た言葉にめまいがしそうな西島。 やましいとか、思っているから、そんな言い訳が出る。 「あ~、とにかく、お粥作るから大人しく寝てろな」 これ以上言い訳すると、ドツボにはまりそうで、そう誤魔化した。 西島が部屋を出て行った後に碧は頭の中で、彼に言われた事を整理する。 泊まっていけって、 ここに? 部長の部屋に? えっ?本当に? うそ、うそ、うそー!? 段々と実感が沸いてきてテンションが上がる。 僕が部長の部屋に泊まる! 夏姉ちゃんに話したい!諭吉にも! 諭吉………、 あ、諭吉! 碧は部屋に諭吉が居るのを思い出し慌てる。 諭吉!諭吉のご飯とか、 碧はフラフラしながらベッドを降りて部屋を出た。 ガサゴソ音がする方角に西島が居る。 碧はその方角へと向かう。 キッチンに西島が居た。 「部長」 西島の後ろ姿に声を掛ける。 碧の声に西島は驚いて振り向く。 フラフラしながら自分の方へ来る碧。 「佐藤、寝てろって言っただろ!」 西島は碧の側へ行く。 「部長、諭吉、僕、諭吉にご飯あげなきゃ」 「は?」 諭吉? あ、猫だったな。譫言でも聞いた名前。 でも、諭吉は実家じゃないのか? 「諭吉は実家だろ?」 熱が高いからそんな事言うのか?と西島は心配する。 「違うの、着いてきちゃって、部屋に諭吉が居るんです。ご飯あげなきゃ」 フラフラな状態で立っているのがやっとに見える碧。 1人で帰すわけにもいかない。 「分かった。諭吉を連れてくるから、お前はベッドだ。」 そう言って西島はまた碧を軽々と抱き上げた。 お姫様抱っこ再び。 碧はもう声も出ない。 ただ、ドキドキと胸が尋常じゃないくらいに早く脈打つ。 ベッドに降ろされて、 「部屋の鍵と住所を」 そう聞かれ、碧は住所を言う。 鍵は碧が何時も背負っているリュックの中。 「いい子にしてろよ」 西島は鍵を手に部屋を出た。 歩いて数分でアパートに着いた西島。 やはり、このアパートだったのか。と公園とアパートを交互に見た。

ともだちにシェアしよう!