25 / 526

ニッシーと諭吉3話

テーブルはベッドでも使えるタイプでそのまま食事が出来る。 パソコンをベッドでも使えるようにと購入したのだが、こんな風に使えると買って良かったな。なんて思う。 お粥を見つめながら碧は、 「部長が作ったんですか?」 と目をキラキラさせている。 「そうだ。口に合わなかったらすまん」 と碧の手にレンゲを持たせた。 お粥からは美味しそうな匂い。 碧は「いただきます」と両手を合わせて、そう言うとレンゲをお粥に入れた。 小さい湯気が立ち上がり、それを懸命にフーフーと息をかけている。 か、可愛い! 小さい子が一生懸命にフーフーしているようだ。 しかも袖が邪魔そうで、気にしている様子。 西島は袖を捲り上げてやる。 「ありがとうございます」 ニコッと微笑まれ、 「お、おう、」 なんてたじろぐ。 碧はレンゲをパクンと口に入れて、 あつっ、って眉間にシワを寄せる。 あれ?もしかして、 「猫舌か?」 質問すると碧は恥ずかしそうに頷く。 西島はふい、とその場を離れ冷凍庫から氷を取り出しグラスに入れて持って来ると、 氷を一つ、器に入れた。 味は少し薄くなるけど、食べやすくなる。 碧はその小さな気配りに嬉しくなる。 やっぱり部長は優しい! えへへっ、 声に出して笑いたいけど我慢! ニコニコしながら食べる碧。 あーー、 何だろうな? お粥をこんなにニコニコしながら食べる子を初めて見る。 そんなに美味しいのかな?と気になり、 「美味いか?」 と聞いてみた。 「うん」 と満面な笑みで頷く碧。 直ぐにハッと気づく! 部長にうんって言っちゃった! 慌てて「はい」と言い直す。 部長、うん、に怒ってないかな?と気になるが、西島は、 碧の「うん」にノックアウトされていた。 あー、くそ! 可愛いだろーがっ! と心でシャウトしていた。 器の分は完食したが、おかわりは無理な碧は手を合わせてごちそうさまをした。 「食べたら薬」 西島は碧に薬と水を渡す。 でも、碧は中々飲もうとしない。 まさか、まさかだけど、 「飲めないのか?」 聞いてみると小さく頷く。 「飲まなきゃダメですかぁ?」 目にうりゅう~と涙を溜める碧。 思わずいいよ。と言いそうになるのをグッと我慢。 「飲まないとダメだろ」 その言葉に碧はしゅんとなり涙目で薬を見つめている。 お預けくらった猫みたいだ。 くうぅーっ! ジタバタしたいくらいに碧は可愛かった。 そんな中、着信が鳴り響く。 携帯を取り出すと佐々木の文字。 あー、もう! 席を外し電話に出る。 「やっほー、碧ちゃんどうしてる?」 軽そうな佐々木の声。 「薬飲めないとか言ってるよ」 「うわーマジか!碧ちゃんらしいなあ。んじゃあ、お子様用のお薬飲めたね買ってきてやるよ」 「は?何だそれ?」 「ゼリーみたいなものだよ、それに薬を詰めて飲ませるんだよ。碧ちゃんなら苺味かな?」 佐々木は嬉しそうに言いながら、西島の返事も聞かずに電話を切った。 相変わらずマイペース野郎め! 西島は電話をポケットに入れ、碧の元に戻る。 碧はまだ薬を見つめていた。 ふ~とため息が出る。 やっぱり子供だ。 こんな子供に欲情するなんて変だろ? さっきまでの自分を反省! 西島は碧の手のひらから薬を取ると、 「後から飲みなさい」 そう言いながら横になるように促す。 「ぶちょお、ごめんなさい」 ウルウルした瞳で西島を見上げる碧。 ずきゅーーん 心臓を一発射抜かれた西島だった。

ともだちにシェアしよう!