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逃げてばかりではダメなのです。10話
◆◆◆
なんとなく数日ぼんやりと過ごしてしまった西島。
碧といる時は元気でいるようにしてはいる西島だが、「ちひろさん……具合悪いんですか?」と朝から心配されてしまった。
「大丈夫だよ?ごめん、ちょっと会議の事とか考えてた」
心配させまいと嘘をつく。
「ちひろさんお仕事大変ですもんね……僕が手伝えたらなあ」
ネクタイを結びながら俯く碧。
「ありがとう」
そんな可愛い姿を見せられたら元気が出てくる。
頭を撫でた。
「今夜、会議だから遅くなる……夕飯食べてて良いから」
「専務さんと飲むんですか?」
「いや、今回はちゃんと会議だよ?まあ、終わったら分からないけど」
この前、騙されて飲みに連れて行かれたけれど、今日はちゃんとした会議だ。
「また、神林達が来るよ」
「はい」
元気がないと此上にはバレているので毎日、奴らは夕飯食べて帰って行く。
不思議と此上が居ると安心してしまう自分がいる。
きっと、そうとう精神的にやられているのだろう。
碧のスマホが鳴って西島は我に返った。
「わあ!星夜くん帰ってくるそうですよ」
碧はスマホを見て笑顔を見せる。
「じゃあ、佐々木も戻ってくるわけか」
「佐々木部長復帰ですかね?」
「だろうな、またうるさくなるな」
「ちひろさん、なんか嬉しそうですよ?」
うるさくなると言いながら顔は優しい笑顔だったので碧から突っ込みされてしまった。
まあ、うるさい奴だけど嫌いじゃないから。
「斉藤が帰ってくるならウチの課もうるさくなるな」
「はい」
「アイツ居ないだけで静かだったもんな……碧も物足りなさそうだったし……良かったな」
西島は碧の頭を撫でる。
◆◆◆◆
「星夜くんが帰ってくるそうです!」
昼休み、碧は興奮気味に神林に報告をする。
「良かったね、碧ちゃん斉藤くんが居なくて寂しそうだったから」
神林は碧にお茶を渡す。
「ちひろさんにも言われましたけど、僕……そんなに寂しそうでした?」
「物足りなさそうな感じかな?あれ?千尋は?」
「会議の用意があるからって」
「会議?今日のは本当に会議?」
「僕も同じ事をちひろさんに言いました!本当に会議ですよ」
碧は笑う。
「だから、先に食べてなさいって」
「そうか……今夜は何食べたい?篤さん毎日張り切っているから」
「僕、此上さんに料理習いたいです……だから今夜は僕も一緒に作りたいです」
「千尋の為?」
「はい」
ニコッと微笑む碧は幸せそうだ。
「花嫁修業ってとこかな?」
それをからかうように言うと碧は顔が真っ赤になる。
「ふふ、可愛いね碧ちゃん。篤さんに伝えるよ」
神林は碧の頭を撫でた。
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