478 / 526

逃げてばかりではダメなのです。13話

碧は西島の話ばかりをした。 目の前の優しそうな紳士がまさか最愛の恋人の父親だなんて知らないから。 「碧くんが彼を大好きだって凄く伝わってくるよ、羨ましいねえ……恋をするっていいね。力が湧くし」 ニコニコと優しく微笑むヒロちゃんを見て碧は照れる。 そういえば……ヒロちゃんもモテそう。 碧は改めて目の前の優しい紳士を見た。 背が高くて年配なのだが若い頃はイケメンだったと思える見た目。若い頃というか今もかなりイケメンなおじ様だ。 きっと、たくさん恋愛をしてきただろうなと思う。 「あの、ヒロちゃんもたくさん恋しましたか?」 「ふふ、そうだね、若い頃はね」 「ヒロちゃんモテたと思います、かっこいいですし……」 「嬉しい事を言ってくれるね……かっこいいって言葉久しぶりに言われたよ」 その返しで言われていたのだろうと確信した。 「息子がね……凄くかっこいいよ」 「息子さんですか!ヒロちゃんに似てるならかっこいいと思います」 「似てるかな?この前会った友人から……息子が私の若い頃に似てると言ってくれたからね……似てるんだろうね」 ふふふと笑うヒロちゃんは嬉しそうできっと、優しいお父さんなのだと碧は思った。 「息子さん、いくつですか?」 「29だよ、8月で30……凄く童顔でね、大学生みたいな可愛い感じに見えるよ」 わあ、ちひろさんと同じだ……と碧は心で共通点を見つけて喜ぶ。 「お仕事は?」 「会社勤めだよ、頑張り屋さんだからね、良い役職についてるみたいだよ」 「頑張り屋さんなんですか!」 「勉強が出来る子でね……スポーツも得意で色々やってたみたいだけど」 「わあ!凄いですね、勉強ができてスポーツも得意なんて、漫画に出てくる主人公みたいです」 「ああ、そんな感じかな?優しい子でね……人見知りとかもしてたから心配してたけど、良い友達が居るみたいで」 「そうですか……息子さんとは仲良しさんなんですね」 色々と話がポンポンと出てくるのだから仲良しなのだろうと疑わなかった。 なんせ、凄く優しい顔をして話すのだ。 子供を思う父親の顔。碧の父親と同じ顔を見せる。 「私は仲良くしたいよ……凄くね」 ニコッと微笑むヒロちゃん。 「僕もヒロちゃんの息子さんなら仲良しになりたいです」 その言葉にもうなってるよ……と言いたかった西島父だがそれは心にしまった。 「うん、きっと碧くんと仲良しになれるよ……息子も猫が好きだから」 猫好き!!その言葉に碧は反応した。 「ね、猫好きなんですか?」 「うん、子供頃、飼いたかったみたいだよ」 わあ……猫好きに悪い人は居ない!! 会ってみたいな……と碧は思ってしまった。

ともだちにシェアしよう!