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逃げてばかりではダメなのです。 14話

◆◆◆◆ 「にっしじまくん!」 軽快に名前を呼ばれて西島は振り向く。 「何ですか?飲みに行こうとか言うんじゃないでしょーね?」 西島は声をかけてきた専務にそう返す。 「あはは、何か警戒されてるね」 「してませんよ!それと、今日、誘われても行けませんし」 「えっ、じゃあ、前持って言えばいいの?」 「この前も言いましたけど……騙さずに普通に言ってくれれば……まあ、ほぼ、断りますけど」 ニコッと微笑む西島。 「待ってる子が居るから?じゃあ、一緒に誘えばいいかな?佐藤君」 専務もニコッと微笑む。 「……佐藤は未成年です」 「飲みにじゃないよ、夕食だよ」 専務は西島の肩をポンと叩くと「佐藤君とニャンコよろしくね」と笑顔で言うと去って行った。 別に嫌味で言われた感じはせずに普通に誘って来たという感じだった。 男同士の恋愛にどうこう言う人ではないと佐々木の事でも分かっているし……まあ、夕食ぐらいなら?と西島は思った。 ◆◆◆◆ 「じゃあ、碧くんそろそろ帰るね」 ヒロちゃんは立ち上がる。 「はい。おやすみなさい」 碧はヒロちゃんに手を振る。 「うん、おやすみ碧くん、諭吉も」 ニコッと優しい顔で微笑むヒロちゃん。 碧はその優しい顔をどこかでみた事があるような錯覚を覚えた。 どこかでみたというより……誰かに似ていると。 ヒロちゃんは駅の方へと歩いて行く。 その姿をずっと見つめながら……誰に似ているのだろうと考えていた。 ◆◆◆ 「おかえり碧ちゃん、遅かったね」 帰ってきた碧に声をかける此上。 「あ、公園で知っている人に会って話し込んでいました」 「知っている人?会社の人?」 「いいえ、祖父の友達で……僕も仲良くなったんです……ヒロちゃんって言って」 ヒロちゃんという名前で直ぐにピンときた此上。 「そうなんだ……遅いから心配したよ」 「すみません」 心配したという言葉で碧は慌てて謝る。 「トオル、ちょっと買い忘れ思い出したから出てくる……碧ちゃんをよろしく」 「えっ?篤さん?」 買い忘れって何?と神林が聞く間もなく部屋を出て行ってしまった。 ◆◆◆ 此上はスマホを取り出し、電話をしながらエレベーターに乗り込む。 相手は数コールで出た。 「今どこです?」 モシモシも言わずに聞く此上。 「駅」 相手から返事が聞こえ、ホームのざわつきも一緒に聞こえてきた。 「じゃあ、改札口で待っててください家まで送りますから」 「もう、改札口通っているよ」 「改札戻ればいいだけでしょう?」 「めんどくさい」 「わざわざ遠くから千尋のマンションまで来る人がめんどくさいとか笑っちゃいますけど?」 此上の嫌味に相手は笑った。 相手はもちろん、ヒロちゃん。 「いいから改札出てくださいよ、車で駅に向っているんですから」 此上は有無も言わさずに電話を切り、車に乗り込んだ。 そして、車を走らせて駅に着くとちゃんと改札を出て外で待っているヒロちゃんを見つけた。 此上は車を停めるとクラクションを鳴らす。 その場に居た人達が一斉にクラクションを鳴らした此上の車を見る。 そのクラクションにもちろんヒロちゃんも気づき、此上の車へと近付いて来た。 「乗ってください」 「お前は本当、有無も言わさずというか……」 ヒロちゃんは笑いながら助手席に乗り込んだ。 ドアを閉めてシートベルトをつけたのを確認すると車は走り出した。 その数分後、西島が改札から出て来た。 ほんの数分前まで自分の父親がここに居たとは彼は知らない。

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