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逃げてばかりではダメなのです。15話
◆◆◆
「ただいま」
西島が玄関のドアを開けると「おかえりなさい」と碧と諭吉が待ち構えたように居た。
えっ?帰ってくると分かったのだろう?と思ったが諭吉が一緒だ。
動物はいち早く帰宅に気付いて玄関で待っている。すごい能力だと思う。
「夕飯は食べた?」
靴を脱ぎながら碧に聞く。
「まだ……ちひろさん待ってました」
「先に食べてて良いのに」
そう言いながら待っていたという言葉に凄く嬉しそうな顔をする西島。
「おかえり」
部屋の中へと進むと神林が笑顔で迎えてくれた。そして、此上が居ない事にも気付く。
「あれ?此上は?」
トイレかな?とも思ったが聞いてみる。
「買い忘れ思い出したって言ってさっき出て行った……千尋が帰ってくる数10分前くらいだからすれ違わなかった?」
「ううん、会ってない……と思う」
西島はそう答えて着替えてくるとその場を離れた。
碧は親鳥に着いていくヒヨコのように後ろから着いて行く。微笑ましい光景に神林は微笑んでしまう。
「神林」
「なに?」
足元から諭吉に呼ばれた。
「ニッシーの父ちゃんの名前なんて言うとや?ヒロなんとかってつくか?」
「えっ?あ、うん……たしか……ヒロミだったかな?」
「そうや」
「何で……そんな事聞くの?」
「まあ、こっち来い」
諭吉は神林を誘って風呂場へ。
西島に話を聞かれない為だ。
「今日、碧が会った友達はニッシーの父ちゃんばい」
「あっ……」
そうなんだ……と神林は思った。前は碧に西島の父親が近付いたと分かったら心配したと思う。でも、此上に彼の父親の話を聞いた後だったので、きっと、どんな子が恋人なのか見てみたかったんだろうなって思った。
引き離すとかそういうのではなく。きっと、遠くから見守っている……そう感じた。
「千尋と仲良くしてくれてありがとう。弱い子だから助けてくれると嬉しいよ……どうか仲良くしてやって欲しい」
学生の頃、お願いをされた。
誠実そうで……優しそうでそんな印象しかない。
「なんや、驚かんな」
「千尋のお父さんはきっと碧ちゃんが気に入ったんじゃないかな?」
「そがん感じやったぞ?父ちゃんは碧がニッシーと一緒におるって知ってる感じがしたな……」
「知ってるよ。篤さんが言ってたから」
「ああ、じゃあ、此上が出て行ったとは後ば追いかけて行ったとか」
「そうだろうね……今、そう思ったよ……でも、諭吉はどうして千尋のお父さんだって分かったの?」
「ん?臭いが同じやったし、歩き方というか足音が同じやし、顔も似とるやろ?年取ったニッシーはこげな感じやな?って想像できる」
「あ!臭いかあ……足音とかも……凄いね猫って」
神林は諭吉の頭を両手でガシガシと撫でた。
「おお、気持ち良かばい!腹も撫でろ」
諭吉はゴロンと寝転がる。
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