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部長が運命の人ですか? 2話
「えっ、いや、神林も聞いたのか諭吉がしゃべるの」
何故、自分が凄く焦っているのだろう?なんて思う西島。
「マグロ美味いって言うんだろ?さっき、斉藤くんが動画を送ってきた」
あ、 なるほどね……
「だから、じゃーん!マグロ!」
神林はマグロを鞄から出す。
「まぐろぅ」
諭吉の目が輝き、雄叫びを上げる。
ジタバタ暴れて西島の腕から飛び降りると、神林の元へとすり寄る諭吉。
「へ~、本当に言うんだ」
感心しながらマグロのパックのビニールを外して諭吉に与える。
「まぐろー!」
ガツガツ勢い良く食べる諭吉。
お前、さっきも食べただろ?って、突っ込みをしたい西島。
「西島、碧ちゃんはただの打ち身だ。安心しろ」
神林はその場に座り諭吉の頭を撫でながら言う。
その言葉でホッとする西島。
「碧ちゃんさ、見てたらほっとけないよな」
まあ……ね、なんて西島も思う。
「良く一人暮らし出来るよな?大丈夫なん?今みたいに熱出したり、怪我したり」
神林の言葉は西島が常に考えている事と同じだった。
「具合良くなったら一人の部屋に戻すんだろ?いいのか?」
神林は西島を見上げた。
いいのか?
いいのか?って何が?
西島は言葉にはしない。
「それに諭吉。碧ちゃん手当の間、諭吉を実家に戻したくないって言ってたんだよね。一人暮らし寂しいから、でも、碧ちゃんちはペット禁止だろ?……でも、西島の部屋はペット禁止じゃない」
ニコッと笑う神林。
「何が言いたい?」
ようやく言葉を発した西島。
「分かってるくせに」
神林は諭吉へ視線を戻す。
「佐藤はまだ未成年だけど社会人だし、一人暮らしは俺だって18からした」
「うん、知ってる。でも、お前はしっかりしてたし、碧ちゃんみたいに危なっかしくなかった」
その突っ込みに、確かに碧は危なっかしいと思った。
「諭吉くらい預かってやれば?休みの度に諭吉に会いに行ってたらしいし……西島、猫好きだろ?」
そう言われ、頷く。
頷いた後に、何故に神林に説得されてるんだろうと疑問にも思った。
神林は不思議な男だ。
結構、付き合いが長いが未だに読めない。
佐々木が単純だからかも知れないが。
で、神林にのまれてしまう自分がいる。
「諭吉のマグロも聞けたし、帰るわ」
神林はヒラヒラと手を振り、帰って行った。
残された諭吉と西島。
諭吉はモフモフした尻尾を振りながら碧の元へと行く。
諭吉を預かる……かあ。
アイツ、喋るんだぞ?
………いや、猫は喋らない、喋らない!
西島も碧の側へと行く。
「部長、すみません」
碧は西島を見るなり謝る。
理由はまた神林を呼んでくれたから。
腕には包帯。
きっと膝にも。
「いや、いいよ。大丈夫か?」
「はい」
ニコッと笑う碧が可愛い。
それと同時に頬にキスされたのを思い出した。
ちゅっ、って……
碧はどんな夢を見ていたのだろう?
「佐藤、……さっき、寝言で俺の名前呼んでたけど、どんな夢見てたんだ?」
思い切って聞いてみたのは良いけれど、ドキドキしてきた。
何、ドキドキしているんだと思う。
どんな夢?
碧は西島に聞かれ、内容を思い出した。
きゃー、 碧は顔が一気に熱くなるのを感じた。
夢、夢の内容!
凄く焦る、
僕、部長の名前呼んだの?
嘘、うそ、うそだーっ!
やばい、僕がエッチな子だって思われちゃう!
部長に嫌われちゃう!
「すすすす、すみません、おぼ、おぼえてませんっ」
真っ赤な顔で動揺しまくりな碧。
これだけで夢の内容が分かる。
西島はアタフタする碧をみて、好きっ、って言われたのも思い出す。
好きって、違う意味かも知れない!
好きって、色々あるじゃん!
言葉の間に何かあったかも知れないし。
部長、猫が好きですか?とかの間が無かっただけかも知れないだろ?
うん、そうだよ。
俺みたいな年が離れたオッサン……
いや、俺はまだオッサンじゃない!
でも18からみたらオッサンだな。
テンパって照れる碧と、好きの意味を考えて悶える西島。
諭吉はそんな二人を見ながら、 やれやれ、似た者同士ばい。とため息をつく。
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