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逃げてばかりではダメなのです。 17話

◆◆◆ 「あれ、ちひろさん?」 珍しく西島がソファーでうたた寝をしているのに碧が気付く。 「どうしたの?」 神林が碧の言葉に反応する。 「ちひろさん寝てます」 「あ、本当だ……珍しいね千尋がうたた寝するの……余程、碧ちゃんといるのが落ち着くのかな?」 神林の言葉に碧は嬉しそうな顔をする。 「僕といると落ち着くんですかちひろさん」 「うん……凄く落ち着くんだと思うよ……どうする?ここに寝かせる?それとも運ぼうか?」 神林の言葉で自分がちひろさんを運べたら!!と思ったが運べるわけがないので「お願いします」と言葉にした。 神林は軽々と西島を碧の目の前で抱き上げる。 神林先生!やっぱ、かっこいい!! 此上と同じく逞しく写る神林の姿に碧はちょっとドキドキした。 此上の方がガタイが良いので華奢そうに見える彼だが、こうやって見るとやはり成人男性なのだ。 「碧ちゃん、寝室のドア」 「あ!!」 見とれてしまった碧は慌てて寝室のドアを開ける。 ベッドに寝かせて貰い、お礼を言う碧。 「碧ちゃんは寝ないの?」 「此上さん帰ってくるまで待ちます」 「ふふ、じゃあ、ココア作ってあげるおいで」 神林は碧と一緒に寝室を出るとキッチンへ。 「僕も神林先生とか此上さんみたいにちひろさんを抱っこ出来るといいのになあ……鍛えようかな?」 テーブルにつくと碧は羨ましい顔をして神林を見る。 「……鍛えるのは止めた方がいいよ、千尋が泣くよ……碧ちゃんは千尋の大事なお姫様だから」 ココアを作ると碧に渡して微笑む。 「僕……ちひろさんを守る騎士がいいですう」 ココアを受け取ると碧はむぅーとした顔を見せる。 「騎士になりたいもんね……それは精神的でいいんじゃないかな?肉体的とかじゃなくて……うーん、心を支える騎士様……千尋弱いからさ」 弱い……それは心の奥の事だと碧にも分かる。色々と辛い目にあってきたのだから……。 「うたた寝とか……碧ちゃんには心を全部預けてるだろ?千尋は……倒れそになったら支えてあげて」 「はい」 碧はニコッと微笑む。 西島の力になりたい。助けになりたい……もし、心にまだ何かあるのならば楽にしてあげたい。碧はそう思う。 「ワシにもミルクばくれ」 諭吉が神林の足元に来る。 「分かった」 神林は猫用ミルクを軽く温めると器に入れ、諭吉の目の前に置く。 「此上帰ってきたばい」 諭吉はそう言って見るミルクを舐めている。その直後、インターフォンが鳴った。 「ほんと、凄いよねえ猫って」 神林は諭吉に感心しながら玄関へと迎えに行った。

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