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部長が運命の人ですか? 6話

西島はアイスなど食料品を手に公園で立ち止まる。 碧が住んでいるアパートを見つめて、 治ったら一人の部屋へ帰さなければならない事を考えた。 寂しくて甘えているのに? それに、あんなに危なかっしい子を1人に? 碧は女の子みたいに可愛いし、変質者に付け狙われたら? そうだ、佐々木、 あいつが1人暮らしの部屋に入り込んだら危険すぎる! ど、どうしよう! 西島は妄想しながら真剣に悩んだ。 ****** 「部長」 部屋に戻ると碧が起きていた。 もちろん嘘寝だと西島は知らない。 「あ、アイス……食べるか?」 西島は碧の前にアイスを出してみる。 食べてくれるかな? 体調不良だし、嫌いだったら?なんて沢山考えてしまった。 「いいんですか!ありがとうございます。僕、アイス好きなんです」 目をキラキラさせてアイスを見つめる碧。 か、 可愛い……… 小さい子供みたいな笑顔で喜んでくれている。 買って良かった! 神林に感謝! 西島も釣られて笑顔になる。 アイスとスプーンを渡すと、碧は美味しそうに食べ始めた。 「美味しいか?」 顔を見れば分かるけど、西島はそう聞いてみた。 「はい。美味しいです」 にぱあ~とそれはそれは可愛らしく微笑む碧。 そっかあ、美味しいのかあ。 「また、買ってくるよ」 西島は碧の頭をポンポンと軽く叩いた。 ひゃああああーっ、 碧は叫びそうになるのをこらえた! 頭ポンポンって、 それに部長の笑顔可愛い! どうしよう!部長が可愛すぎる! 碧は一気にテンションをあげた。 **** アイスは冷たくて……そして、甘くて酸っぱい。 美味しくて幸せを感じながら食べる碧。 頭もポンポンってされた。 凄く嬉しい。 クリスマスで貰ったプレゼントみたいに胸がドキドキして、幸せだ。 西島をチラリと見た。 優しい笑顔。 あの『にゃんこ』を見ていた時みたいな笑顔。 そんな顔を自分に見せてくれている。 病気、治らなきゃいいなあ。 なんて、つい思った。 治ったら、やっぱり自分の部屋に帰らなきゃいけないもんね。 ずっと、一緒に居たいなあ。 ***** アイス美味しそうに食べてくれたなあ。 西島は夕飯を作りながらニヤニヤしていた。 子供みたいにニコニコ。 癒された。 「ニッシーにしちゃ良くやったやん」 足元で聞こえてくる諭吉の声。 あ~、違う違う、きっとニャーって鳴いてる! そう思いながら料理の手は止めない。 「抱っことか碧は好きやけん、今晩もしてやれよ」 な、何を言っているんだ諭吉……いや、違う、猫は喋らない。 「碧にアイス買ってきたんやから、マグロも買ってきたやろうな?」 その声と一緒にガサガサと音がして振り向く。 テーブルの上に置きっぱなしだった袋を覗き込んでいる諭吉が目に入った。 こいつ、マグロの為ならテーブルにも飛び乗るのか! 「諭吉、テーブルには乗っちゃ駄目だろ」 西島は諭吉を掴むと下へ降ろす。 「マグロ」 「神林に貰ったし、佐々木とかにも貰っただろ!今日はもう駄目だ!」 「ニッシーのけちくされ」 「は?誰がケチくされだ!マグロ以外も食べなさい」 「嫌ばい、マグロが好いとおーと!」 諭吉はぷいと横を向く。 「こんにゃろ、今夜は普通にキャットフードだからな」 西島は怒りながら皿にキャットフードを入れて、ハッと気づく。 なんで、俺は猫と言い合いを……… 完全にノイローゼかな?

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