60 / 526
好きになってもいいですか? 4話
◆◆◆◆◆
碧は、西島が用意した着替えを手にする。
彼の香りが染み付いたシャツは相変わらずに大きい。
素肌に袖を通すと、西島にギュッと抱きしめられたような気持ちになり、胸がきゅんと鳴る。
下着も履くが少しブカブカ。
「諭吉、部長は大きいよね。」
諭吉に話しかける碧は可愛い笑顔だった。
◆◆◆◆◆◆
「あ、あの‥‥‥、」
寝室の中に居る西島に照れくさそうに声を掛ける碧。
その声でドアの方を見た西島。
相変わらずの大きいシャツがキュートな碧がそこに居て西島を見ている。
「は、早くベッドへ戻りなさい、また熱がでる」
西島は何事も無かったように振る舞うが碧の顔は見れないでいた。
ペタペタと足音をさせながら碧はベッドへ戻る。
でも、互いに意識してか、2人とも俯いたまま沈黙。
西島は何か話さなければと悩むが言葉が出てこない。
しばしの沈黙を破ったのは碧。
「あ、あの、見てないですよね?」
再確認する言葉に西島はドッキリ!
「も、もちろん」
なんて慌てて返事するものの、碧の顔は見れないでいる。
「良かった」
ほっとしたような碧の声。
「それと、さっきは騒いですみません、恥ずかしくて」
ペコリと頭を下げる碧。
「あ、い、いや、気にするな。」
「僕、身体、貧弱だから、部長みたいにカッコいい身体になりたいです」
えへへと笑う。
「それに、下も小さいから、恥ずかしいし‥‥」
下?
下って、下?
西島は一瞬、頭が真っ白になる。
「お兄、あ、兄達が男の勝は下の大きさで決まるって言ってたから」
碧の声のトーンが急に下がる。
「え、そんな事ないぞ?小さくはなかった‥‥‥‥あっ、」
それは咄嗟にでた言葉だった。
悪気も無かったし、ただ、フォローをしたかっただけ。
つい、でた言葉に西島は凍り付く。
や、やばい、実はバッチリ見たのがバレた?
「み、見たんですか?」
碧の言葉に西島は俯いて、
「す、すまない」
と謝る。
「で、でも、一瞬だけだから」
だから何だ、見た事には変わらないじゃないか!と、自分へ突っ込み!
「小さく無かったんですよね?」
碧の質問に頷くだけの西島。
何を言われるのだろうと西島は心臓が破裂しそうなくらいにドキドキしていた。
「えへへ、良かった。」
予想に反しての碧の言葉に西島は、うん?と首を傾げる。
「僕、ずっと気にしてたんですよ、部長が小さくないって言ってくれて嬉しいです」
ニコッと笑う碧。
西島は違う意味で固まった。
さ、佐藤違うだろ!
突っ込む所が違う!
裸を見られたんだぞ!
大事な部分も見られたんだぞ!
なのに何故に、可愛く笑っているんだよ!
「部長が羨ましいです、大きいから」
「はっ?」
い、いつ見たんだ俺のを!
西島は驚いたように碧を見た。
「背とか、身体大きいじゃないですか。何食べたらそんなに大きくなるんですか?」
あ、身体か‥‥‥そうだよな、ちょっと、考え過ぎた。
「さあ?好き嫌いないし」
西島は慌ててそう答えた。
「やっぱり好き嫌いしたらダメなんだ」
納得したように頷く碧。
「嫌いなものあるのか?」
「はい。ピーマンとか、苦い野菜嫌いです」
恥ずかしそな碧。
裸を見られた時よりも恥ずかしそうに見えるのは気のせいだろうか?
でも、碧の嫌いな物を聞いて和んだのは確か。
子供の嫌いな食べ物が嫌いなんて、彼らしい。
「そうか、食べれるようになるように明日はピーマンとか使った料理を作ってやろう」
「えっ?やだ!」
「やだじゃない!食べるようになりなさい」
西島に怒られしゅんとなる碧。
「苦くないように作れるから、安心しろ。」
西島はししゅんとなる碧の頭をつい、撫でる。
「本当に苦くないですか?」
「もちろんだ。美味しく作ってやる。」
碧は少し考えた。
嫌いな物はできたら避けたい。でも、憧れの西島が作ってくれるのだから、食べてみたい。
食べたら、褒めてくれるかも!
答が决まり、
「じゃあ、頑張ってみます。」
と決意表明をする。
前向きな発言をする碧に西島は、
「そうか、偉いぞ!」
と碧に笑いかけ彼の頭をクシャクシャと撫でた。
そして、2人はそれぞれにある事に同時に気付く。
まずは碧。
ぶ、部長、もしかしなくても明日、作って、って言ったよね?
じゃあ、明日も部長の部屋に居て良いって事?
えへへ、嬉しいです。
ピーマンだって食べれます。
そして、西島は、
し、しまった、つい‥‥‥
佐藤の頭を撫でてしまった、馴れ馴れしい奴だと思われたかな?
西島は手を直ぐに引いた。
「じゃあ、鍋を洗おうかな?」
と、とにかく、誤魔化そう!
西島はそそくさとキッチンへと逃げた。
ともだちにシェアしよう!