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好きになってもいいですか? 7話
◆◆◆◆◆◆
西島はチラリと腕時計をみる。
もう直ぐ、正午になる所だ。
碧の事を考える。
昼ご飯はちゃんと食べただろうか?
ちゃんとベッドで大人しくしているだろうか?
気になり出すと、とことん気になるのが西島だ!
携帯を持ち、オフィスから出た。
◆◆◆◆◆◆
あんなに張り切って片付けをしていた碧なのに、今は元気がない。
もっと、西島部長と一緒に居たい!
そう考えながら時間を過ごしていた。
携帯が鳴り、ビクンとなる碧。
携帯を見ると知らない番号だ。
誰だろうと悩むが、電話に出てみた。
「佐藤?」
電話の向こうから聞こえて来たのは西島の声。
ええっ?部長!
驚いて声が上手く出せない。
「佐藤?どうした?また、具合でも?」
心配そうな西島な声に碧は、
「だだだ、大丈夫です。」
と声を張り上げる。
「良かった、気分は?飯は食べたか?」
一気に話出す西島。
「は、はい!食べました!」
「そうか、じゃあ、定時に帰るから、それまで大人しくしていろよ?」
優しい西島の声に、碧はしぼんでいた心が元気になる。
「はい!」
元気に返事をして、携帯を切った。
切った後もほわわん、と気分が温かいまま。
部長は凄いです!
声だけで僕を元気にしてくれました。
◆◆◆◆◆◆
「碧ちゃんに腕枕したのか?やるなあ、西島!」
昼休み、斉藤から逃げるように神林の医務室へと来ていた西島。
ランチを一緒に食べたいともうアピールされたのだ。
「べ、別にイヤらしい意味はないからな」
「はいはい、甘えてたんだろ?」
神林は西島にお茶を出す。
「それから、ピーマンを使った料理で何か良いのを知らないか?」
「は?」
いきなりな質問に神林はキョトンとなる。
「嫌いなのを好きになるような、料理だよ」
あぁ、碧ちゃんか!と、神林はニヤニヤしたいのを押さえる。
「ネットに良いのあるぜ?」
神林はパソコンを開く。
◆◆◆◆◆◆
元気になった碧の携帯がまた鳴る。
また、西島か?と期待するが、表示は夏。
「夏姉ちゃん!」
夏に聞いて欲しい事が沢山ある碧は慌てて電話に出た。
「あれえ?なんか、元気だね」
弾むような声に夏も気付く。
「うん、あのね、夏姉ちゃん聞いて!」
碧は一気に今までの話を夏に話した。
「えー、碧ちゃん!凄いじゃない!」
夏も自分の事のように喜んでくれた。
「部長ね、凄く優しいんだよ」
「うん、そんな感じだね。諭吉の面倒も見てくれてるんでしょ?さすが、碧ちゃんの好きな西島部長だね。」
うふふ、と笑う夏。
好きな西島部長‥‥‥
その言葉に碧はドキッとした。
「な、夏姉ちゃん、僕は‥‥」
そう言って言葉を詰まらせる碧。
「あぁ、ごめん!憧れだったね。」
夏は言葉を変えた。
いつも、否定されているから。
でも、
「夏姉ちゃん、僕は‥‥僕はね‥‥」
「うん?」
「病気治りたくない!もう少し部長と一緒に居たい!どうしたら良い?」
と、聞いて来たのだ。
鈍感な碧から、そんな事を言われるなんて、夏もビックリだった。
「碧ちゃんっば‥‥‥」
目の前に居たら抱きしめたい!夏はそう思う。
「そうね、私なら、思っている事を言葉にするけどな」
「えっ?」
「また、遊びに来ても、良いですか?とか、ご飯を一緒に食べたいです!とか。とにかく、思っている事を言葉にしないと、どうしようもないでしょ?」
夏に言われ、
「僕に言えるかな?」
なんて、弱気になる。
「言えるわよ。」
そうかな?なんてまだ、弱気な碧。
「頑張って碧ちゃん!お姉ちゃんはいつも、碧ちゃんの味方だよ!」
夏に気合を貰い、悩みながらも言葉にしてみようと決意する。
電話を切ると、
「諭吉!僕、頑張るから見ててね!」
諭吉に決意表明をする。
◆◆◆◆◆◆◆
「部長、一緒に帰りま‥‥‥‥、って、あれ?部長は?」
勤務が終わるや否や、斉藤は西島と一緒に帰ろうと、彼のデスクを見るがすでに姿がない。
「部長なら、ついさっき、出て行ったけど?」
女子社員が斉藤に教えてくれた。
「いつのまに?」
チェッ、と舌打ちをする斉藤。
「何?部長に用事?」
「いや、別に」
斉藤は帰ろうと、私物を手にする。
「斉藤くん、用事ないなら飲みに行かない?」
女子社員の誘い、斉藤は、
「いく!」
ふたつ返事で飲みに行く事にした。
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